若者のライトノベル離れ 約10年で市場半減のショック

らんた

本論

ライトノベル市場半減のショック

 まず2023年6月19日の『週刊文春・電子版』をご覧になったであろうか。なんとライトノベル市場が半減したというのだ。私は「note」にて既に2019年にて警告を発したことがあるが「じゃーなんで次々ミリオンヒット作が出てるんだよ」という反論に負けてしまった。だがやっぱり体感的なことまで当たってしまった。


 そりゃそうじゃん、中年読者を優先させて中高生のニーズを除外したらそりゃそうなるよね。


 で、私は「真のラノベ市場の第一ピーク」って1997年だと思ってるんですよ。なぜかって? 膨大な若年層(厳密には23歳前後の新社会人層)が1996年末頃にラノベを卒業するかどうかの世代に当たるからです。そうです。年約200万人も出生数がいる団塊ジュニア世代の存在です。今の18歳人口年約110万人だぞ。それを考えたら真のラノベ市場は1997年頃がピークで読者のすそ野も大きく、逆に2013~2016年当時は既に一強多弱。つまりごくごく一部のタイトルだけミリオンだしてあとは全滅というのが真相なんだろうしじゃなかったら出版市場額全体が2兆6564億円(1996年)から1兆5400億円(2018年)にまで下がるはずがないからである。その後1兆5936億円(2023年)まで回復したがこれは電子漫画市場の拡大によるものでラノベは1ミリも貢献していない。そう、電子書籍のシェアの約90%は「漫画」なのです。なお紙媒体だけに限ると出版市場は1兆612億円(2023年)なので2024年頃に1兆円市場を割り込む事がほぼ確実と予測されています。


 電子書籍市場についてもうちょっと詳細を見てみよう。2023年の電子書籍市場は5351億円である。うち、漫画・コミックス市場シェア90.2%、雑誌を除く文字データシェア8.2%、雑誌シェア1.5%となっている。要は電子書籍市場のうち文字データ市場は有料版法律データベースなどが大きく入っているため電子ラノベ市場は事実上推計1%程度か下手すると1%にすらも満たないと思われる(公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所調べ)。よって「ラノベ市場は電子に移行した」というのはネット上のデマなので大いに気を付けよう。余談だが電子雑誌シェアというのは要は「dマガジン」のような市場です。ネットでいくらでも無料記事が読める今となっては有料電子雑誌市場はやっぱ伸びないって分かるんだね。もう雑誌記事というビジネスはWEB広告収入で儲けるしかないって事だね。


 じゃ次だ。紙媒体市場で気を付けるべき点はどこか。


 この紙媒体の1兆円市場のかなりが「宗教本」なので内実は本当に救いようが無い。この宗教本を抜くととっくの昔に紙媒体の出版市場1兆円割れなのだ。新興宗教の信者がノルマで大量に買っているだけに過ぎない。まだあるぞ。ここからさらにビジネス啓蒙書を抜いてみよう。ビジネス啓蒙書ってのは半年も過ぎるとごっそり書棚が入れ替わるほどの「ゴミ」本です。なのに営業成績が上がらないサラリーマンの最後のすがる場所として……要はね事実上の弱みに付け込むビジネスを書物で展開してる。ちなみにバブル期までこの手のビジネス啓蒙書ってベストセラーになったことがないんだ。「この手の本が流行るときは不景気の証」ってよくこの国では言われたもんだけど。ということはこの国は1991年以来ずっと不景気という意味だ。若い子は知らないから教えるけどバブル期には何がベストセラーとして売れてたと思う? 『キッチン』とか『ノルウェイの森』とか『人麻呂の暗号』とかだぞ。つまり文字通り「貧すれば鈍する」という悪循環を33年にも渡って出版界でも続けてる。つまり……日本人は心も貧しくなってるんだ。そして君の営業成績が悪いのは君個人が原因じゃなくて日本経済と日本って国が没落しているからだっていい加減に気が付いて? なので紙媒体に限った出版市場は額だけでなく中身(質)はもっと深刻な状況だと思ってください。


 で、そんな状況で紙媒体のラノベ市場はどうなっているのかを見て行こう。


 ラノベ市場第二ピークは2016年の284億円(文庫190億円、単行本94億円)がピークとされています。2020年は244億円となってます。2022年にはラノベ文庫本108億円、ラノベ単行本103億円、合計211億円となりました。ラノベ市場は紙媒体書籍市場のシェア約1%だと思ってくれ。どうだ? ラノベ市場ってごくごく小さいニッチ市場だろ? イメージと全然違う(だから電子ラノベ市場も文字データ電子書籍市場の約1%と私は推測した)。それが2025~2027年に半減する見込みです。なんせ文庫の売上減が尋常じゃないのだ。もう一回言うがおそらくこの金額は1997年当時だともっとでかいだろう。しかも1997年当時だとラノベ市場のシェア率は1%よりも大きくなるはずだ。


 「えっ? 1997年当時の方が今よりもラノベ市場のシェア率が高いだと!?」って驚く人もいるでしょう。そこで巻末のライトノベル年表を見て見よう。すでに80年代にこれでもかと1000万部突破のラノベが出ている。中には『ぼくらの七日間戦争』のように2000万部突破のラノベすらある。よってラノベ市場の第一ピークは出版市場額のピークとほぼ同じ1997年と見るのが自然だ。私が「ラノベ市場の第一ピークは1997年ではないか?」と書くのはちゃんと根拠があっての記述である。


 なお『オリコンエンタメ白書』調べの場合は2016年に352億円市場としているので本当は2026年の時点では市場半減では済まないのかもしれない。なぜ数字が各社でぶれるのかというと「ラノベ」の定義が難しいからです。


 ラノベ市場の推移をよく見ると2004年には170億円市場となっている。2009年に302億円を記録した。これがラノベ史上最高市場額である。2013年には250億円まで減少したがなろう系を中心とするラノベは文庫ではなく単行本が多い。そこで出版科学研究所は単行本サイズのラノベ市場額を2014年から加算したことでラノベ市場額が再び上向いた。2016年にはラノベ市場は284億円市場にまで回復した。なお2017年は283億円でほぼ横ばいある。2012年から2016年の間に起きた「異世界転生」プチバブルというのは実はラノベ文庫の減少分を補っていただけなのだ。つまり10年代というのはすでにゆるやかにラノベが衰退していた時期だったということである。そして2018年から異世界転生プチバブルが崩壊する。20年代からラノベの衰退が加速する。2020年のラノベ市場額は243億円となった。2020年のラノベ市場額は2013年当時の市場規模にまで落ちたことを意味する。そして2022年のラノベ市場額は212億円にまで減少した。これは2007年当時のレベルの市場額に落ちたことを意味する。しかも2004年当時の出版点数は約1,000点。これに対し2020年の出版点数は約2,600点。いかに今は爆死ラノベ作家が多いのかの証拠となっている。さすがに2023年のライトノベルの出版点数は約2,480点と若干落ちたが。ちなみに1997年当時のラノベ出版点数は約600点。もう分かりますよね。1997年当時のラノベ作家の方が1人当たりの印税収入が多いということまで。


 ラノベ界の皆様にお願いがございます。2003年以前のラノベ市場の額を算出してください。しかも出版点数が2004年比で2020年当時約2倍で市場額は2003年当時よりも減っているということはラノベ作家同士で共食いをしている証拠です。こんな愚かなことは即で止めてください。


 なお、文庫ラノベ市場に限ると2012年の284億円をピークに、2022年には108億円と実にピーク時の半減以下(-62%)という悲惨な結果となった。このままのラノベ文庫本がここ10年間同様の下落幅(毎年-15億円程度)が続けば確実に2026年頃にはピーク時から半減するという事実を。もしかしたら2026年という時期が2027年や2028年と1~2年位ずれ込むかもしれない。しかし、それは「誤差」の範囲でしかない。


 市場額が思ったよりも落ちないのは文庫ラノベ市場は確かにとっくの昔に壊滅しているけど、一般書サイズのラノベが1200~1700円帯(ラノベ文庫の約1.5倍、下手すると約2倍の額)で売っているからです。高級ラノベをごく一部の層に売ってるからラノベ市場が2022年になってもしぶとく生き延びたというだけ。これが機能しなかったら私が2019年時に「note」で予告したようにもうとっくの昔にラノベ市場は壊滅です。そういう意味では2019年当時の私の予測は外れた。つまりオタクの中でもコア層だけが青少年では買えないだろうなという価格のラノベ本を買い支えてるだけに過ぎないと私は考えた。こんな不健全な状態がいつまでも持つはずがない。ラノベ市場は突如崩壊する可能性が高い。


 コロナ禍だから売り上げが減少に過ぎない、リベンジ消費があるはずと期待する声もある。しかしコロナ前から激減している傾向が元に戻る気配はないと考える。


 この推計は何かのウルトラC級の出来事が起きない限りおそらく実現すると思われる。


 もしこのタイトルと予測が外れるとしたらそれはごくごく一部の者にだけ高級ラノベ本が買われているという意味になり一般人はもちろんの事普通のラノベファンすらも大多数が見放した時です。その時のラノベ一般書の価格帯は1500~2200という価格帯で売られていることだろう。それが「ウルトラC」の中身です。でもそれはそれで別の意味でラノベの死を意味する。そう、こうなるともう紙媒体のラノベ本を持っている人は世の中で「レア」な存在に落ちたことを意味するからだ。


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