黒魔導士の少女は巡礼旅の果てに何を見つけるのか

最新86話まで拝読してのレビューです。

これは某ゲームでも有名な黒魔導士の少女が巡礼の旅に出る物語です。
まるでサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼の旅(こちらは純粋な宗教巡礼ですが)を彷彿とさせながら、ファンタジーらしい要素もしっかり描かれています。
どういった要素があるかは、あらすじをご覧ください。

主人公サフィは可憐な少女、その彼女がなぜ一人で古い巡礼路を歩いているのか。どんな目的があるのか。そこで彼女は何を見て、何を知るのか。

ファンタジー特有のいかにもな派手な戦闘はありません。そのようなものがなくても、深く作品に没頭できるのです。
それは偏に作者様が紡ぎ出す物語の妙、情景描写には特筆すべきものがあり、それらを極力排した薄っぺらい作品とはまさしく一線を画しています。

旅の醍醐味といえば、立ち寄った先々で見るべき景観であり、そこから五感を通じて感じ取れるものです。これらを作者様は卓越した文章力で言葉にしています。
時には難しい漢字も出てきたり、話が脱線したりと、色々ありますが、それもまた一興でしょう。

実のところ、作者様の作品は「曲藝團の畸型」(伝奇ジャンル)、「隻脚娼婦館」(ホラー)を読了後にこちらに移ってきました。作者様の持ち味はこの二作に凝縮されていて、だからこそ異世界ファンタジー作品でも実力がいかんなく発揮されています。

サフィの巡礼の旅が終わる時、彼女には何が訪れるのか。最後まで追い続けたい作品です。

この機会に一読することをお薦めします。

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