第4話
誰かの会話が聞こえた…慎重に近づき、姿を確認する。
久賀田と熱海だった。
「おい…お前ら、大丈夫か?」
「うわッ! なんだ…月木さんと星野さんか…びっくりっしたーお前らこそ大丈夫か? なんだよお前…トレイ臭けど」
「いや…正直大丈夫じゃない。臭いのことは触れないでくれ」
「? なんで」
「トイレに落ちたんですって」
代わりに星野が言った。
「ああーおまえ、GOOD」
親指を立てながら胸に押し付ける久賀田。
「いやいや、なんの罰ゲームだよ!」
「んで、お前らは最初どこにいた?」
「俺は音楽室にいたよ。廊下に出て歩いてたら熱海にあった」
「私は理科室からだった。廊下に出てみんなを探そうと思ったら、まず藤戸っていう私達以外に参加者がいて一緒についていったの。その次に久賀田さんに会ったの。そして藤戸さんが知り合いの悲鳴が聞こえたっていってどこかへと走っていったと思ったら悲鳴が聞こえて…私たち怖くなって…藤戸さんを置いて逃げてきちゃったの…無事だといいんだけど」
藤戸さん…ぼくたち以外に参加者がいたのか。
「理科室ということは新校舎だよね?」
「そのはずなんだけど、私たちがいた場所が…」
熱海は不思議なことを言った。
「旧校舎だったの。ねえ、私たちってあの写真の場所に来ているのよね。新校舎と旧校舎。私たちの学校。だけど、ここは違う。まるで昔にタイムスリップしたみたい」
久賀田も同意した。
「俺達は確かに学校を舞台にした。だけど、どういうことか。昔の学校に来てしまっているんだ。理科室も音楽室も家庭科室もいまは、新校舎にある。だけど、ここは昔と同じ旧校舎にある。これって、私たち失敗したのか。それとも藤戸さんたちの学校に来てしまったのだろうか」
話せば話すほどおかしなことばかりだ。熱海さんが持ち出したあの本には確かに写真を舞台に鬼ごっこする場所が決まる。それがなぜ過去にいるのだろうか。わからない事ばかりだ。
「ねえ、その藤戸さんていう人、特徴はあるの? もしかして私たちがあっているかもしれない」
星野は嫌な予感を浮かべながら質問する。
「そうね、私たちと同じ学生服で、あと黒髪…そばかすかな」
ぼくたちは息をのんだ。
廊下で倒れていた人、藤戸さんだったんだ。あのとき、しっかりと確認していたわけじゃないけど、昔の校舎が舞台だとしたのなら、理科室からそう遠くないあの場所で倒れているのだと考えたらその考えは間違いじゃないはずだ。だけど、確かめに行く勇気がない。あの人をもう一度念入りに調べようとする勇気がない。怖いとかじゃない。もし、鬼がまたあそこにいたら、きっと逃げる場所がないからだ。正門の鍵を開けない限りは。
「その反応…会ったんだね」
ぼくたちは黙ってうなずく。
久賀田は察したようだ。
「この鬼ごっこは危険だ。なあ、この鬼ごっこはどうやったら終われる!?」
久賀田は熱海に聞く。
「本の説明通りで行けば、”最後の鬼になるまでは終わらない”って」
「なんだよ…それ、ふざけるなよ!」
手を挙げそうになる久賀田をとっさに止めた。久賀田はオカルトクラブで随一力がある。その力の差は圧倒的でぼくの両腕なんかすぐに投げ飛ばされてしまった。
「ワクワクするっていった人は誰でしょうね。私もこんなことになるなんて知らなかったの」
「知らなかったで済む話じゃないだろ! 現に人が死んでいるのかもしれないんだぞ!」
二人が口論になっていさなか
「やめて!」
星野が二人の間に入った。
「こんなところで喧嘩しても解決にならないよ!」
まともなことを言われ、久賀田は押し黙ってしまう。熱海は言い返せない。
「助かる方法はあるよ。熱海さん、本を持っていたよね」
夢の中に入る前、熱海は本をずっと持っていたのを見ていた。もしかしたら、この夢の世界にも本が来ているのかもしれない。攻略のキーとなる本があるはずだと。
「…取られちゃった」
「え」
「取られちゃったの。藤戸さんがその本を見たいからって言って借り逃げられたの。だから、今は持っていないの」
「そんな…」
「おい、どうするんだよ!」
久賀田が再び腹を立てる。そこに慰めるかのように星野がなだめる。
「…ぼくたちが会った時には、本はなかった。多分、鬼が持っているか藤戸さんの知り合いが持っているかだ」
「クソっ! 振り出しかよ」
どうするか悩んでいるとき、
夢鬼さん 黒白 黎 @KurosihiroRei
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