がくだん
がくだん
イタチコーポレーション
長い空に浮かぶ暗闇は、白い雲に隠れ消えていく
私の忘却の記憶の中に浮かぶあめ玉は
熱湯のように溶けて消えていく
どこまでも、消しゴムの後のように
残りかすがたまり
私の記憶を、濁していく
空に浮かぶ星は
そんな忘れ去られた
記憶の断片に違いない
私は、まくらに頭を乗っけて
そんな邪悪な妄想を
穴の規律に開いた
天井の白いボードを眺めていた
ギクシャクとした
空を眺めながら
私は、一人、国道を、さまよい歩いていた
辺りは、ぎんぎらと
白い熱光が降り注ぎ
闇という存在を、消失したように真っ白に輝き
陽炎だけが、その世界にるらぎを、遠くの方で手を振るように、揺らいでいる
私は、確実なる足取りを捨て
まるで千鳥足か
鼻歌のような、横幅にふれた
酔っぱらいのような
焦点のない軸可動により
前方へと少しずつであるが移動を繰り返している
一体どの程度信号機をみたのであろうか
車道には、様々な車が、雄叫びを揚げながら
世紀末を、演出している
夜は、ハイビームを照らし
一体何お祭りに出かけるのだろうか
実に陽気なものである
私は、茹だる頭で、思考停止にも似た考えを、徐々に頭上か
はたまた、乾き湿り気のない唇から
ぽろりぽろりと
ウサギの糞のようにこぼしていたことに気づいていないに違いなかった
空は、雲が浮かんでいるが
実にちょうど
太陽光を、避けるように、浮かぶ姿は、メガホンのなかのくちびるに近く
それは、逆に、光量を、一点に増やし
その地獄のようなスポットライトは、
神と悪魔の戦いを、模すのか
陰は、物体の奥底
まるで、石の裏に追い込まれたかのようなしょうせいを呈している
私の周りに、陰はなく
ただ靴の裏に
ひっついたように
それは、ガムのように延び
また足の裏に、ひっついている
下を、見れば、そのような様子が
電車の渡りから見る
地面のように確認できた
前方を確認するのも
いささかおっくうである
私の頭の回転率は
徐々にその電力を弱め
タービンの稼働率は比較的
停電力へと移行しているのが、わかる
なぜか、視界もぼやけている
可動エネルギーは、視界さえも
その電力を要しているというのだろうか
果たして人は、電力によって動かされているのか
いや、それは違うだろう
しかし、そのつなぎとしての部位は、非常に重要に違いない
私のぼんやりと、暗い
まるで黒目が後ろ側を向いているのではないかと思うような
視界の中
ぼんやりと透ける光景は
何とも、暗く
和紙からのぞく陰のようにぼやけている
「あのーすいません」
声は、聴覚から私の内部に進入し
鼓膜を微細に振動させる
「あのー」
二回目になりようやくそれが、私へと
むかってはっしられているのではないだろうかという
気持ちに苛まれる
本当に、私への対応なのだろうか
空耳か幻聴か
はたまた幻覚が、しゃべり出したとも限らない
その確認方法を、頭の中で巡らせて
とりあえず
視覚をよういて
周りを、ぐるりと
目を這わせた
誰もいないと思っていた道に
ラジオがいっこ落ちている
私から見れば、それは良く見るポケットラジオのように、思えたが
しかし、実際問題、それがポケットラジオだと
私は視覚的認知から
それを、記憶をたぐり寄せ
ラジオだと勝手に推定している
もしもこれを進めるのであれば
この黒く長方形状の箱はラジオであり
この声は、ラジオから流れる
放送音声と言うことになるが
そうなると、先ほどの私に問いかけられていたと
信じていた声は
別に私に対する声ではなく
ラジオが不特定多数に流す
音だという事になる
つまり私は、
誰か特定の物ではない声に対して
「はい」と返事をしたも同然の行為を
辺りを見回すという動作で示したわけだ
幸い周りに人のすがたはなく
足下に15 5 3センチほどの
黒い物体が
寝ころぶように転がるだけである
しかし、もしコレが、私のまだ知らない
未知の通話端末だとすれば、考えは大きくずれ変わることは必然の事実である
これが、個人所有か、はたまた
公衆電話のように、多人数に向けられて作られたものか
私はそれを、判別するために
今、それを決め付けから
何らかの方法で、ひっくり返すなりして
それを確認する必要性が、出てきた
ただ、そのまま素通りしても
何ら問題ではないのもまた画然たる事実なのであるが
私は、近くにあった棒を持ち
それを、つつき うまいこと転がすと
赤いランプが小さく点灯している以外に
その体の半分を、鉄なのだろうか
網状の物で覆い
その下には、半分以上の大きさで
スピーカーで音を、出している
と考えられた
そのほかに、ボタンというか
白いスイッチが一つだけ
赤い丸がかかれた方に押されている以外
ストラップさえ見あたらない黒い箱を観察している
試しに、裏面を、見てみるが
不思議なことに、接着面というか
途切れが無く
それはまるで、樹脂か何かで、凹凸を埋められたように
もしくは、ペットボトルの炭酸のはいる容器のように
継ぎ目が発見できなかった
ふつう電池交換用に
そこだけはずれるか
もしくは、ねじで、箱が開いてもおかしくない
もしかすると横かとも思えたが
つるりと面どりされたように角が無く
ボリュームの操作するねじも同じように発見できなかった
「なんだこれ」
私は、声を出そうと口を開いた
「あなた、そこに、誰かいるんですか」
声が聞こえた
ラジオドラマだろうか
だとしたら結構 長い間、無音が続いたものだ
もしくは、電波が悪いか
だとしたらノイズが余り聞こえないのも不自然に感じる
「誰か、そこにいるんですか
声が聞こえましたよ」
私はまた、自意識により
それが不特定多数に聞こえるように
発信されている
ラジオ局の何者かによる
音声発信にもかかわらず
炎天下、頭のぼけた人間が、
歩道にしゃがみ
黒いケースに
いやラジオのような
スピーカーのついた
いや、スピーカーが内蔵された何かに
話しかけている人間に思えないだろうか
辺りを見渡すが
炎天下にも関わらず
車でクーラーをかける物はおろか
窓を開けている人間一人確認できない
ただ、蝉も鳴かない暑い中を
何かが、なっている
それは、地響きだろうか
無音とは・・・・
私は、黒い箱をみた
赤い点灯が、明るい中
いくら上からのぞいているからと言って
点灯しているのかわからないが
光っているように
私は見えていた
「そこにいないんですか
声が聞こえましたよ
誰か、そこにいるんでしょ
助けてください」
なにやら、よくわからないラジオドラマが始まったらしいと
私は、多少ふるえる振動が
スピーカーから、手に伝わっていた
黒い物体は
プラスティクのようにも感じられたが
なぜか、ひんやりと炎天下の下に
放り出されていたにも関わらず冷たい外装をしていた
もしかしたら内部から冷たくなっているのかも知れないが
氷のような物が、入ってはいないのか
外部との温度差で空気が冷やされて水滴になるような物が
外装には見受けられた無い
気のせいだろうか
こんな黒い物が、さして熱く無いどころか
冷たいと感じるのは
もしかしたら、私が来る少し前に
あそこに放置されたのかも知れない
「あの私の名前は・・・・
あなたに助けが必要なんです」
今なんと言ったのか聞き取れない部位があった
それは、名前の部分であり
それはやけに不鮮明に聞こえ
私は、ついに、声を発していた
「あの、なんていったんですか」
私の声に対して、それがしゃべるかどうか私は実に不明であったが、しかし
相手の声は、軽快に
「いえ、私は、あなたに、助けてほしいのです
謝礼もお支払いします
警察を呼んでいただけるだけで」
私は自分が聞きたい部位ではない物を二度聞いたが
それでも、それ以外のことは聞けた
しかし、名前を聞いてはいない
「あの、すいません、あなたの名前は、何ですか」
私は、どこにしゃべっていいのかもわからないし
第一、この黒い物体のどこから、音声が相手に伝わっているのだろうか
「ああ・・・です・・・・
聞こえましたか聞き取れていますか
私は今・・・からあなたに音声を、・・・・を使い発信しています
・・・・にわたしがいるとお伝えくだされば大丈夫です」
それは誘拐されたのかはわからないが
やけに悠長な声だった
いたずらだろうか
大体、なにが声の向こうで起こって私に助けを求めなければいけない
めんどくさい状況にあるのだろうか
「すいません、声が、聞き取りづらく
あなたの名前と場所が、何かに邪魔されたように
聞き取れないのですが
あなたは、今、どうなっているんですか
この黒い箱は何なのでしょうか」
私の問いは、長かったのかどうかは、わからない
しかし、相手へとつながったようで
返答があり
スピーカーが、本体を揺らす
「私は、生きています
あなたに、私を、助けてほしいんです
私は、あなたに、助けを、求めています
私の声で、聞き取れないのは
私を邪魔する勢力がいるせいでしょう
私は今、あなたの元へ、声を届けられているのは
公衆電話が、あるからです
その黒いのは、携帯電話ではありません
助けてください
私は、すぐ近くにいます
あなたのすぐそばに
早く警察に」
なにを言っているのかさっぱりである
大体、このような内容を、警察に話そうものなら
おこられるか
精神病院に連行でもされるんじゃ無かろうか
私は、ラジオではなく携帯と言ったそれを、また道の脇に置くと
歩き出すことを考え始めた
そう言えば、靴紐が崩れている
そばで選挙カーが騒音をまき散らし
無意味な排気ガスを、吐き出して通り過ぎた
ネットの時代に
一体どの程度の職人気質なのだろうか
それも明治政府のせいなきがしてならないのである
「ちょっと、置かないでください
信じていないのはわかりますが
私は、助けを要しています」
助けとはなにを助ければいいのかの要点がはっきりしていれば、助けやすいが
それがなにを要しているのか
さっぱりな私には、
子供が夏休みの自由研究で作った
笑い袋並に
意味不明な物体でしかないのだ
もしかしたら、近くの林で、
防虫スプレーを、頭からかぶった小学生が
父親から借りた双眼鏡で
こちらをのぞいているとも限らないのだ
私は、ようやく立ち上がる決意を固め
また一歩灼熱の道路へと
その歩を進めようと思案していると
スピーカーからあわただしく
声が聞こえる
一度は道に落ちているよくわからない物を
葉っぱ越しとは言え
手に持った自分いがいうのもなんだが
怪しい
怪しすぎる
これは、フィクションをもした実験に違いない
いや、小学生にこれほどまで似ての込んだ
ドッキリを仕掛けられるとも限らない
これは、大学生
いや、社会人のいたづらに違いない
電子工学を、聞きかじった
一見普通のめがねをかけた
無口な奴に違いない
近くに、盗聴器と監視カメラが仕掛けられていて
それを悪用して
ネットで販売して
金と同時に、自尊心をほくそ笑みながら
満足させ
あぜけり笑っているに違いない
「どうしましたか」
私が道にしゃがみ込んでいたとき
頭上に人の気配を感じた
一瞬またラジオからの迷惑な音声かとも思ったが
しかし、それはどうもしたではなく上からであり
その青い制服には何となく見覚えがあった
花火を見に自転車をこいで夜中の山道を走っていたときに
職質されたのだ
それは忘れもしない八月の終わりの第三日曜日
「大丈夫ですか、具合でも」
相手は、二人であり
私は「何でもない」と言おうとしたが
しかし、地面に置かれた黒い箱
これを、相手に渡してみればどうだろうか
これで私はこの状況から解放されるし
相手ももしも万が一に億が一にも困っていたら
せんぶんの一でも
それは助けになるだろうし
もしこれが犯罪かいたずらだったら
それなりの報いを受ければいいだけのことなのかも知れない
私は、道に落ちていた
黒い箱を、指だし言う
「このラジオ道に落ちていました
落とし物です」
警官は顔を見合わせ
困ったような顔をしたが
しかし
「ああ、わかりました」
と私に近づき
その箱を手に持ち
「一応、情報を、お聞きします」
と言って、シャチのような外見のパトカーに乗せられた
無意味に利いたクーラーは冷たく
外気温との違いを、見せつけられる
「どうして、見つけたんですか」
警官の一人は聞く
一人は、中年で肌が黒く太り
もう一人は、それよりかは、もしくは同等で
痩せ形である
聞いてきた男は痩せ形の方であった
「いえ、道に落ちていたので」
道にですか
男はそう言った
「ここに、住所年齢お名前を」
私は、板の上に置かれた紙に、細いボールペンで
一通り文字を書く
「逃げなければなりません
書いてはいけません」
前の席で声がした
それは多分 黒い箱からであり
運転席で箱を持っていた男が
驚いたような素振りをした
「なんだこれは」
間を置かず黒い箱が、しゃべる
「早く逃げなければいけません
ここにいては、あなたは殺されますよ」
太った男は、前から、私をみた
その目線が、私があったとき
私は、書いていた板から紙を、取ると
そのまま外に飛び出そうとしたが
開かない
「大丈夫ですよ、終わりましたから」
なにが大丈夫なのか知らないが
大丈夫ではなさそうだ
私は、無我夢中で、足により
窓ガラスを蹴ると
一瞬ひびが入り
少しへこむ
私は、後ろで、何か声がするのもお構いなしに
そのままけ飛ばすと
一部が割れて
全体的にひびが入る
「だめですよなにをやっているんですか」
何か、マニュアル以外のことに
対応に困ったような声が聞こえたが
そのまま、ガラスに、飛びつくように
窓をけ飛ばすと
破片と共に
下に落ちる
「あーあ」
反対側から
扉が開く音がした
「逃げなさい」
警官ではないような声が聞こえる
きっと黒い箱だろう
私は、どうすることも出来ず
そのまま国道の走る堤防から下に降りる
「あー職務質問中に容疑者が逃走
至急応援願います 場所は」
背後で草が揺れる音がする
誰かが追ってきたのだろう
私は、そのままなりふり構わず
走り続けた
すぐに、川沿いとは逆であり
民家の密集地に入り
私はそのまま一件の庭に入り
そのまま、にわを何件も這いずり回る
後ろで、どこだと言うような声が聞こえたが
そのまま、村中の路地を、走り
家までダッシュを繰り返す
何だったんだ
いや、なにをやっているのだろうか
私は、自分のしでかしたことに
無意味さを感じながら
あの黒い箱の言っていたことが
やはりドッキリだった場合
とんでもないことを、そそのかされたことになる
あたしは、じんわりとくらい室内で
考える
これからどうするか
風呂に入る
屋根裏に隠れる
出頭する
私は考えたあげく
テレビをつけてみたが
何かめぼしい物はなく
机の上のラジオをつけて見るも
相変わらず
ノイズ混じりの音声は
AMFM通して
どうも、確かな内容もない
試しに、昔使っていた
無線機を引っ張り出すと
チャンネルを探ってみたが
めぼしい物は、受信できない
あの箱は、車の中にあった
助けてと言っていたが
なにから助けてほしかったのか
家の窓から
下を見るが
人影はない
私は、静かに、水道の蛇口をひねり
それを口に流しこむと
そのまま財布を持ち
車庫に回った
そのまま入り口を開け
そして、車に乗り込む
エンジンをかけると
満タンなだけ有り
エンジンは動いた
車をゆっくり移動させると
車庫が開き
でおわると
逆に車庫が閉じていた
移動を続けるが
あの男たちのすがたはない
ただ暑さを感じられる空気が、視界に広がるだけである
そのまま、あの歩いていた場所とは反対側に
向かい
だいぶたってかっら
国道にでると
そのまま人気のない道を走る
目的地は、公衆電話であり
ここら辺には、私の知る限り一個だけ
道沿いにあった気がする
その道に行くために
車を走らせる
なにを言うのだろうか
私の脳内に
そんな疑問が投げかけられては消え失せる
「私は困っています」
本当だったのだろうか
それにしては曖昧すぎる
私は、誰もいないような道をしばらく走らせると
前方に、四角い箱が、内部を透明として
置かれている
私は近くに車を止め
軽い避車場となっている
場所から降り
緑の物体の置かれている
透明の内部に、入る
今は無きタウンページが、三冊おかれ
頭上の看板には、十円玉か何かでひっかいたように
呪いの言葉が、羅列している
小銭を財布から出して
その中から十円玉と百円を取り出すと
まずじゅうえんを
銀色の入れ口に落とした
ボタンを、二回押し
最後の一文字をおそうとしたとき
妙な物が、目に付いた
「いやはや、大丈夫ですか」
私は、その声に、あの警官かと思い
とっさに振り返ると
青い服装の太った方の男が
こちらを見ている
「外にでてはだめだ」
別の声が、足下でなる
見るとそこには、
あの黒い箱が転がっている
夢でも見ているというのだろうか
「何だ、何なんだ
なにが目的なんだおまえ」
黒い箱から音がする
「助けが必要です
あなたが今目の前にしている物は
悪夢のような制服を着た男です
あなたは、逃げる必要性が、非常に強い
逃げなければいけない」
なにからにげろというのか
私のつぶやきに対して
外の男が、こちらにはいってこようとするが
私はとっさに、扉に飛びつくと
押しつける
するとそれは、扉を押そうとしても、動くことなく
困惑したように
取っ手を握っている
「俺はどうすればいいんだ」
私は、下に向かっていく
「出てくればいいのです」と警官が外で言う
「でてはいけません、あなたは、ここで、奴らが、何処かに行くまで待たなければいけないのです」
そんな無茶な話があるだろうか
外にはなぜか警官が一人
もう一人はどこにいるのだろうか
道の近くに白黒のシャチのようなパンダのような
車が止まっている
私は、考える
そして、もう一度三回ボタンを押した
緑の受話器を、持ち上げると
呼び出しの音声がなる
目の前の木々に囲まれた道の途中
公衆電話の真ん前で
なにやら警官が、ズボンの辺りから、何かを取り出している
「はい、こちら丸岡警察署です」
私は、前を見ながら言う
「実は、目の前で、警官が、銃をこちらに向けているのですが
どうしたらいいでしょうか」
相手の声は、すぐに聞こえた
「大丈夫ですか、落ち着いてください
場所はわかりますか」
私は緑の電話にかかれた番号を言う
至急向かいます 電話は、そのままでお願いします」
私は、構えている警官をみる
どうすればいいのか
しゃがむ
逃げる
どうする
これは、彼奴もグルなのだろうか
「大丈夫ですか」
足下で声がする
「おまえはなにが目的なんだ」
なにが目的って
下で声がする
「おまえを、殺すために呼び出したに決まっているだろう」
前方で発砲音のような物が聞こえる
私の前方に穴が見えた
あの男は何だったのだろうか
目の前で黒い箱が揺れている
「助けてください」
私は、公衆電話から、相手に話しかける
相手は、戸惑ったように、声をかけてくる
それに対して私は、相手に、助けてくれるように、旨を残し
しゃべり続ける
いつも同じ警官が、
いつも同じように彼奴に話しかける
そして決まったことを言えば
決まったように、物事は収縮する
似たような、服に
似たような格好になれば、相手は違いに気づけていない
公衆電話の番号など
張り替えてしまえば、見当もつかない
逆探知しようにも、
そのときには、私は、この場所に存在していない
それまで、私は黒い箱の住人となり
同じ事を繰り返せばすべては丸く収まる
それこそ、えんかんのようにぐーるぐると
それは、たゆみ無く回り続ける
私は、軽い工作により
道ばたで落ちていた
携帯を拾ったことから
このいたずらを思いついていた
携帯のなからシムカードを取り出し
それを、大きい墨汁の容器に取り付けた
スピーカーを介するチップに半田付けした差し込み口に入れ
後は、ハンカチに巻いた保冷剤を内部に入れた
炎天下の中、何度おいても、それは、バグったようにこわれ
仕方なく、保冷剤を入れることで、その故障は、収まったようである
後は、これを、設置させる
さぞ警察は、毎回驚くことだろう
黒い箱はしゃべるし
窓ガラスを割って飛び出すし
実に聞いている分には、楽しい一劇であるであるが
この問題点は、私が実際に、奴を殺さなければいけない点にある
奴を殺すまで、様々な試行錯誤を繰り返し
中には、毒殺を考えたこともあったが
もっともイージーな方法として
やはり、戦国時代といえども
重用された
この拳銃と言う物は、比較的安全である
今でこそ、一発でしとめられる割合が、ほぼ九割であるが
しかし、以前は、私まで、死にかけたことは、二度三度ではない
ただ、そのほとんどが、逃亡を、はかったので、
死闘と言うことが起きることは、ほとんどない
今現在において
人はルールに死ぬが
野生の獣に殺されることは実に少ないことだろう
それ以外なら
自然災害などもあるだろうが
それは対応できなかった
それだけであり
個人的対応の範囲を少しだけ逸脱している
現に、車でつっこんだこともあったが
あれは、実に難しい話だ
しかしながら、なぜ奴を、毎回殺すのかにおいて
それについて
私は、幾分手短にはなす必要性がある
私は、彼奴自身であり
ではなぜ、殺さなければいけないかにおいて
彼奴を殺さなかった場合
私という存在が、消滅することになると言うことに帰結する
まず持って、私が奴を殺すに至る理由において
彼奴の存在を、消さなかった場合
この世界そのものが、消滅するとも言える
それは大きな世界ではなく
彼奴と私の二人の小さな世界だ
世間はそれを、失踪と呼ぶのだろうが
私は、それを、ゆるしてはい無い
あれの存在に気がついたとき
私は、この世の中に存在していないものだとも
気がついた
しかし、私がこの世に存在していないものだとしても
では、この世に存在していた
あの存在は、そのまま次の日に向かっても何ら問題がないのかと言えば
それはそれで大問題なのだ
私は彼奴自身であるが
彼奴自身も私自身と言っても何らおかしくはない
ただ、一つ問題があるとすれば
この二つの存在は、もうしんでいなければいけないと言う一点にある
それは、増殖するかのようではない
本来、そこには存在してはいけないもの
この世の断りを反し
生命活動を妨げる
エラー
過去に存在していた物が
現在にも存在している
それは落ち武者が見えるなどと言うものではない
昨日 二日 前の死んで灰になった人間が
生命活動をしていたら
それは明らかなエラーとして
排除しなければいけない
排除しなければ
それは、その世界自体が
大きな間違いとして削除される可能性がある
おかしな事が、正常と認識
もしくは、認識されてしまった時点で
それは、現実として受け入れられ
本来存在していた数式をすべて入れ替えてしまう
私は一回
今回のような行為を行わず
その成り行きを、確認しようと
いや、実際問題は、なにもわからず
ただ無知に
それを、経過させていたと言った方が遙かに正しい
供述となるだろう
そのとき、私は、以前死んだ
祖父母が、草むしりしているのをみた
問題点は、二つある
それを認識したのは、私だけではなく
私以外も認識しており
なおかつ
それは、認識問題だけではなく
実体として、そして現実として
それは増えていたという事だ
私は、すぐさま、さながらガンを、殺すように
自分を、殺してみたが
それはなぜか、空気を通り抜けるように
殺意は、実行を、阻止され
私は結局彼奴を殺すことで、その意味を理解した
私は、家に帰ると
座敷の誰もいない仏壇の前に
私の名前と
天井付近に
私がさしてみたくもない
写真が、飾られている
その無駄に青いバックボーンの背景
からめをそらした
自分の皮膚を触るが
確実にそこには、血が通っているようで
脈を取ることも出来る
テレビをつければ、確実にボタンにさわることが出来る
外は、青く
私は、実になにも考える気になれなかった
手には、黒い箱が握られている
いつものように、いつもの時間だ
またいつ目覚めるかもわからず
私は、拳銃を、握った
さあ、そろそろ時間なのだ
外は、わずかに暗く形を出し始めている
今頃奴の職場は、いつも通り帰宅を開始しているに違いない
誰も現実に気づけていない
誰も対応する前を覚えては居ない
ただ、消え行く意識を、追いながら
私が、拳銃を撃っても
その存在は、きっと消えることだろう
それは、無意味な存在のように
頭に突きつけた
拳銃は、私が、指を入れ
引き金を引くと
私の存在を、消す
これの何に意味があるのだろうか
乾いた火花の音と共に
私は、足下に寝転がっている
私の顔を見ている
このガン細胞が
私は、靴下の履いた足を
相手の腹に軽く蹴っとばした
蝉の声が聞こえない
緑色の受話器を上げて
私は、いつも通りの時間
いつものように
足音の相手に声をかける
この行動も、そろそろ飽きてきた
いつものように
落ちている携帯を拾いに行くのも
だるく飽きてきたし
なおかつ
それを工作するのも無意味に感じ始めている
また、同じように、言わなければいけないと言うのも
難解でやっかいだ
何度繰り返すというのだろう
「助けてください」
こののりを繰り返す
実に無意味なことを考えているのが、
返答はないが手に取るようにわかる
何だったら自分に向かってはなしているのではないかとさえ思えてきてしまう
彼奴が、返答する
もうそろそろ、私を置いて、何処かへと行こうとする頃だろう
私は、受話器に話す
いつもの通り
いつものように
毎回毎日毎秒毎々
私は、警察の車両から逃げたのを、確認すると
通りの向こうに、進む
近くの別荘に泊めてある
車を拝借して
その中から携帯をかける
彼奴が車で時間は、ある
おびえたような時間
私は、このガソリンの残り少ない車の中で
エアコンをつけながら
ラジオを聴く
万馬券を買っても当たるだろうが
あいにくその日に競馬もなければ
そこに行くまでが、退屈で面倒だ
木々の日陰の中で
エアコンの利いた車内
座席を倒して
目をつむる
そろそろ時間だというのも
考えたくなくても
体が覚えている
この体は、毎回同じ物なのだろうか
私は、この呪縛から一体いつのがれられるのか
あの阿呆は、なぜこの記憶を、持たず
私だけが持っているのか
それもまた
拳銃で、吹っ飛ばされれば、意味も忘れるに違いない
血のように赤い紅茶
イタチコーポレーション
コケシ イタチ @zzed9
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