第23話 火の鳥 L’Oieau De Feu

バレエ『火の鳥』

L’Oieau De Feu

曲:イーゴリ・ストラヴィンスキー

振付:ミハイル・フォーキン

初演:パリ・オペラ座 一九一〇年


登場人物

イワン王子

火の鳥

王女ツァレーヴナ

魔王カスチェイ


(物語)

 琥珀色の光の中に一本の木が立っています。枝には金色の果実がたわわに実っています。深い森の奥。森の木々は静まり返っていました。


 その時、ほのかなオレンジ色の光に包まれた一羽の鳥が森を横切るように飛んでいきました。


 ちょうどその頃、一人の狩猟者イワン王子が高い壁をよじ登ってやってきます。片方の手に弓を持ち、草木を払いながら用心深くやって来るイワン王子。


 鳥の羽ばたく音とともに火の鳥が金色の果実がなる木の周りを飛び回ります。火の鳥は不死の魔王カスチェイの住む国にある金色の果実を取りに来たのでした。

 イワン王子は弓の狙いを定め火の鳥に向かって射ますが、矢は外れてしまいます。驚いた火の鳥は一旦は逃げるのですが、やがて王子に捕まってしまいます。

 火の鳥は逃がして欲しいと懇願します、イワン王子は一本の羽と交換に火の鳥を逃がしてやることにします。

 火の鳥の羽は魔力を取り除く力があるといわれています。


 そこへ魔法をかけられた十三人の乙女たちが現れます。乙女たちは金色の果実が実る木の周りで戯れ、その中で一際美しい乙女、王女ツァレーヴナは金色の果実を手に取り乙女たちに渡します。乙女たちは果実を手に踊ります。

 その様子を物陰から見ていたイワン王子は王女ツァレーヴナの美しさに恋をしてしまい。乙女たちの前に姿を現します。

 驚く乙女たちでしたが、王女ツァレーヴナは王子に、

「ここは魔王カスチェイが魔法で支配する国であり、私たちは囚われの身。つかまった男たちは皆、石に変されてしまった」

 と話します。

 乙女たちは夜明けと共に魔王カスチェイの宮殿に帰らなければならない。王子にここを立ち去るようにと警告します。

 しかし、王女ツァレーヴナを一目見て、彼女に恋をしてしまった王子はここにとどまり、乙女たちを助けたいと願います。

 王女はイワン王子に立ち去るように告げて、魔王カスチェイの宮殿に帰り宮殿の門を閉じてしまいます。


 一人残ったイワン王子は宮殿の門の前で王女のことが忘れられず、ついに門を開いて魔王カスチェイの宮殿に飛び込みます。

 しかし、宮殿に入ると、たちまちカスチェイの手下たちが飛び出してきて、王子は捕らえられてしまいます。カスチェイの手下の魔物たちはイワン王子を縛りあげ、カスチェイがやって来るのを待ちます。

 そこに乙女たちがやって来ると、更にたくさんのカスチェイの手下が現れます。

 そして、いよいよ魔王カスチェイが現れ、皆を睨みつけます。カスチェイが魔法をかけようとした時、イワン王子は火の鳥からもらった羽のことを思い出します。魔力を取り除く羽といわれる火の鳥の羽を王子は高く振りかざします。

 すると、王子を助けるように火の鳥が現れます。

 火の鳥が軽やかに飛び回ると、カスチェイの手下たちは付き従うように踊らされ、ついには深い眠りに陥ります。


 火の鳥はイワン王子に命じて乙女たちを安全な場所に連れて行くように促します。

 そして、王子に金色の果実が実る木の根元を指し示します。

 王子はそこで箱を見つけます。その中には大きな卵が入っていました。

 王子が卵を手にしていることに気付いた魔王カスチェイは狼狽うろたえます。それはカスチェイの魂が入っている卵でした。

 奪い返そうとするカスチェイですが、王子はその卵を地面に投げつけてしまいます。


 轟音が起こり闇に包まれていた魔王の宮殿は魔法が解け、明るくなり、囚われていた乙女や石にされていた騎士たちは自由の身になり幸せな世界を取り戻しました。


 イワン王子と王女ツァレーヴナは結婚を誓い、皆から盛大に祝福されました。


 気が付くと火の鳥の姿は、もうどこにもありませんでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

バレエの絵本館 snowkk @kkworld1983

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ