#5 危ない二人の自己紹介
「さて、あまり上質とは言えないけどお茶だよ」
「どう考えても高級としか思えない香りですけど
本当に上質じゃ無いんですか?」
「あ、バレた?」
家に入り、客室へと通された優樹。
マルクスが謙遜しながら紅茶を出すが、
漂ってくる香りから相当な高級品なのがわかる。
「しかし……自分でお茶とか、淹れるんですね」
「生憎、趣味のようなものでね。
まぁ、一応もう一つ大きな原因はあるんだけどね」
そういうマルクスに、優樹は目を細める。
そして、出された紅茶で唇を湿らせ……
「……それが俺をこの家に泊めた理由か?」
先程までとは明らかに違う態度でマルクスに問う。
見た目相応の少年のような口調から、
相手を品定めするような、圧力のある空気へと変わる。
「……あぁ、そうだ」
そしてマルクスも……空気が変わった。
それを見て優樹は、確信したように続ける。
「……やっぱりな、門で会った時と、その後で雰囲気が違うと思ったんだ」
「バレてたか……一応、どういう答えか聞いても?」
「……あんた、二重人格だろ、それもかなり珍しいタイプの」
マルクス……いや、"マルクスの体で喋る誰か"の問いに
そう答える優樹、その答えに何者かも応じる。
「正解だ、『
前例が余りに少ないんで俺はそう呼んでる」
「へぇ、随分と的確な命名だな……
自分がどうなってるのか、正確にわかってるのか」
「あぁ、この症状の特性なのか知らないが……
……僕はこういう風に、自在に切り替えられるよ。」
そう言って、先程のマルクスと同様の空気に戻る。
「なるほどな……所でさっきの方……
若干ガサツな方には別の名前があったりするのか?」
「ご名答!彼の……
……いや、俺の名前はマルクだ、改めてよろしくな」
またもや空気が変わり……マルクが挨拶する。
「こちらこそ……
っとそう言えば俺の方は名乗ってなかったな……
……俺の名前はユウキだ、よろしくな。」
「あぁ、よろしく頼む。
さて、名前はお互い分かった事だし……
次は君達が俺に求める事を聞こうか。」
「あぁ、対価は俺の話を聞いてからそっちが決めてくれ」
「……最初に自分が支払う対価の事を話す奴は嫌いじゃ無いな」
そう言って口元を緩める優樹。
随分と二人の事を気に入ったんだな、と
優樹の背後で透明状態のまま見ているリリスは思う。
「そう言ってもらえると嬉しい。
さて、お願いの件だが……単刀直入に言おう」
そこで言葉を区切り、真面目な顔でこう言った。
「俺をこの街の……"次期領主"にしてくれ」
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