振り続けた旗が示すもの

どこの時代とも記されない。
固有名詞は語られず、ただ戦争の一場面であることだけはわかる、簡潔な文。
だから、きっとこれは歴史のそこかしこにあった、いや、今もそこにある話なのだ。
だが、体験とは一個人のものだ。
その者だけの仲間がおり、敵があり、家族がある。殺した者、殺された者がある。
振り続けた旗は、そんな、たしかに存在したひとりの人間の足掻きのように感じた。
または、そこに生きている、生きていた、という証。