インテリ志望の小説家のGWの過ごし方

脳幹 まこと

悪友からの応援コメント



・なんつーか、五年前から何にも変わってないなお前。



・どうせGWの予定もろくに考えてないんだろ。

 その時がきたら考えましょうじゃ、もうゲームセットだっての。



・しぶしぶ、いやいや、だましだまし。

 お前の取り組みをピタリと言い当てているな?

「不満に満ちた生涯」というドキュメンタリー映画でも撮るつもりなんか?



・今回こそ思い出を、あるいは実績を残したい、と。

 残らねえよ、んなもん。

 残すことそのものが頑張る目的ってんなら、今すぐやめちまえ。GWの、ひいては未来の無駄だから。



・一日ずっと、スタバかどっかで延々考え込むつもりなのか。

 作業用BGMとか聞いてよ、アイデアの捻出だかでネットサーフィンだか、動画見たくなって、それらに時間持ってかれて、なんとなく進みは悪い感じするけど、椅子の前にいたんだから「充実した! 頑張った! 正しいことをした!」とぽっかり空いた胸でも張ってみるか?



・もうドツボなんだよ。気持ち良くなるために糖分を摂るように、やった感を出すためだけに、時間を消費して、結果として中身のねえ何かを出す。



・取り掛かる前に全体を見据える癖をつけろ。五里霧中なのに視野の狭さを自分や他人や環境のせいにしてもしょうがない。



・世間はお前が思うほど厳しくないぜ? ただお前にわざわざ顔向けるほど暇でも物好きでもないだけだ。



・とりあえず外出ろや。意味もない文章を書くよか、意味もなく歩いたほうがまだマシだ。



・なんで人気にならねえのかって? お前の作品は所詮「ぺちゃくちゃ」だからな。お前の個性だかが受け入れられるんなら、世の中大半ピカソだっての。



・言っとくが、お前が自由に書き殴れてるのはド底辺、いや、枠外だからだぞ。

 いいか、お前はある会社の前でわーわーギャーギャー労働環境についてわめき散らすおじさんだ。

 このおじさんが仮にその会社のヒラ社員だとしたら、クビだか謹慎だか知らんが、処分が下されるだろ。

 でもお前は所属すらしていない。だから自由に騒げる。みんな敬遠するだけだ。「お気の毒に」と思うだけさ。あんまり通行人の邪魔すると、警察呼ばれるだろうけどな。



・PVとはなんだ。

 星とはなんだ。

 お前は星を10000以上集めた先生方の名前を全員言えるのか?

 PV数が1000万を超えた作品がいくつあるのか、調べたことがあるのか?



・考えてみたことがあるか? 1000年後の国語便覧をよ。

 考えるオツムがないなら、今から1000年前に出された書物を言えるか? 無理だろ。

 今を生きている天才はいる。偉大な業績だって大量に為されるだろうな。

 だが、その事実と、それがずっと残るかは、まるきり別のハナシだろ。



・幸いか当然か、お前は普通に生きている。健全な劣等感や嫉妬を抱いて生きている。なし崩し的に動き、頻繁に目移りする。目標を立てては未達成の繰り返しだ。

 何より自分の個性に殺されかけたことがない。



・時間が経てば経つほどに、働くって素晴らしいってなる。

 普通に真面目に働けば、生活できるだけのカネが手に入る。仕事が終われば(次が控えているとはいえ)それなりにスッとするしな。

 そうだろ?

 にひきかえ、どうだ創作ってやつの懐の狭さってのは。

 時間はかかるし、見返りはごく僅かだ。真面目さなんて関係ないし、何より「仕事をしてる」という感覚が一切生まれない。砂漠を彷徨って、砂を噛んで生き続けろっつーもんだ。



・時間の無駄だ、時間が勿体ない? そうやって作り上げたお前のそれは一体何だ?



・まあ、辞めねえだろ。

 そんな度胸もないだろ。

 お前は安全圏に居座って、保険を何重にも張った上で虚仮威こけおどしをするからな。



・お前のお粗末な100の理屈に、100の反例を返す自信があるね。

 どこがお粗末かって? アクも抜かない状態を素材の味として食わせるところさ。



・一切の議論がない。対話形式にしても、結局はお前の理屈を押し通したいだけだ。場合によってはそんな体裁すらない。



・一切の根拠がない。都合が悪くなったら「それが私の生き方」だとか「それが世界のルール」だとか、よくわかんねえ縮小や拡大をして強引に終わらせにかかる。



・一切の中身がない。お前のそれは「タマネギ」だ。皮だけしかない。中身は空っぽ。まあその皮の部分もお粗末なんだけどな。



・お前にとっての「中身」ってなんなんだ。人やらネットやらに聞く前に、お前にとっての「中身」とはなんなのか、ぶらぶらほっつき歩きながら考えてみたらどうだ?

 言っとくけど「自分探し」じゃねえからな。お前が延々と自分を探すのは、裸眼で生活してんのに突如「メガネメガネ」と騒ぎ立てるようなもんで、ボケのつもりでないなら、マジで心配になるから。



・人気の出る小説の書き方ってありますか?

 そんなことを聞いている時点で向いてないよ。少なくとも創作者としては。



・凡人が一端に食らいつく方法とは一体何だ?

「取り返しのつかないことをする」「引き返せないことをする」だろう。

 だが、それだけではまだ足りない。

「取り返しのつかないことをし続ける・・・・」「引き返せないことをし続ける・・・・」。

 そして重くなり続ける責任と影響を感じ、自分を本物のクズと認識する。

 謙遜やお世辞でない、本物のクズだとな。

 その悔恨と暗い歓びを以て書ける気力と面の厚さがあんなら、おそらくはプロットやキャラクターなんて考えなくても創作物になるだろ。



・そんなのは難しい? そこまで過激になる必要はない?

 まあ、そうだよな。お前は手を汚したくないもんな。綺麗なままでいたい。純真なままでいたい。

 そして相手にも同じものを求めるんだろ? 綺麗で純真で高潔なものを求めるんだろ?

 ほら、お前はやっぱりキモいんだよ。

 キモいって「気持ち悪い」ってことなんだけどな、どこが「気持ち悪い」のか、自分でも本当はよく分かってないんじゃねえか。



・他人に言われたのか、周りに合わせたのか、自分でそう感じているのかは知らないけど、お前は自分のことを「キモオタ」だの「陰キャ」だのと形容する。

 でもそれは予防線でしかない。脊髄反射でやっただけ。とっさの行動だったから、とりあえず自分を悪くしとけばいいや、という考え方さ。

 


・すべての対人関係は、健全であることが大前提だ。

 健全であるとは、「自分は傷つきたくないし、他人は傷つけたくない」だ。

 だが、お前はそのうち前者に対して問題がある。お前は自分を傷つけたくて仕方がない。だからこんな自虐をこき始める。

 自分のことだから周りは関係ないだろって?

 いいや、大有りさ。そういう奴は罪悪感バリバリに見えるが、実際のところは流血そのものを求めている。自分が手頃だから自分を傷つけているだけだ。

 自分の血で満足いかなくなったら、容易によそに標的を変える。



・「どうしたらいいと思う?」「これだと駄目かな?」これが言えない。

 結果お前は一人で突っ走りドブに落ちるか、他人にすべてを丸投げする。



・お前はインキャじゃねえよ、ヨウキャだ。ヨウは「幼稚」の幼だけどな。



・バカッターってあるよな。お前が心底軽蔑してるやつ。

 自己顕示欲が歪んだ形で表現されてな、お前は思うんだ。「もう少し自分を抑えられないのか」と。

 生憎だが、みんなもお前見てると同じ気持ちになるんだよ。「テメーの人生なんてどうでもいいが、迷惑かけるのは勘弁してほしい」ってな。



・お前に出来ることなんかもう見えてる。

「限界を勝手に設けるな」だって?

 そりゃ設けるさ。バカに勝手に動き回られると色々面倒くさいだろ?



・そもそも創作にしたって、わざわざ文章に的を絞る理由はなんだ。

 イラストは……恥の上塗りだから除外するとしても、他にも色々あるだろ。

 書写でもいいし、盆栽でもいい、プログラミングでもいい。紙粘土こねくり回して奇怪なオブジェ作るでもいい、パントマイムって表現もある。意外とフィットする形があるかもしれないだろ。

 GWなんだろ。普段だと、苦痛や面倒の都合で出来なかったことをやれるのが、利点なんだろ。



・創作をしてるヤツがなんとなく偉い、という風潮もまた罪作りだな。

 宝くじ買ってるやつが偉いと思うか? そんな確率の低い博打にカネを賭けるなんて……って笑うんじゃないか?

 五十歩百歩なんだよ。成功率から見れば。

 えらく時間がかかる上に、能力や環境やタイミングの差で、当選確率が変動する宝くじ。

 悲しくなるだろ? それにお熱になろうとしてるお前の浅はかさにさ。



・お前は普通だ。実際には「普通より下」だとはっきり言いたいが、最近は「劣等」というのも、なんか逆転要素になるらしく大変なことだ。

 特別になりたかったけど、やっぱり普通だった。

 隠された能力も、見逃された能力もなかった。周りの人たちはしっかりしてたんだな。

 インテリの素質も、トリックスターの素質も、ダークホースの素質もなかった。

 以前に「人ともうちょっと交流してみようぜ」と言ったが、やっぱり聞いてはなかった。



・お前は独りで普通に生きて、普通に死んで、それきりだろう。病床では「あのブドウはどうせ酸っぱかったんだ」と愚痴って、それが臨終の台詞になる。

 もちろん転生も来世にも期待できない。

 誰もお前を覚えない。

 国語便覧に載ることもない。



・お前は何をする。そんな結果が見えている状態で何をする。

「変えられない未来」に向かって何と叫ぶ。

 歩いても寝てもいいから、考えてみろ。


 幸い時間は、たっぷりとあるから。

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