知りたくはなかった事実を通して。


 知りたくはなかった。
 内心そうなのだろうな、と思いつつ、やはりそうであっては欲しくなかった。

 そういった事実が、記載されている。

 だが2話以降の作者様の(堅苦しくはない)分析や言い回しによって、この作品はただ苦い汁を飲ませるだけの話から抜け出せていると思っている。
 事実や正論は冷たいものが多いので、この点は実にありがたかった。

 読んでいて思った箇所は2点ある。

 ①同窓会の魅力を感じる子供達がいるのか?
 この作品ではそもそも現代のライトノベルのターゲット層が、本来あるべきものから逸れている、という話を取り上げている。

 内容を読み進めていった際、クレヨンしんちゃんの映画で風間くんが言っていた「懐かしいってそんなにいいものなのかな」という台詞が胸をよぎった。

「夢」や「希望」「純粋さ」が子供向けアニメのテーマになるのは、確かに「そうなってほしい」という大人たちの願望もあるのだが、
 そもそも「未来」が大半であろう少年少女にとっては、「過去」を含めた概念はどうしても直感的に把握しにくいからなのだとも思っている。

 追放も、ざまあも、復讐劇も、転生も、その目的は「暗い過去の克服(リセット)」なのだ。
 大体それが解消してしまえば、物語の主目的は完了される。
 雰囲気が明るい暗いは関係なく、その軸は過去に向いている。同窓会や懐かしさのようなものと同類だ。
 それを噛み締められるほど、本来の対象となる子供達は大人びているのだろうか。


 ②「お手本」の飽和状態
 今は昔に比べて、実に間口が広くなった。
 情報を手に入れるのに図書館や書店に寄る必要がないし、要約・マニュアル本の存在により、理解に膨大な時間をかける必要もなくなった。
 原稿用紙に文字を自筆で書いて、それを郵送なり手渡しなりしなければならなかった時代と比べれば、遥かに物理的・心理的なハードルが下がっている。
 それ故に、誰でも入賞へのチャンスを胸に抱くことが出来、実際に「ゴールへの近づき方」「お手本の作り方」という指南書が多数生み出された。

 結果として「お手本のような作品」が多数生み出されたに至ったのである。「どのお手本をお手本とすればよいか分からない」というのは現代ならではの贅沢な悩みかもしれない。
 これは邪推にはなってしまうが、レビュー時点の最新話「ラノベの書き手はラノベをたぶん買ってない」というタイトルは、恐らく正しい。
 正確にいうならば「無料のお手本」は参考にしているかもしれない(買ってはない)。

 個人的には「お手本」を一定満たすは前提で、そこからはみ出た部分こそが、その作品の個性だとは思っているのだが、その部分を教えてくれる教本は存在せず、作者の感性や人生経験によるものに依存すると思われた。

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