狂気の大賢者の冒険記~異世界でマイペースな大冒険~
秋星優樹
#1 プロローグ
ここは地球、日本のとある場所。
山奥に佇む別荘の様な建物、その二階の一室。
部屋の角にある一人用のソファーに腰掛けながら
一人の青年がぽつりと呟いた。
「はぁ……知性を持つ以上愚かな考えに至るのは人も神も同じか……」
見るからに疲れた様子だ、ソファーに体を深く沈めてため息をついている。
しかしその表情は何かに追い込まれているわけでも無さそうだ。
心底呆れたような、頭痛を堪えるような顔をしている。
「まぁ、例の"ナニカ"が何か分かった時点で諦めてはいたがな……」
諦めた、とは言っているがその顔に悲壮感や虚無感は無く
仕方のない現実として受入れ、覚悟を決めた様子である。
「しかしまぁ、よくタブーを犯してまでやろうと思ったよ本当に
この世界にとってはホントいい迷惑だなぁ?」
嫌味ったらしい口調でそう呟くが答える声はない。
代わりにエアコンとパソコンの音が静かな部屋に響いている。
この部屋には黄昏ている彼一人しかいない。
「まぁ、これ以上この世界に迷惑掛けたくねぇしそろそろ出るか」
独り言の割には誰かに話しかけているような口調だが
相変わらず答える声はない、ヘッドホンの様な物をしているが
通話をしている訳でもない、どう見ても独り言である。
「はぁ……生まれた世界を捨てるのは何とも変な気分だな
いや、別に捨てるわけじゃないが……訂正だ、離れる、だな」
参ったと言わんばかりに両手を上げて降参するようなポーズをとる。
何度も言うがこの部屋には彼一人しかいない。
「まぁいいか、それじゃさっさと行きますかね……」
そう言ってソファーから立ち上がり、ドアまで歩く。
ドアの横の机に置いてあったバックパックを手に持ち、肩に掛ける。
ドアノブを捻って開け、廊下へ出て階段へと向かった。
階段には小さな机と幅広なポットがあり、クローバーが植えられていた。
よく見るとその中の一つには四葉のクローバーがある。
そのポットに横にある霧吹きで水をやり、階段を下りる。
一階、地下一階、地下二階……そこそこ長い階段を下り
辿り着いた地下三階の一室、そこにある
大きくて無骨な機械仕掛けの両開きドアの前に立った。
「はぁ……これを使わなくて済む世界線があればよかったんだがな……」
大袈裟な程項垂れた後、気怠そうに顔を上げ
左手で頭を掻きながら反対の手でポケットから大きな鍵を取り出した。
「はぁ……"
パスワードを発音して鍵穴のカバーを外す。
金属の板が「プシュー」と言う空気の音と共に左右にスライドし、
中から鍵穴が出て来て、そこに鍵を差し込む。
「……"
『ワールドポータルドア』
仰々しい名前のドアが大きな音を立てながら横に開いていく
ドアの先はまるで陽炎のように空間が揺らいでいて、
誰が見てもこの先に行けば大変な事になるのはわかるだろう。
しかし彼は全く気にせず、揺らめく空間一瞥すると
最後にと言わんばかりに今日一番の盛大なため息をついた。
そして長いため息をつき終わると顔を上げ……
「ほんじゃま、異世界に行きますか」
やれやれと言わんばかりに肩を竦めてドアの奥に歩いて行った。
足を踏み入れて暫くした後、ドアが自動的に閉まりだした
恐らく、向こう側からこのドアを開けるのは容易な事ではないだろう。
彼はドアが閉まる間際、扉を肩越しに振り向き……
「じゃあな!俺の生まれ故郷!
またいつか、面倒事が片付いたら戻ってくるぜ!
まぁ何年後か、何十、何百年後かは分らんがな!」
最後にニヤリと笑ってさらに奥へと消えていき、扉が閉まった。
後に残ったのは人の気配が一切なくなった別荘と、
ドアのある部屋の壁に掛けられた4人の人間が笑っている写真だけだった……
―――――――――――――――――――――――――――
この日、幼い頃から波乱万丈な人生を潜り抜け
恐らく世界一濃厚な18年間を過ごした青年が異世界へと渡った。
大きな運命を宿した彼は異世界へと渡っても様々な事に巻き込まれるであろう。
この物語はそんな一人の青年……『
異世界へと渡り、様々なトラブルに巻き込まれながらトラブルに苦戦……
する事無く、彼の持つ謎の力を駆使して目的を達成するべく
のんびりゆっくり、でもトラブルに巻き込まれながら生きていく
そんな彼の"冒険記"が、ここから始まる。
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