思いのソトからやってきた

斜芽 右上

プロローグ


「…と言うわけなので是非チキューへいってほしいんだワイさ」

「エェ〜…?」

「エェ~じゃないの! コズミは将来父さんのようにたくましく仕事してもらうための訓練だワイさ!」

 とある場所で行われている、他愛もないやり取り。

 気怠そうに返事をしていた少女―名前をコズミカ=エントロピーという。

「アタシが行ったところで何にもならないだワイさ」

「い~から行くんだワイさ! 父さんも忙しいから一時間後にはこの辺から移動しなきゃいけないから! 準備しないなら父さんが勝手に洋服とか選んでおくだワイさ」

 そう言いながらコズミの父は雑に服が入っている箪笥を開け、彼女のバッグへと詰めていく。

「あ~! ちょっとやめてよ~! 下着もちゃんとペアのやつがあんの!」

「じゃ~早く自分でやるだワイさ」

「やるから! いじらないで!」

 父が持つ自身のバッグを取り返す。

 お気付きかもしれないが、この会話は宇宙に住むヒトガタ系の宇宙人のやりとりだ。

「じゃあ小型タクシーを一時間後に呼ぶから、それまでに用意しておくだワイさ!」

「分かったから! 早く部屋から出てくワイさ!」

 ズケズケと自分の部屋に入ってきた父を追い返すコズミ。

「なんでチキューに行かないといけないんだワイさ…」

 ぶつぶつ文句を言いながら支度をするコズミ。

 …しかし、この時まだ彼女は知らなかった。






 自分が迷子になることに。

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