乙女ゲーの悪役令嬢に転生して破滅エンド回避を目指すのはごくありふれた設定ですが、家は元敵国の公爵家で領地が大陸の端というの活かして大海原の向こうの新大陸を目指すというのがこの作品最大のポイント。中世ヨーロッパな文明レベルで大航海を可能にするため、魔法はないけれど魔石を使った魔道具はあるということで前提段階での内政チートがとても面白い。
領地外との外交ももちろん重要な要素ですが、主人公が非常にポジティブで周囲の人々も良い人ばかりな一方、敵対する他領地の貴族や王家に悪役キャラがまとまっているので対立軸が非常にシンプルでわかりやすいお話です。主人公の日本人的な価値観と公爵令嬢として受けた高い教育の二つが作品の中でとても上手くミックスされており、その生き様、立ち回り自体がこの作品の最大の魅力だと思います。
知識チートは前世が一般人なので人並みの家電知識と趣味の料理レシピくらいですが、男家族に無理矢理教え込まれた船舶技術に関しては作品の重要な部分という事もあってかなり細かく描写、説明されており、全く知識がなくても楽しめます。
一つ一つのエピソードを手を抜かずに書いてくれており、「いざ、新大陸へ!」は本当に遠い道のりです。かなり長編になると思いますが、テンポ素晴らしくよく話が進むので読み出したら止まらない、ハマリ度の非常に高い作品。転生当初はまだ幼く家から出ませんが、外出するようになって世界が広がり、登場人物が増えるとドンドン面白くなっていくので、とりあえずそこまで読んでみることをお勧めします。
未来を勝ち取る。
家族と笑って過ごせる未来。
大好きな両親、そして自分自身。来たるジ・エンドを回避し、自領も豊かにする。それが最良の未来を得る手段。
侮る中央の貴族共、そう仕向ける王家。
辺境の田舎者だと侮れるのも今の内だ!
王都が中心だと言うのなら、世界の中心を我が領に変えてしまえば良い。
理解ある大好きな両親と家族、協力者とで知識チートを自重無しで暗躍する幼女。
そう。幼女なのである。
高スペックの頭脳を得た転生令嬢の忙しき日々。
海洋ファンタジー?も始まるかも?しれない?
開発される先進の魔道具はロマンへのスパイス。
これは貴族社会の魍魎達を出し抜いて戦う家族と仲間の幸せを掛けた物語。
素晴らしい。
この一言に尽きます。
まず、如何なる小説においても「航海」をテーマにした作品は非常に少ないと言う事を念頭において頂きたい。
理由は非常に簡単で「専門的な知識、道具及びそれらの活用法」を作者1人の手前味噌で書くのはかなりの無理があるからです。
かの「暗殺者の信条4」だって色々な知識人の力を結集して作ったのだからそれがどれだけ難しい事なのかは想像頂けるでしょう。
SFの世界の様な不思議技術を使った宇宙航海ものなんかは存在しますが、小説サイトに投稿する作品でこのようなリアル海洋物を書こうと思えばそれなり以上の知識を備えていなければ不可能です。
これだけの物を盛り込みつつ、ストーリーもこれからの盛り上がりが楽しみな内容であり、続きから目が離せません。
私も業界人では無い為、内政チート発動時に詳しい内容が出る度に別窓で調べながら読む等して補完はしていますが知らないことを小説を楽しみながら知ることが出来るので苦にはなりませんでした。