第50話
私は、物心ついた時から、夢を観ている。
見知らぬ他人の行く末を私が決める、そんな夢だ。どの夢も鮮明に思い出せる。
初めは理不尽に思った。
その次は腹立たしく思った。
その後は、馬鹿馬鹿しくなった。
何故人々は自分の運命を自分で決められないのだ。どの様な運命も私から観たら、とても明らかなのに。運命を決める分岐点にすら気づいていない。
自分の事を人任せにしてのうのうと生きる人々を真剣に考えるのが、馬鹿馬鹿しくなった。
ではその後は?
やりがいを感じた。
他人の運命を自分が決める。
生きるも死ぬも、私次第だ。
私の気分次第で人々は、私の思うがままになる。
この楽しさを皆んなに伝えたい。
「あなたの選択は二つです——」
椅子に繋がれたこの人は、どんな選択をするのだろう。
私が与えた分岐点。
その先を想像できるのだろうか。
私は想像できる。私が決めたから。
この人は、気づけるのか。
気づける人なのか。
「そうですか。おめでとうございます——」
この人は気づけなかった。それでも自分で選んだのだ。素晴らしい事である。だから、褒めておこう。
だが少しだけ、淋しいと思う。
誰か私とこの娯楽を共有できる人はいないものか。
何処かに、私と同じ夢を観ている人は、いないのだろうか。
きっと、いないだろう。
でも、想像すると、それだけで嬉しく思えてくる。
「くふ、くふふ、くふふふふふふ————」
私はこれからも、与え続けよう。
選択権は誰にでも、あるのだから。
選択権。
終わり。
選択権。 Y.T @waitii
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