第3話 メテオ・クライシス③

 フューチャー号と名付けられた宇宙船が彗星の激突から地球を救うべく飛び立ってから、四十時間が経過した。

 激突までの残り時間78時間にして、地球から飛び立った宇宙船と地球に向かう彗星が遂に邂逅の時を迎え、クルー達に緊張が走る。

 この彗星に着陸し、地下500mの深さまで掘り進めてそこに核弾頭を設置して速やかに離脱するのが彼等に課せられたミッションだ。

 核弾頭を設置する場所も科学者達の計算によって決められており、最も効率よく爆破の衝撃を彗星全体に伝えて破壊する為の最善の位置が割り出されている。

 ただ無計画に設置するだけでは彗星の表面を削るだけで意味がない。彼等のするべき事はこの彗星が地球に到達しても問題ないほどに小さくすることだ。故に設置する場所は重要で、決められた場所に寸分の狂いもなく爆弾をセットしなくてはならない。

 その為に与えられた時間は決して多くない。地球にあまりに近付きすぎた状態で爆破しても、今度はその破片が地球に降り注いで甚大な被害を齎すからだ。

 モニタに映し出された彗星を見ながら、乗組員のクラークが怪訝そうな声を出した。


「彗星の周りを飛んでるありゃ何だ? 岩石があんなにあるなんて聞いてないぞ」

「彗星のくしゃみだ。小惑星ベンヌはまるでくしゃみをするように岩石を宇宙空間に吐き出しているという。それと同じようなものなのだろう」


 クラークの疑問にケヴォン船長が答えるが、彼だって確信を持っているわけではない。

 宇宙はそのほとんどが未知で満たされていて、何が起こっても不思議ではないのだ。

 しかしこれは非常に困る。彼等が降り立つべき小惑星『ケンタビオス』は、まるで侵入を阻むように岩石によって守られていた。

 無数の岩石が彗星の周囲を飛び、バリアのように道を阻んでしまっている。


「どうする? これじゃ降り立てないぞ」

「どうするったって行くしかないだろう。それともここで彗星が地球にぶつかるのを指をくわえて見学するか?」


 宇宙飛行士のジャンは弱気な声を出すが、ケヴォン船長は意を決したように言う。

 岩石があるからといって、何もしないという選択肢は取れない。いや、取ってはいけない。

 たとえどれだけ成功率が低くとも、あの岩石を抜けて着陸する以外の道などないのだ。


「ワオ! 本当に行くのかい!? スリリングだぜ」


 陽気なジョニーが場にそぐわない明るい声を出すが、それに対する返事はなかった。

 全員が緊張した面持ちで座席に座り、しっかりとベルトを締めている。

 それを見てジョニーは肩をすくめ、自らも座席に座った。


「行くぞ!」


 フューチャー号が彗星に接近し、岩石を避けながら何とか近付いていく。

 操縦桿を握るケヴォン船長の額は汗で濡れ、岩石を避けるたびに船は大きく揺れて振動が手を揺らし、操作の邪魔をする。

 それでも着実に彗星までの距離を縮めながらフューチャー号は飛んでいた。

 しかし着陸間近にして一際大きな衝撃が船を揺らし、アラートが鳴り響いた。

 激しく揺れながら船は彗星の地表を削るように不時着し、全員がすぐにベルトを外して立ち上がった。


「くそっ、どこにぶつかった!」

「第二ブロックです!」

「消火活動急げ!」


 船長の言葉に素早く紅一点のベティが答え、全員が消火器を持って被弾したブロックへ急いだ。

 全員の懸命な消火活動により何とか炎は消えたものの、船が受けたダメージは軽くない。

 すぐにロケットの設計者であるパヴェル博士が応急修理に入るが、下手をすれば二度と飛び立てずにここでジエンドとなるだろう。

 しかしともかく、何とか彗星には降り立つ事が出来た。

 彗星を掘り進め、核弾頭を設置して爆破さえ出来れば……最悪、地球は救う事が出来る。

 勿論生きて帰るのが一番の目標だし、誰だって死にたくない。

 だが万一の時は命と引き換えにしてでもミッションを果たす事が彼等の使命だ。

 だから一人として不安を口にする事はなく、掘削用のドリルを運び出して作業へと当たった。


 ――地球衝突まで残り四十八時間。


 作業を始めてから、三十時間が経過した。

 用意された六本の核弾頭を彗星の深部500メートルに設置するのがミッションの目的だ。

 そしてここまでに既に五本の核弾頭を設置する事に成功しているが、その代償として既に予定を大幅に上回るタイムロスをしてしまっていた。

 その理由は……単純に、彗星が固かったからだ。

 こればかりは実際に掘ってみなければ分からない事だ。

 勿論学者達はあらゆるデータを見て彗星の固さを予測していたが、それでも予測は予測に過ぎない。

 

「急げ! もう時間がない! これ以上地球に近付かれては爆破しても残骸が地球に降り注ぐ!」

「分かってます! けど、固いんですよ!」


 掘削のスペシャリストのクラークとベニーの師弟が必死にドリルで地面を掘り進む。

 学者の分析では地球まで残り四十五時間の距離まで近付かれては、彗星を破壊しても甚大な被害が出るらしい。

 つまり実質的に残された時間は後三時間だけだ。

 焦りで手元が狂いそうになる中、何とか500メートルまで穴を掘り、最後の核弾頭を設置した。


「よし、帰還するぞ!」


 これでやる事はやった。

 後は宇宙船に帰り、彗星から離れるだけだ。

 しかし穴から地上に戻ろうとしたその時、大地が大きく揺れた。

 地球に近付いた事が原因なのか、それとも星の位置が何か影響したのか……。

 原因は分からないが、とにかくこの彗星にいるのは今まで以上に危険だという事だけは間違いない。

 大地はあちこちが砕け、おまけにガスまで噴き出している。


「ぐあっ!」


 ベニーが悲鳴をあげ、その場から動かなくなった。

 もう時間がない。早く逃げなければならないのに何をしているのか。

 先行していたクラークは苛立ったように叫んだ。


「何してるんだ! 早く! 早く来い!」

「足が挟まれた! くそ!」


 クラークは穴の中に戻り、ベニーの足を見た。

 今の地震で岩の位置が代わり、それで足を挟みこんでしまったらしい。

 クラークは何とか彼を引き上げようと彼を持ち上げる。

 だが思った以上にガッチリ挟まれてしまったようで、全く持ち上がらない。

 一緒に作業をしていた他のクルーも降りて来て力を貸すが、やはり駄目だ。


「クラーク、俺を置いて行け! 行け! 早く行け!」

「そんな事出来るか!」

「いいんだ! 早く!」


 もう自分は駄目だ。そう悟ったベニーはせめて仲間達だけでも逃がそうと自分を置いていくよう提案した。

 このミッションに選ばれた時点で死は覚悟している。

 これが地球ならばまだ、足を切断する事で助かるかもしれないがここは宇宙だ。

 切断などすれば、当然宇宙服も切断する事になる。

 そうなればそこから空気が抜けてどのみち窒息死だ。もうどうしようもない。


「駄目だ! 置いて行けない!」

「諦めるな! 皆で帰るんだ!」


 ここまで一緒に来た仲間だ。見捨てるなんて事は出来ない。

 死ぬときは全員一緒だ。

 その想いのもと、男達は必死にベニーを引っ張り上げる。

 そして数十分の格闘の末、遂にベニーを救出する事に成功した。


 ベニーを救出した皆はフューチャー号に戻り、無事にフューチャー号は彗星から飛び立った。

 飛び立てるか不安であったが、パヴェル博士が何とか修理してくれたらしい。

 これで彗星と心中はしなくて済む。

 フューチャー号の船員達は希望を胸に彗星から離れ、そしていよいよ核弾頭の爆破スイッチが押された。

 閃光が宇宙を照らし、爆風が宇宙船を激しく揺らす。

 普段は忌むべき核の光……人類が生み出した最も罪深い兵器だが、今この時ばかりは救世の光に見える。

 陽気なジョニーが明るくはしゃぎ、そして彼等は光が収まった時には彗星がバラバラになっている光景があると信じていた。




「……どういう事よ……」


 紅一点のベティが、先程までの明るい表情からは想像出来ないほどに暗い、絶望した声を漏らした。

 だが彼女の問いには誰も答えられない。

 何故なら皆が全く同じ気持ちだからだ。


「どうして、彗星が残っているの!?」


 ――彗星は、依然健在のままだった。

 多少小さくはなっている。

 大きな穴もあちこちに開いている。

 だが残っているのだ。表面を吹き飛ばされて大分小さくはなったが、それでも巨大と呼んでいいサイズのままそこに佇んでいる。


「固すぎたんだ! くそ、表面をふっ飛ばしただけだ! 失敗だ!」

「進路は! 今の爆発で軌道が変わったんじゃないのか!?」


 爆薬のスペシャリストのアンドレイが悔しそうに、爆破が失敗した事を告げた。

 ケヴォン船長はすぐに、彗星の軌道を再確認するようにクルーに指示を出し、ベティが大急ぎでデータをチェックする。


「駄目です! 依然、進路地球!」

「……何てこった」


 ベティの悲鳴のような報告に、船員達は沈痛な表情で黙り込んでしまった。

 このプロジェクトには地球の未来がかかっていた。

 即ち失敗は地球の……人類の滅亡を意味している。

 今頃地球では迎撃用の核ミサイルの準備が進められているだろうし、避難用のシェルターも建造されているだろう。

 しかしそれでも、どうにかなる可能性は低い。

 絶対に失敗させてはならないミッションの失敗……その事実と絶望に、重い空気が流れる。

 だがそんな中で、アンドレイとパヴェル博士は何かに気付き、頭を突き合わせて計算を始めた。

 それから二人は答えを導き出したようで、立ち上がって皆を見た。


「あー……いいニュースと悪いニュースがある。どっちから聞きたい?

いや……話の順番的にいいニュースが先だな。こっちから言わせてくれ」


 アンドレイはコンソールを叩き、データを表示させた。

 映し出された彗星と、この船だ。


「この船には何かあった時の為に余分に、核弾頭が二発積まれている。

そして彗星も先程の爆発で確実にダメージを受けている。

私の計算では……この、先程の爆発で出来た亀裂の中に入って核弾頭二発を爆発させれば……あー、粉々は無理かもしれないが、二つに割るくらいは出来ると思う。

更に二つに割れた彗星は、上手くすれば地球の軌道から逸れる」

「それは最高のニュースだ。それでもっと最高のニュースは?」

「先程不時着した際に、その二発を爆発させる為の遠隔装置が壊れたって事だ。

これは勿論、パスワードを入力して初めて起爆するから、遠隔装置が押されたり壊れたくらいじゃ爆発しない。だから俺達は今も無事なわけだが……あー……つまり、手動以外に爆発させる手段はないって事だ……」


 アンドレイは地球を守る為の最後の手段を提示した。

 これならば地球の被害をゼロには出来ずとも、滅亡くらいは避けられるかもしれない。

 ただし、手動爆破である以上はそれを実行した者は必ず死ぬ。

 戻って来られない、あの世への一方通行のミッションだ。


「もう一つグッドニュースがある。もうあの彗星は作業出来る状態じゃない」


 ケヴォン船長が皮肉を効かせて、最悪のニュースをあえてグッドニュースと言いながら死の宣告を突き付けた。

 ここにいる全員が生きて地球を救い、帰還する事は出来ない……というレベルではない。

 地球を見捨てるか、全員が死んで地球を救える可能性に賭けるかの二択しか残っていないのだ。

 またしばらく無言が続き、やがてそのうちの一人が顔を上げた。


「いいんじゃないか? これで地球が救われれば、俺の銅像が立つ」


 そう言ったのは宇宙飛行士のジャンだ。

 彼の言葉に皆が笑い、それから顔を見合わせる。

 人類を救えるのは自分達だけだ。ここにいる八人だけが地球を救う事が出来る。

 それはとても辛い事で、同時にとても栄誉な事でもある。

 地球の歴史46億年のうち、人類の歴史はたったの500万年で、ホモ・サピエンスに限ればたったの20万年の歴史しかない。

 それでも、その20万年を途切れさせずに未来に繋げる事が出来る。

 ならばこの命に、そして死に……価値はきっと、あるはずだ。


「俺に家族はいない。きっと最後は誰にも看取られずにつまらなく死んでいくんだろうと思っていた。

……それがこんな最高の死に方が出来るんだ。悪くない」


 掘削のスペシャリストのクラークが冗談めかして笑い、そして皆も覚悟が決まったように頷いた。

 ――やろう。

 皆の心は一つだ。この星を……人々を守る為に命を使う。

 そう決意した彼等はまず、地球の作戦基地に通信を繋げた。


『おお、キャプテン! 遅かったじゃないか!』


 モニターにはこの作戦を指揮を執っている大佐の顔が映し出された。

 厳つい髭面の、スキンヘッドが眩しい男だ。

 ケヴォン船長は彼に向けてニヒルに笑い、それから現状とこの先の作戦を話し始めた。


「そっちでも確認していると思うが、作戦は失敗した。彗星が予測より遥かに頑丈過ぎたんだ」

『そうか……残念だ……』

「だが、少しくらいは被害を抑える事が出来るかもしれない。その為には、この船ごと突っ込んで彗星の中で核弾頭を起爆させなけりゃならん」

『……死ぬ気か、キャプテン』

「皆も納得している。そこでだ……家族に最後の挨拶がしたい」

「あ、ああ……ああ! 勿論だ! すぐに連れて来る!」


 地上にある作戦本部には、軍人達の他にクルーの家族も待機している。

 その理由は……いざという時に、いつでも別れの挨拶を告げる事が出来るようにする為だ。

 まず最初にケヴォン船長の妻と娘がモニターに映った。


『ああ……あなた!』

『お父さん!』

「ジョディ……マリー……私を許してくれるかい?」

『勿論よ! だって貴方は、とても偉大な事をやろうとしているのだから!』

「ありがとう……マリー、来月の結婚式をパパは見ているよ。死んだってあの世から見ている。

どうか、幸せに……」

『パパ!』

「愛してる」


 ケヴォン船長は涙を流しながら家族との最後の別れを告げた。

 次に、掘削のスペシャリストのベニーの恋人が映し出された。


『ああ……ベニー!』

「ジェーン! こんな時だけど、どうしても君に言いたい事があったんだ。

本当は無事に帰ってから言うつもりだったけど……ジェーン、君を愛している。

僕と結婚してくれないか?」


 ベニーの告白に、画面の向こうでジェーンは顔を覆って泣き崩れた。

 それから、涙でグシャグシャの顔で精一杯の笑顔を浮かべる。


『勿論よベニー! 私は貴方のお嫁さんよ! 貴方がいなくなってもずっと……ずっとよ!』

「ありがとうジェーン……愛してる。愛してる!」


 二人共、泣いていた。

 本当はもっと立派な場所で、立派な式を挙げたかった。

 一生を添い遂げたかった。

 それからアンドレイは孫や息子に。パヴェル博士は息子にそれぞれ別れを告げる。

 陽気なジョニーは既に家族が避難所に全員避難済みで、残念ながら誰とも話せなかった。

 最後に宇宙飛行士のジャンとベティは、モニターに興味がないかのように静かに笑う。


「家族に別れは告げないのか?」

「僕等は孤児です、キャプテン。僕の家族はベティだけなんです」

「そういう事」


 ケヴォン船長の質問に、ジャンとベティは明るく答えて見せ付けるようにキスをした。

 なるほど、そういう仲だったのか。

 ある意味では、この二人は今ここにいる中で一番の幸せ者だ。

 モニタ越しではなく、最後の時まで家族とすぐ近くで過ごせるのだから。


「よし……行くぞ……」


 ケヴォン船長が意を決し、座席に座る。

 それと同時にクルー達も席につき、人生最後のミッションを果たすべく前を向いた。

 外に見える、美しき地球……そこに暮らす愛するべき人々。

 それを守る為に、今こそこの命を使おうと全員が決めた。

 そして最後にもう一度だけ地球を目に焼き付けようとし――。



 ――日本のある位置から、巨大なロボットが飛んできたのを全員が目撃した。



 ……ワッツ?

 誰がそう漏らしただろう。

 あるいは全員の声だったのかもしれない。

 日本から飛び立ったそれは全長110m、重量18万トンの鋼の竜神。

 全身の銀色の装甲で覆った大怪獣が空を飛んでいる。否……宇宙を飛んでいる!


「オーマイガッ! メカジガース!?」


 飛んでいるそれに、陽気なジョニーは見覚えがあった。

 昭和50年に日本で初公開されてより大人気となり、現在でもシリーズが続いている怪獣映画『ジガース』シリーズ。

 その第十五作目として平成10年作られた『ジガースVSメカジガース』において、大怪獣ジガースに対抗するべく作中の日本人が造り上げた決戦兵器こそがメカジガースだ。

 110mという、どう考えても現代の科学では二足歩行など出来ないだろう巨体。ジガースを模した怪獣のような顔。

 ジガースの吐き出す8000度の火炎に耐えられるように設計された銀色の装甲に、何を想定して用意されたかは作中でも最後まで分からず仕舞いだった単独大気圏突入・離脱機能。

 その速度は外見に反して地球から火星までの距離を僅か一時間で往復可能という出鱈目スペックで、搭載されている超兵器の数々は核兵器をも凌ぐ。

 それは決して現実ではあり得ないだろう超兵器だ。空想の中にしか存在出来ないものだ。

 それが今、目の前にいる! 現実にいる!

 一体何が起こっているのかも分からないフューチャー号の面々が見ている前でメカジガースは彗星へと突撃し、正面から体当たりをブチかました。

 いかにメカジガースが巨大だろうと、彗星のサイズには敵わない。

 しかしどういうわけか彗星はメカジガースに押し負け、あっさりと進路を変えてしまった。

 そんな彗星に向けてメカジガースが口を開き、そこから七色に輝く光線を発射した。


「オーウ! メガスマッシャー! ワンダホー!」


 陽気なジョニーがテンションを上げ、彼の見ている前で彗星に亀裂が走っていく。

 ちなみにメガスマッシャーとはメカジガースのメインウェポンで、その破壊力は核ミサイル一万発分に相当する……らしい。特撮の設定なんて大雑把なものなのだから気にしてはいけない。

 更にメカジガースは両手の指からミサイルを発射し、目からも光線を発射した。

 攻撃が次々と彗星に直撃し、彗星が砕けていく。

 そのあんまりな光景にフューチャー号の面々は顎が外れんばかりに唖然とし、地上では作戦本部の全員が白目を剥いていた。


「レッツゴーメカジガァァァス!」


 陽気なジョニーだけが心底嬉しそうに叫び、そして遂に彗星はメカジガースの攻撃に耐え切れず木っ端微塵に砕け散った!

 爆風の中でメカジガースは勝利の彷徨をあげ、どういうわけか宇宙空間なのに全員が確かに鋼の竜神の叫びを聞いた。

 こいつだけ明らかに別の物理法則で動いている! 宇宙で声が伝わるわけないだろ、いい加減にしろ!

 そうしてやる事をやったメカジガースはそのまま、日本へと帰還していった。


「……クレイジィィィィ! ジャパニーズクレイジィィィィィ!

オーマイガ! オーマオガーッ! ユアクレイジー!」


 ケヴォン船長は叫んだ。叫ぶしか出来なかった。

 ちょっと待て、俺等の決意は? あの涙を誘う家族との別れは何だったのか?

 そんな怒りを込めて叫ぶも、メカジガースには伝わらない。

 それでも彼は叫ぶしかなかった。


 余談だが、地上に帰った後にベニーは無事に恋人と結婚式を挙げた。おめでとう!



【海外の反応】



■オーマイガ! 日本が遂にやらかしやがった!


■世界は救われたけど凄い複雑な気分だ……だってこの兵器は次に俺達に向けられるかもしれないんだぜ?


■フューチャー号が帰還後に公開した映像を見て顎が外れるかと思ったよ。


■嘘だと言ってくれ日本よ……。


■これは流石にフェイクニュースだろ? ……だろ?


■フューチャー号の船員八人が本当だと証言してるし、作戦に関わった軍の関係者も証言してるから本当の事だ。俺は信じるね。何故ならいつだって変な物は日本からやって来るんだ。


■俺達が鉄道を動かすのに苦労していた時、日本は巨大ロボットを宇宙に飛ばしていた。


■2020年を日本は諦めていなかったんだな。


■日本だけ2200年に進んでいる。


■なっ? 俺の言った通りだったろ? 日本はとっくに巨大ロボットを完成させていたんだ。


■きっとWW3で使うつもりだったんだろうな……恐ろしい。


■日本にとっての誤算は隕石が落ちて来てこれを隠せる段階ではなくなってしまった事だ。流石に地球が滅びたら困るんだろう。


■奴等の秘密兵器を公の場に引きずり出したという事を考えれば、ケンタビオスにも意味はあったな。


■ちなみに日本の総理は何て言ってるんだ?


■こんな物を造った覚えはないって言い張ってるよ。もう隠せる段階過ぎてるのにね。


■日本だけ別の次元に存在している説が証明されたな。


■総理が知らないって現実的に考えてあり得る?


■ない。こんなデカイのを造るのにいくらかかると思ってるんだ。国家予算必須だぞ。


■これは笑いごとではない。奴等は核を非難しておきながら、その裏でもっとやばい兵器を開発していたんだ。世界で手を取り合って日本に抗議するべきだ。


■メカジガースのビームは核兵器一万発分だ。そして奴はそれを連射出来る。これは由々しき事態である。


■日本が核兵器を持たない理由がこれか……。


■こんなのがあるなら最初から使うべきだった。


■あわよくばフューチャー号の作戦が成功したらそのまま秘密にしておく気だったんだろう。


■現実的に見れば、こんな二足歩行の巨大ロボが強いわけがない。ただのでかい的だ。


■君こそ現実を見るべきだ。こいつは人類を滅ぼせる彗星を簡単に壊せるし、宇宙にも飛べるんだ。つまり宇宙の上からいつでも、どこでも攻撃して滅ぼしてしまえるって事だ。


■実際問題、こいつと戦争になったらどうなるの?


■ケンタビオスは人類を滅ぼせるくらい強い。メカジガースはそれより強い。説明は必要かい?


■俺は今まで日本のニュースを見る度に日本はロボットを隠し持っていると言ってきた。けど本当に隠し持ってる奴があるか!


■子供の頃の夢が現実になった。今は悪夢だ。


■ジガースが攻めてきた時の為に今から準備してるんだよ。


■日本よ、君達はいつだって俺達を混乱させてくれる。


■何なのだこれは……どうすればいいのだ!?


■あのビームは一体どういう原理で発射されているんだい?


■俺は日本人だけど、俺もこんなのがあるなんて知らなかった。


■国家予算の正しい使い道だ。


■これが未来か……。


■物価が上がり続けるわけだ。


■俺達は過去の世界に生きていたのかもしれない。


■我が国も急いでこのクレイジーな兵器を配備しなければ!


■今すぐ軍隊を増強しなければならない。日本が攻め込んでくる前にだ!




 ――これは完全な余談だが、この一件以降全世界から非難の集中砲火を浴びる事となった総理大臣は心労からやつれ果て、頭が禿げ上がってしまったという。

 頑張れ……総理……!

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【後書き】

ハリウッド映画で稀によくある隕石が地球に接近してやべえ!なお話で突然メ〇ゴジラ(宇宙まで行ける事を考えるとM〇GERA?)がすっ飛んで来たらカオスやろなあ、と思って書きました。本当にそれだけ。

好評ならまたエピソード追加するかもしれません。それではまた。

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