#6 マルクスマルクマルクスマルクマルクスマルクマルk……
「へぇ?俺にそんなお願いをねぇ……
なんで俺にそんな事言うのか聞いても?」
「簡単な話だ、俺はこの魂魄性解離性同一症……
正式名称だと長いから二重魂魄って呼んでんだが、
この症状のお陰で人一倍魂に敏感なんだよ……
自分にも、他人にも、な」
「……なるほどねぇ」
そう納得したように呟く優樹。
そして姿勢を正し、確認と言わんばかりに問いかける。
「つまり……俺の魂を見て、多少無理矢理にでも
こうやって会話できる状況に持ち込みたかったって訳か」
「その通りだ、正直見えた時一瞬理解できなかったぜ?
なんたってあんまりにも"普通すぎた"からよ。」
そう話すマルク。
"普通過ぎる"という言葉は、矛盾している様に思える。
だが優樹はその答えに口角を上げる。
「普通の人は見えた所で全く気にならないレベルなはずなんだがねぇ?」
「あぁ、だろうな、正直そもそも魂が見える奴なんて少ないだろうけど、
お前の異常さに気付けるとしたら、恐らく俺だけだと思うぜ。」
「その根拠は?」
「俺が"研究者だから"って言えばわかるか?」
「よくわかった」
満足気に頷く優樹。
魂が見えるというのは、かなり稀有な才能だ。
一般的に人間が持つ事はほぼ無いと言える。
そしてその中で、"魂を研究"しようとする人間はもっと少ないだろう。
研究と言うのは、簡単に言ってしまえば膨大なデータから
必要な情報を上手く取り出す事だと言える。
そしてその研究の過程で、マルク達は様々な魂のデータを集めた。
そのデータがあるが故に、優樹の魂の異常さに気付いたのだ。
「まぁ、ご存知の通り俺の魂は偽装してあるよ」
「だろうな」
そう、故に普通だった、だが普通過ぎたのだ。
簡単に言えば、Aという魂とBという魂があったとして、
A+BはAでもありBでもある……とはならないという事だ。
1+2は1&2ではなく3であるのと同じ様に、A+Bは新たに別のCになるのだ。
黒と白を混ぜて『これは黒にも白にも見えます』とはならない。
それは何処からどう見ても灰色なのだ。
「さて、まぁ俺に頼んだ理由は分かったよ。
と言う事で……まずはどういう経緯で
そんな依頼をするのか聞かせて貰っても?」
「……まぁそれこそ至極単純な話だ」
そういって苦虫を噛み潰したかのような顔をするマルク。
そして溜息を一つ、顔を引き締めて話し出す。
「単に家督争いだよ……
……もし負けたら俺の命に加えて、この町の暗い未来が確定するな。」
そう憂鬱そうな顔で話しだす。
「俺はこの街の領主の息子だ、ただし、長男じゃない」
「……それだけでめんどくさい臭いがプンプンするな」
「言ってくれるな……俺だってめんどくせぇんだ……」
優樹のあんまりな反応に思わずげんなりしてしまうマルク。
だが話さなくてはならないので溜息をついて続ける。
「俺の家族は父上と今は亡き母上、
上には兄が二人、姉が一人、そして下に妹が一人だ」
「ふむふむ……で、家族の中での敵味方の比率って?」
「確実なのは故人と俺と別人格含めて丁度半々だな」
「……要するに味方が一人しか居ないと」
「……そういう事だ」
……かなり絶望的にしか見えない。
「ところでその味方は?」
「妹だな」
「……何歳?」
「……15歳だ」
「……何が出来るんだ?」
「……俺の精神的支柱になる事だな」
「……いや、うん……凄く重要ではあるな……」
「……分かってもらえて嬉しいよ」
完全に葬式ムードである、絶望的過ぎる。
「因みになんだが……俺が負けた場合当然妹も殺される」
「……家族の情とか無いんだな」
「全くと言っていい程無いな」
頭が痛そうな顔でこめかみを押さえる優樹。
そしてしばらく考えた素振りを見せた後、溜息一つ。
そしてマルクを見て、不敵な笑みを浮かべながらこう言った。
「……わかった、俺に任せろ……
面倒な事は俺が全部どうにかしてやる」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます