何かを「許さない」ということ。


 夢に追い詰められ、精神病院に通っている女性。
 彼女はゆっくりと語りだす。夢の内容と、その正体を……


 読んだ時に感じた印象を、語弊を恐れずに伝えるなら「なるほどな」でした。

 この物語はサイコホラーに含まれるのかなと思いました。

 いわゆる「サイコホラー」に登場するサイコな人の何が怖いか。
 やっていることの恐ろしさもあるのでしょうが、やる際にまったく躊躇いがなく、悪びれもしない。あっけらかんとしている。
 つまり「この人の説得は無理だな」と思わせるところにあると思います。

 この話の怖さ(あるいは悲しさ)は、「もう無理なんだな」という点にあります。
 人は過ちをしてしまうものです。特に若い頃などは勢いづいてしまうもの。
 時が経てば反省したり後悔したりすることもあるでしょう。
 しかし、中には、謝ろうが、弁償しようが、何をしても取り返せないことだってあるのです。

「怒りを通り越して笑えてくる」という表現がありますが、純粋な笑顔というのは、文脈によってはここまで強い拒絶を示すのか、と思わせた作品です。