再会のかなわぬ間柄をどこかで感じられて新しい。あなたはゆるしますか?

人吉平太は、通称ヘイちゃん、勤務先から厄介なできごとで追い払われ、楽道了と道中出会います。

了くんはママに捨てられたようで、旅をしながら色んな刺激やウイさんなどとの出会いをして行きます。

果たして彼のママはどうしているのでしょうか。

また、どうして捨てたのでしょうか。

ある種、ロードムービーの形をとりながら、緻密に掘り下げた心情も丁寧に織り込まれております。

不思議な現象、ひとは目に見えない及び手に取れないものを恐ろしいと感じるようです。

そして、それと会話をなせるひとをも受け入れがたいようです。

本作品のテーマは様々なことが含まれております。

例えば、親子の愛についてや男女のあり方、そして育て育ちあうことも含まれるでしょう。

さだまさしさんの歌、『償い』のライナーノーツには、 山本周五郎さんの『ちくしょう谷』が引用されています。

重要な内容は、「ここまではゆるすけど、ここからはゆるさない。それは、ゆるしていることにならないでしょう」と言う点です。

※引用ではありません。

ここに集約されております。

このボーダーラインを揺れる心が本作のキモであると思いました。

了くんが感じ取ったママなどへの思いは大人からみて、死の距離感が異なるとも思いました。

賢い了くんが、その賢さ故に、ヘイちゃんは行わないことをしました。

私は、映画、『菊次郎の夏』を彷彿とさせ、その上でヘイちゃんの視点で優しく描かれたあたたかさを感じました。

あなたの心に巣食う闇はなんでしょうか。

あなたの心に宿る光はなんでしょうか。

ほっとなお国訛りを交えて、この夏共に旅をしませんか。

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