第10話そして、2人は……
若い女の子は、朝早く帰宅して着替えて大きなバッグを抱えて帰ってきた。
彼は、まだ酒臭い息を吐きながら、
「それっ、何の荷物?」
彼女は笑顔で、
「先輩、ちょっと一緒に生活してもらえませんか?」
彼は様々な可能性を考えて、
「障がい者同士のカップルは、いずれ破綻するよ」
と、呟いた。でも、彼女は、
「わたし、気付いたんです」
「何を?」
「わたし、先輩と一緒にいると心が落ち着いて、頓服薬の精神安定剤の量が減るんです。先輩がどうしても、嫌ならわたしは帰りますから」
と、彼は言われて、追い返す気は無かったので、彼女の要望通りに同棲することを決めた。
あの、厭な病院で繋がった2人は近所の公園を散歩した。
「先輩、今日は暖かいですね」
「うん、僕もそう思う」
彼女は彼の左手を握った。彼は少し驚いたが手を握り返した。
これから、2人は末長く一緒に暮らしたとさ。
終わり
厭な病院 羽弦トリス @September-0919
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