#9 同盟、その1ページ目
「……取りあえず状況は理解した……正直かなり酷いが。
んで?その無能のレッテルを貼られた上で、俺にどうにかしろと?」
「そういうこった。
幸い、領民の中には俺が無能じゃないって気付いている味方が居る……
そいつらと協力して、最低限実力を示すのが大事だ」
「なるほどねぇ……んで?具体的にはどうやって実力を示すつもりで?」
その問いに、マルクは笑みを浮かべる。
正直優樹は嫌な予感がしたが、視線で続きを促す事にする。
「……簡単な話だ、貴族において、部下の功績は
その才能を見出したその貴族の功績にもなる……というだけだ」
「…………」
優樹が盛大なしかめっ面を見せる。
一体どういう事かと言うと……
「……つまり、俺を表面上部下として抱えて、
俺に大きな事をして欲しい……そう言いたいのか?」
「……その通りだ」
ニッ、と笑みを見せるマルク。
それに対し優樹は色々考えた素振りを見せた後答えを出す。
「……一つだけ、領主になるまでは手伝ってやるけど……
領主になった後の事は知らねぇぞ?」
「あぁ、それについては安心しろ、そもそも俺にお前を抱えていける自信はない。
そうだなぁ……特別顧問とか、名誉騎士とかの肩書だけならどうだ?」
その提案に、顎に手を当て、考える"フリ"をし……
「……なぁ、普通に領主の友人じゃダメか?」
そう気楽そうに言った。
その答えにマルクは目を点にし……
「…………ブフッ」
……盛大に噴出した。
「……オイ、人の提案を笑うとは良い度胸じゃねぇか」
「フッ……クククッ……いやすまねぇ、悪気はねぇんだ……
ただ、あまりに似合わねぇ提案だったからよ……ククッ……」
「……似合わねぇのは自覚してるよ」
そう溜息をつきながら答える優樹。
「……ふぅ、にしても、なんでそんな利の無い提案をするんだ?」
そう、純粋な疑問を投げかけたマルク。
それに対して優樹は半目で答える。
「利の無い提案……?
おいおいマルクさんや……もしかして俺が何も考えてないとでも思ったか……?」
「……どういう事だ?」
若干呆れたような、失望したような返事に焦るマルク。
「……まず一つ、友人になる、と言うのは一見何のメリットも無いように思える。
だが良いか?そもそもの話だが……友人ってのは”対等”なんだよ」
その発言に、流石にピンと来たのか、納得するマルク。
「……なるほど、つまりお前は次期領主……最低でも辺境伯、
場合によっちゃ公爵になれる人間と”対等”な関係である、という状況が望ましい訳か」
「そういう事だ」
そう、友人とは本来対等な関係であると言える。
ならば領主本人から友人である、と公言される事は
それだけの地位の人間が対等である、と認める事になる。
だからと言ってその友人が貴族になれる、なんて事は無い。
だがそれでも周囲からはそれだけの存在として認識されるのだ。
「そして二つ目、お前と友人になる、というのであれば対して気にする事でも無いが……
……領主に貸しがある、という状況は、切り札としては便利だろう?」
「……そりゃちげぇねぇな、確かにこれが成功した場合。
あんたからの借りは相当デカイ物になるし……」
そこで一度言葉を区切り、良い笑顔を浮かべてから続ける。
「"友人"からの借りを無視する程、俺は酷い奴になったつもりは無いからな!」
「……~♪」
口笛を吹いて嬉しそうな笑みを浮かべる優樹。
「嬉しい事言ってくれるねぇ~……
じゃあお互いの腹黒い部分はともかく、仲良くしようじゃないの♪」
「あぁ、こっちこそよろしく頼んだぜ!」
そう言って握手を交わす優樹とマルク。
後に腹黒同盟と言われる、世界最悪の集団の最初の一歩である。
因みに後ろで控えてるリリスは優樹のご機嫌な顔を見て
(うっわ、これ碌な事にならないわね)
と、これから起こるであろう惨劇に辟易としているのであった……
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