一夏の案件を引き金に、暗い過去が暴かれる

作品が纏う独特な空気感と、想像の余白を上手く活用した読後感が魅力的な一作です。
話の展開は王道でありながらも同時に意外性があり、古き良きミステリーを踏襲したものといえます。特に主人公のキャラクター像がいいアクセントになっていました。変にデフォルメした滅茶苦茶なキャラではなく、現実にいそうな変わり者の雰囲気が面白かったです。どこまでが本音で、どこからが冗談なのか。そんな登場人物同士の台詞のやり取りは、本作の醍醐味の一つといえるでしょう。

ライトな作品が流行りのweb小説では中々日の目を見るのは難しいですが、本作の完成度はユーザー評価以上だと思います。純文学やミステリー小説を好む方なら、まず読んで後悔はしないはず。埋もれた名作を探す人には、是非とも掘り当ててほしい一作です。事務所に舞い込んできたいつもと変わらない、取るに足らない案件。探偵は調査を進めるうちに、隠された過去へと行き着く。やがて、それは大勢の人物たちの素顔を暴くことに。すべてを知った末に、探偵の下した決断とは。

是非ともこの夏に読んでほしい、極上のミステリー小説です。

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