2-2 粕壁の魔法少女たちと奇妙な依頼

 カナデの上官である月乃も、同僚も徐々に環境に馴染んできている中、カナデだけがやや悪目立ちしている。


 月乃もカナデと話をして、新たな場所で新たな気持ちで頑張ろう、と話をしているのだが、カナデは頑なに自分の意見は変えない。


「バディの君には苦労をかける」


 普段は鎧を着て行動しているが、今日は珍しくそうではない衣装だ。白いノースリーブのセーターにタイトなロングスカートと、この後オフということが衣装からもうかがえる。


「今はどうにもな。こだわる理由はわかるから、どうしたものか……」


「浦与宮はすごいところだからねぇ。みんながきびきび頑張ってるし、活気もいいし、あそこにいると都会のレディみたいだよねー」


「そこらへんにこだわりはないな。あいつは休みもインドアだったから、それなら別に都会でなくても構わないと思う」


「まああの必死な感じそれだけが理由じゃないだろうけど、でもあまり月乃さんから聞くのはよくない?」


 月乃が肯定の証として頭を縦に振ったのを見てサキはそれ以上のことを追及しなかった。センジンもそれを見届けてから、主催としてこの場に集まった4人に話をする。


「今日の議題は、お前ら4人の合同作戦の話だ」


「めずらしーね? いつもは1つの依頼に魔法少女1人すら出し渋るのに」


「金がちげーんだよ。よくみろぉ?」


「金かい」

 と、ツッコミを入れたサキだが、その額を見るとサキもびっくり。目が大きく開かれる。


「1000万とか、どんな富豪だよ!」


「しかも依頼のされ方が奇怪でな。棚藤、当時の面白状況を説明してくれ」


 棚藤とはサキの向かい側にいる月乃の隣、淡い紫の瞳と、同じ色のチュニックをいつも着ている魔法少女、藤の魔法少女が口を開く。


「いつものように街の藤の様子を見に行ってね? したらね? 変なドローンが私の前に落ちてきてね。私がそれを拾ったらね、そこから声が聞こえてきたんだよね」


 『ね』を語尾に使いやすい彼女の話し方に月乃も初めは少し困惑したものの、今では慣れたものだ。今では月乃とバディを組み、彼女の趣味である花畑作りに付き合うほどに親密になった。サキはいいなあ、とたまにその2人は見ている。


「おかしなこともあるもんだなぁ」


 そしてもう1人、粕壁の魔法少女の中では一番小さいながらもバリバリの武闘派さん魔法少女も話に乗ってきた。


「その方はなんと? 戦闘ならぜひわたくしに。私が斬ります」


「沙織、やる気がすごい」


 漆黒ストレートのセミロングヘア、サキと同じでもきちっとギルドの制服を着こなして細部まで着飾っているからこそ、その子からは清廉なしっかり者という印象を受ける人も多いが、実は剣士気質で戦闘狂な一面があるのは粕壁の戦士のみが知ることだ。


 剣を携帯しているのも、護身用、魔法少女としての気合入れなどの理由ではなく。『いつでも戦えるように』とにこやかに言うのが彼女の気質をよく表しているだろう。サキとしては昂っている彼女にたまに襲われるので、油断ならない相手でもある。


「最強の魔法少女に伝えてくれ。この街はいずれ滅ぶ。手遅れにならないうちに僕を捜して。だって」


 しかしすぐに首をかしげる。


「報酬は書かれてたけど、宛名もないし、場所もないし、ムリーだね」


 いたずらともとれるそのメッセージだがセンジンは興味深々だ。


 センジンは粕壁の紋章神士や呪武士などを統括するお偉いさんなので、彼がやると言ったことは基本的に粕壁所属の魔法少女や呪武士たちは強力することになる。


「こんな怪しい依頼やってもカネくれないかもよ?」


「カネはあればあるほどいいし、この街は滅ぶとか言われたら、放っておくわけにもいかないだろ。俺はこの街が大好きな素晴らしい為政者だから、無視できないぜ」


「場所もだれかもわからないのに、素晴らしい為政者さんはやれって雑な命令下すつもり? てか、だから人手がいるからお前ら全員で探しに行けって言わないよね」


「そーだよ」


 月乃以外の3人が『てめえマジでいってんのか』という目でセンジンを睨むがセンジンはひるまない!


「お前らなぁ、粕壁を守りたいっていう心はないのか? 成功すれば街を守り、大量の報酬も手に入れられる。いいことづくめじゃないか」


「無謀ね、無茶だね」

「そうです。戦いでなければあまりちょっと」

「パシリだー」


「うるせーお前ら。そんな弱気で東京の塔に挑めるのか?」


「別にきょーみないね」

「私も特にないですね」

「おなじくー」


「お前らそれでも魔法少女かよ。紋章は東京の塔に挑む力を持つ権利を示すってのに、やる気のないやつらめ。この依頼はやるぞ。俺も手伝ってやるから準備しとけな」


 権力濫用だと主張する3人の意見をガン無視するセンジンを見て月乃は驚愕で口を開けてたが、それはセンジンの横暴に対してではない。


「上官に真っ向から反論、叶願の塔に興味なし、とは……私が今まで見たところでは考えられない光景ですね」


「だろ? まったく不良娘たちが揃ったもんだよ」


「ヤダー」

「やだね」

「サキさんこの後お手合わせを」


「うるせーお前らぁ。やるったらやるの。準備しなさい。日常の業務も緊急ミッションもこなすのが一流の魔法少女よ」


 センジンは頑なに自分の意見を曲げず、何を得られるかもわからない唐突に入ってきた仕事受けることになった。






 カナデはカウンターで次の仕事の予約の為、今入っている魔法少女や呪い武士への依頼の数々を見ていた。


「……浦与宮の時とは思いっきり違う……」


 魔法少女や呪武士の仕事は、突き詰めれば3つ。街の護衛、悪霊討伐、遠征の3つだ。


 街の護衛は言わずもがな、悪霊討伐は街の護衛と同義ではない。


 悪霊が跋扈する時代、得に人間にとって致命的なのは農業が成り立つ場所が少ないことだ。広大な土地を必要とする仕事に対し、人間の安全な生活ができる場所はそう多くない。


 そこで悪霊を倒した際に残す残留物を魔法少女たちの各拠点にある通称『錬金釜』に投入することで、人間が食べられる食べ物を確保できるのだ。


 悪霊や呪武士はそのために悪霊と戦いに行ったりもする。カナデの悪霊への突進ぶりはやや冷や冷やするほどの狂戦士ぶりだが、ちゃんと残留物は持って帰ってくるので、ギルド的には食物の供給が多く助かっている一面はある。


 ゆえにギルドとしては、カナデが積極的に悪霊と戦いに行っていることは、非常に素晴らしい働きぶりと評価せざるを得ないので、彼女を止める理由はない。


「カナデー」


「どうしたの?」


「この後緊急ミッション。一緒に行くよ」


「そういってこの前は学校でのお手伝いとかさせましたよね」


「カナデ人気ものだったじゃん」


「もうああいうのはこりごりです。私は戦う依頼以外やりません」


 ぷい、とそっぽを向き、そのままサキから離れようとする。しかしサキはカナデに絶対に聞こえるように大きな声で。


「いーの? 今回は戦い系だよ? しかもどでかいミッション。クリアすればきっと実績になる」


 カナデを呼び止めた。カナデはピタリと止まる。そしてサキに振り返る。


「嘘じゃないよね」


「もち」


「詳しく聞く」


「じゃあ、歩きながらね。急がないと手柄取られちゃうかもだから」


 ***********************

横暴センジンの次回予告!

 うちに集まっているのは飛んでもねえ不良魔法少女だよ。まったく、ちなみに言っておくが俺のところは問題児を預かる場所じゃないからな。困ってもこっちによこしてくるなよ。俺にウェルカムなのは可愛いカノジョ候補だからな

 さて、次回から第2話のメインの話、奇妙な依頼に2人が挑むぜ。このくそ面倒な依頼主を果たして見つけることはできるかな?

 新たに出てきた魔法少女の活躍に期待!

 ぷいっとしたくせに振り返っちゃうカナデかわいいね。

 一体今回の依頼にはどんな裏があるのかワクワク。

 そんな感じで次回以降も楽しみな人は、応援の♡やフォローをよろしくな。

 魔法少女たちの活躍に期待大な人は星3つくれるとさらにうれしいぜ

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最強と至高の魔法少女はカノジョのためなら巨悪も神様も倒してみせる。 とざきとおる @femania

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