#4 とてもふおんなくうき
門を通った後、家に向かうマルクスと
後ろを付いていく優樹の間には気不味い空気が流れていた。
「……本当にすまない、お詫びと言ってはなんだが
この街にいる間は僕の手の届く限り助けることを
誓うから許していただきたい……」
「あはは……ありがとうございます、
お言葉には甘えさせて戴きますがあまりお気になさらずに。
先程も言いましたが慣れてるので……」
頭の痛そうな顔をしながら謝罪するマルクスに
本当に気にしてない素振りをしながら宥める優樹。
部下のした事を謝罪できる辺り、良い人だなと
優樹は思いながらマルクスに付いていく。
「そう言ってもらえると助かるよ……
あぁ、もうすぐ私の家につくよ、
少し手狭かもしれないが許してほしいかな」
「いえ、そんな事無いと思いますけど……」
既に平民の住宅街と思わしき場所は過ぎ去り
貴族が住んでるであろう豪華な建物が
立ち並ぶ区域に入っている。
予想通りではあるが屋敷を手狭というのは
平民に対する皮肉なのではないだろうか。
(まぁ俺も屋敷暮らしだったし人の事言えんか)
内心、優樹もそう考える。
別に裕福な生まれだったわけではないが、
幼い頃から様々な事をしてきて、中学生の頃には資金も
自分で工面してきた優樹は、一般人相当の
金銭感覚を持ちつつも豪華な暮らしをしていた。
「さぁ、着いたよ、此処が僕の家だ」
「……」
そういって案内されたのは
どう見ても"周囲の建物より大きい屋敷"だ。
もう一度言おう、ここは貴族街であるだろうと言える程
"大きな屋敷が立ち並ぶ街"だ。
その中でも更に大きいとなると……
「小さな家だけど、満足してもらえたら嬉しいな」
「流石に嫌味が過ぎませんかね!?」
いい笑顔でそう話すマルクスに突っ込まざるを得なかった。
当然だろう、周辺の屋敷4つ分程の大きさなのだ、どう考えても異常である。
そもそも周囲の屋敷でさえ、現代日本における一軒家が20個は収まるであろうサイズなのだ
その4倍以上……それこそ家100個分に相当すると言っていい程の大きさだ。
当然、こんな屋敷を維持するのに掛かる手間と費用は尋常じゃないだろう。
衛士長という役職から、そこそこの上流階級だとは思っていたが
まさかこんな巨大な屋敷に住んでいるとは夢にも思わなかった。
「ふふっ、まぁ僕がこんな事を言いたくなる理由も、入ればわかるよ。
あぁ勿論、君が寝泊まりするのに十分な空間と快適さは提供できると思うよ。
さっ、早く入ろうか、さっさと夕飯を食べて……色々お話がしたいんだよね。」
「……はぁ、まぁ何かしら事情があるんでしょうね。
ではお言葉に甘えて、お邪魔しま~す。」
そういって屋敷の中へと入る優樹。
お互い内心、何か企んでいるは察している。
それが互いにとって、害のある物なのか……
はたまた利のある物なのか……
片や緊張に顔を強張らせ、片や期待に胸躍らせ……
不穏な空気を纏う二人が今、扉の向こうへと消えて行く。
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