スミナガシキダン

スミナガシキダン


ながれは夜の闇と同化して

それはまるで、墨

をぶちまけたような

漆黒の暗闇と化していた

私は、その長い長い川の中で

どこまでも続くような視界を遮り

真っ赤な点が火を放ち

赤白く川の中を

和紙を、燃やしながら

沈んでいく様を観察していた


午後六時という時間帯は、コンビニのおにぎりが、破棄される三時間前となっている

その時間帯に、いっておにぎりを買うことはないし

第一

炊飯器でお米をたいた方が、幾分安上がりである

では何故コンビニの六時のおにぎりの情報を、無意味に提示したかと言えば、それは単純明快に

おにぎりではなく

別の品目の安売りが、黄色い半額シールと共に

同じ時間帯に張り出されることが、

この夜も更け始めた時間に、キンキラに、青白い店内

私が存在している唯一の理由に他なら

無いのである

コンビニの見取り図は

窓側に、ずらりとマンガ

雑誌類が並べられ

その奥には、トイレと洗面台

それをでた直ぐ右には

冷蔵庫が、壁に埋め込まれており

その中には、ペットボトル

缶類がこれでもかと

図書室に本棚並に

いや、前後に何個も並べられているのだから

それ以上の状態を示していることは丸わかりである

その得も知れない

消えては消える商品の中には、リーズナブルな

独自の商品が存在していることも

もちろん忘れてはならない決定的な事実であり

その冷蔵庫の隅には、打って変わって

冷蔵ではない冷凍のガラスの窓を同じくした

区画が存在しており

その中には、ロックと書かれた

袋詰めの氷

そのほか、なべやきうどんから

冷凍うどんラーメンエクセトラ

スーパーの冷凍食材売場のような

品ぞろえを

そのさんぶんの一以下に

縮小した形を取り

存在している

そしてそれをまだ見誤ってはいけないのは

もちろんだが

さて、そのまま降下すると

そこには、電池や日常の文房具 服を有した

雑貨類が並べられ

反対側には、玩具を含む駄菓子などが、陳列しており

まるで、駄菓子屋を、飲み込んだ後のように

その系譜を残している

その反対側には

カップめんも並べられ

さながら、またしてもスーパーと告示している

箇所を見ることが出来る

その山脈を越えれば

一段低くなったスペースに

本棚のような

直立したドラム式の冷凍施設とは、一線を凌駕し

さながら、金魚すくいの屋台のような

冷凍庫が、魔境が、ぽっかりと口を開けたように

アイス類を飲み込んで

今か今かと待ちわびている

私は、もちろんそれさえも、素通りを余儀なくされ

そのまま、コンビニの最奥

バックヤードともスタッフルームとも呼べる

暗黒魔境のドアがある入口からもっとも離れたドンずまり

そこに陳列された

おにぎり弁当お総菜

スーパーとの違いは

お総菜類は、パックに入れられたものではなく

密閉された駄菓子のような袋に入り

今か今かとこちらも様子をうかがっている点に大きく割かれる

その場しょから目を横に移動させれば

そこには、さらなるドリンク魔界

ただでさえ

レジ横にホット

トイレ横には、大量のナイアガラか貯水タンクのように

物資をため込む冷蔵庫が三面も用意されているというにもかかわらず

最横にも、牛乳パック型の大きいのと小さいの

さらには、カップにストローを入れる

何か高いのまで存在しており

その泥沼かと言ったら

流砂の方が、現実的には、抜け出せないだろう

どちらにしても、

その奥には、地酒やら、ウイスキーやら

オーソドックスな酒類が、常温で保管された場所もあり

全く人間はいかに飲み物に支配されているかが

よく分かる縮図であり

さらには、入り口側

広告などがひら積みされているスペースには

コーヒーなどを、自分で入れる場所まであるのだから

頭が上がらず

私は一生地面を見ながら

ナメクジ以上に

みじめな姿へと変貌する事間違いなしである

どちらにしても、私の目当ては

店員のいるレジ奥のたばこでもいつ使うか擬門な

高級クッキーのカンカンやフィギュアのくじ引きの類ではない

私が求めるのは、お総菜

その一点

この店は、チェーン店ではないことにより

作りたての総菜が、存在しており

なおかつ

毎朝作られたそれは

時間と共に、数を減らすが

六時

その時間を皮切りに

黄色い黄金の錬金術

その札により

値段が、一気に半分へと縮小される

その時間の魔術とでも言うべきか

それとも、劣化の脅威とでも言うべきか

諸行無常の中

私は、十五分前入りし

コンビニのよくクーラー利いた

店内に入店を果たした

よく曇った

とある六月の午後のことである


家を出るとき

私は軽い運度を始めた

それは、ほんの八百メートルほど離れた

コンビニに向かうための運動であり

一応 アキレス腱を伸ばし

足首をぐりぐりと回し

首も回しつつ

体を上下にそらしたりもした

多少暗くなり

徐々に日中の

空気が霧散する空気が消え

徐々に湿った暗さが

日暮れ時の時間と共に

辺りを沈み込ませている

私は、運動靴を縛ると

いえに、行ってきますと

挨拶をすませ

アスファルトとコンクリートが点在している道に

足を一歩踏み出していた

国道を走る

歩道の横の車両は、

この時間帯になれば、

ライトをつける車とつけない車が、半々ほどである

さらには、ライトを点灯している中でも

一応つけてます程度の点灯も

ライトをつける派の中の三割を感覚的に有しているように感じられた

徐々にではあるが、薄暗い道は、

ハイライトという

目に対する目くらましか閃光弾のような

暴力的なまでの光力により

それは、レーイザーポインター

で、目を当てられたように

何も見えなくなる瞬間があり

とても自転車で、走る気がしない

私は、コンビニまで向かうさなか

その肌寒さを内包している気温の変化を、感じつつ

そのままコンビニへと歩みを進める

途中には、自動販売機に、虫が近寄り

こわれているというのに

缶ジュースやペットボトルが表示している

それを素通りすると

自動車の小さなパーキングエリアがあり

と言ってもトイレ以外には

前に、きしたように、自動販売機というなの

おあしすがあるだけある

私は、パーカーの中の財布を、確認しながら

それもそのまま素通りし

目的地となる

コンビニの明るい外灯へと向かう

コンビニの駐車場は

三十台は止まれるほどに広く

この広さは、前の駐車場以外に

小学校と道の駅以外には、存在しないだろう

もちろん小学校や

畑や田圃と言えば

そうだが

少なくとも三キロ圏内に

そのような施設を私は、まだ知らないでいる

そのまま、駐車場にはいると

数台の圏外のバックプレートが、目に入り

そのほかは、軽トラや

何かの帰りのバンのような車が目立つ

そのまま店内にはいることになると言うわけだ

コンビニの横には、コインランドリーが存在しており

こんクソ田舎には、めずらしく

屋外の施設にマンガがおいてある

マンガ喫茶もないこの辺きょうの地において

コレは異例の事実である

他には、市立図書館に

ごくまじめな

火の鳥や

古典と言うべき

得も知れない

何かが鎮座している程度でほこりをかぶっていないのが驚くべき事実であろう

私は、軽快な電子音と共に

入店すると

そこには、冷気とも言える

エアコン独特の湿度の低い

湿度を、自由に扱った冷風が、室内を、操っていた

私はそのままレジの列には、向かわず

本や雑誌の置かれた

一番近くの

チラシの台の横の

オカルト 君は今夜見ることになる

UMA三百六十一種類と言う

安い紙に分厚い小型の本を、抜き出すと

目を走らす

「カルッパ」

人を食べると噂の

長野県在住のUMA

その存在は、紀元前よりもささやかれたいたらしく

丸城のピラミッドの中にかかれた

石の館の壁面には

その存在が、記されているのは、あまりにも有名であり、なおかつ

近年、その地中内の情報を、検査したところ

土の中から人間とおもしき

DNAが、至る所に、大量に発見されたことから

それが何らかの儀式

もしくは、墓地に、用いられていたのではと考えられているが

しかし、壁の壁画のように

人間を食べていた場合

この場所は、狩り場のような、場所か

住居であったとも考えられるが

なにぶん

古代日本には文字が存在して居らず

それを証明することは、非常に難しい

しかし、今尚、語り継がれている

このUMAの存在が

未だに、長野の山脈にいたとしても

何ら不思議ではない

なぜなら、北から南にまで横断する

長い地形

日本の中心と言っても過言ではなく

その囲まれた

幅のある地域差の山岳の中に

ヒトクい動物カルッパが、どこに潜んでいても、

何らおかしいことなど、存在しようもない

なぜなら、やはり、長野は長いのだから」

何という馬鹿なことを言っているのだろうか

それに、最後の一文が、気にくわない

何が、長野は長いだだ

そんなこと言ったら

北海道は、でっかいどうだし

滋賀県には穴があいているし

東京は、小さいし・・・

私は、ドリンクコーナーの上の

時計を、確認する

丸い時計の中の針は

後五分ほどで

コンビニのお総菜売場に

店員が、現れる時間帯だ

私は、ふと思案しながら考える

この時間帯に、わざわざコンビニに来る人間は、少ない

なぜなら、コンビニという

便利さ優先した

たしょうたかい販売方法を、有する商法よりも

スーパーを主婦は、ねらい

それは、まるで、

服のバーゲンセールを開催した

デパートのように

血肉飛び散る

まるで、関脇の戦いのような

血みどろの合戦は

川中島の戦いのように

それは長く

そして勝敗は、長く決着しない

広い駐車場に比例するように

田舎のスーパーとは

ひとが自然と集約しやすい

それはまるで、業火の中に飲まれる蛾のように

私は、それを、格安集中ゲリラ豪雨と表してもいいが

私の潜伏する場所は

コンビニであり

この小さな空間

そして、お総菜は、決して品数が多いわけではない

また、学校が近くにたいため

子供や学生の餌食に巻き込まれることもない

ここは、場所から、そこまで立地がいい方ではないがしかし

国道に面しているので

さして、人通りが少ないわけでもない

ただ、日常品をかいに来る人間は

年に一二回

電池を回にくるときなのでは無かろうかと推測するが

そんな人間を、詳しく見たことはないが

私は未だかつて、目撃してはいない

私はそんなつまらないことを、

脳内信号を使い

つらつらと考えているうちに

二分経過した

店員の動きはない

と言っても、

レジをうっている

若者ではない

ここを経営している

老夫婦がおり

その旦那さんが

バックヤードから

気軽という風に現れ

シールを貼って引っ込んでいく

それはまるで、

スーパーのような、効率を重視した物ではなく

近所の老人が、物思いに耽りながら

缶ジュースを、飲むがごとく

悠々と不明りょをがしている

私は、時計の秒針を、聞こえないにも関わらず

心音と重ねながら

ページをめくる

ウサピョン

そんな文字が見えた気がしたが

私は、その新聞紙に近いような

かみしつの本を閉じると

そのまま、見向きもあまりしない

日常雑貨の棚のノリスティクを、横目に

棚の編み目から見える

陳列した商品の物陰から

のれんで仕切られた

バックヤードの暗闇を見る

店内に、今店員以外に、私以外いない

BGMでは、何故かしじゃくが、幽霊の辻を、やっている

FM長野だろうか

最近趣味が良くなったと錯覚しそうである

私は、徐々に、商品の棚を進み

そのままカップラーメンに分け入る

「激辛猛攻」

その透明のフィルターに封印された

真っ赤なパッケージの中には、星三と分かるような

黄色いえが三つかかれており

その下には、過去にいぬが三匹死ぬほど辛いと言っていました

と言う、恐ろしげな、文句が、白地に黒い枠で印刷されている

私は、その何とも、絵にもいわれないまま

その視界を、前方に固定し

のれんを見る

まだ動きはない

黒い闇は動きを止めたように動かず

ブラックホールでも立ち寄ったかのように

その光の引力は、吸い込まれたかのように、電灯の明かりが、差して行っていないように見えた

動きは目視出来ずにいた

私は、ゆっくりと

ドリンクコーナーのメッカにいる

紙やプラスチックのコップ型ではない

量産された

その練度は、積み重なった量からも量り知れる

私は、新発売されたのであろう

プラスチックの中の

魔術のような文言がかかれた

虹色の体色の液体の残量を見ながらも

その意識は、暖簾に・・・

「動いた」

それは風ではない

明らかなに、布製の暖簾が、はためく旗のように

ゆっくりと、わずかに動いたのだ

私の視線は、それを察しされないよ

氷の違いが分からない

二つの袋に映る

「氷山ロック」と「藤ロック」

何がどう違うのか

それは製造方法に圧倒的な

明らかに、切り餅とは、一線を画すような

そんな製造方法が、存在するのか

それともただ、天然水を、凍らせただけなのか

そうだとしたら

氷山を、採取するとは実に大変な作業であり

とても千円以下で手にはいるとは思えない

いや、現代社会

金やダイヤモンドまでも作りかねないご時世だ

氷山を・・・

いや、氷山のあるところで、水を凍らせれば

それは氷山と言っても

いやいやいやいや、確か、氷山とは、何万年も前の

空気がおし固められて、それが、飲み物の中で

はじけるという風情を・・・

それを確かめるすべはあるのか

ただの空気が混入しているだけではないか

いやいや、だいたい

それこそ、ダイヤモンドを作るよりも

低圧力で、氷を、制作してしまえば

出来るのでは無かろうか

ロマンを、疑うのは、実に、くりくりしているが

しかし、夢につけ込む弱者を、鑑みるに

趣味者とは世知辛く

そして世間とは、無知蒙昧である

それ故に、誰でも出来るルールは、必須なのだろうか

特に、人間づきあいが壊滅している現代において

感情という不形形態という物は

受け継がれた伝統と同様に

こわれやすく失いやすい物なのかも知れない

それは、自然の動植物

いや、土や川 石 山

すべてにおいてそうだ

法律で、許容しているからと言って


私は、無言で、藤ロックの由来の考えを、中断して

そのまま、老人の後ろ姿を、確認した後に

お総菜売場

それは、猫の額が、十個ほど入りそうな

本当に、小さな戸棚程度の範囲

そこのメンチコロッケを

私は、何故かその眼前に目撃できずにいた

三百日は、その姿を見ていた

油で、しみた、茶色い紙

その上には、何とも形容しがたい文字と

その中心に居座るような絵

それはさておいても

私は、端から端まで、

その目線を、揺るがす

まさか、ウサピュンだがウサピョンだか

いや、カルッパが、とっていった

もしくは、買ったとも考えられない

買うことは、考えられない

なぜなら、子供の頃から、学校や家で

カルッパは、人を食う

なおかつ、奴は、対価を払わない

普通何かしらの生け贄なら生け贄の何かをくれたりする物だが

やつは

そう、カルッパは、対価を支払わない

現代的に言えばUMAなのだ

私は、仕方なく隣の棚もちら見したが

やけに高い

六個入りのパックの卵が

十個陳列している以外に

辛子の袋が

乱雑に、ビニール袋に入っている

やはり無い

おにぎりの棚には

鮭 野沢菜 紅ショウガが、

五十円と証されているが

存在している

そのほかには、どういう組み合わせか不明な

弁当の容器が、ひらずみされており

ナポリタンとざるそばうどん

グラタンとようかんの和洋折中とうとう

狂気の沙汰としか思えない

この国の海外では

お好み焼きのおかずにたこ焼きを食べる民族が存在していると言うが

味がついていない白飯は食べないのだろうか

きっと、お茶漬けや、ソースライスのような物を

好んで食しているに違いない

我々のように、漬け物に舌を漬けられた

侵略された国家とは大違いなのであろう

いや、妄想はそこまでだ

余りのことに、脳内が、ショートおよび

別の組織と流入 混同して

意識が、白濁と混ざり合った末のキチガイじみた

妄想か

はたまた、空想のフィクションじみた事象に違いない

私は、よく冷えた棚を見るが

握り 弁当 釜麦以外に

お総菜の存在を、見受けることは、出来ない

何故だ、どこだ

 なんと言うこと どういうことなんだ

私の心の中の叫びが、心臓に、亀裂をいれ

脳内に、噴出を、繰り返し

果ては、脳内視野から、コンビニ店内に

現実化しているように、ぐにゃりと変貌しているように

思われてならない

しかし、断固として、妄想に、閉じこもってはいけない

コレは現実だ、空想ではない

空には、ロボットの代わりに

人工衛星やロケットが飛び交い

車はいつまでも地面をはい

いつまで経っても交通事故は消えず

空を飛ぶどころか

歩くことが一番だと考えられ始めている

現代

私は、一つの

ほんの一つ

されど一つ

黄金色に

きつね色に

おあげ色に

あげられた

こんじきの揚げ物の一つ

メンチコロッケ

その姿

その値札

その表札

その包装を

がらんとあいた

冷蔵庫の白い床に見ることが出来ず

視界を這わせて揺らめかせている

泳ぐ目の終点はピントが合わず

ただ、メンチカツがいつもある場所に置かれた

メンチカツとかかれた名刺

そのプラスチックに挟まれた名札は

小さく

ほんの縦横三センチ一センチほどしかない

しかし、名前はあれど

未練がましく

その跡地には、城がない

あるのは、白い城壁のみで

その姿を、想像するしかないのだろうか

脳裏に浮かぶのは毎日見て

ほおばる

あの触感 におい 感覚

それ以外に多大なる、感覚が合わさり

その存在を示唆していた

いや、私は今こそ

考えなければならない

「メンチカツ揚げ上がりましたー」

暖簾の奥で、奥さんの声がする

前方のレジの横の

肉まんとフライドチキンに挟まれた場所に

揚げたてのコロッケが

十個ほど並べられるのを、私は見ていた


それを購入し

私は、さらに気温が先ほどよりも下がった

屋外にでていた

熱いせいで、さわるのもおっくうな

メンチカツは、茶色い紙の包装を、開けば

それは、暗闇の中

外灯に、照らされて

サクサクととがる外見が、包みの中で、半円形状に

私に、蒲鉾のような、外観の形状を、見せていた

私の手は、それを、軽く握ると

そのまま、上方

口の部位へと

それを、電灯の下

口へと運ぼうとしていた

それは

「グエ」

そんなこえと共に、決定的に、決定打として

状況的に行動を、停止することになる

それは、溶けたような漆黒の中

赤い目が、外灯に、反射するように、赤く光る

私は、その人間と同じような

高さにある

それを、はじめは、何か、反射材のような物が、たまたま光っているのかとも思ったが

森の中に、佇むそれは、

とても人工物が、存在しているようには思えず

なおかつ、何か微妙に、動いている気がするのは

それは前進後進と言うものではなく

ただ、まずかに、振動するように

呼吸があるのか

それは、無機物ではなく有機物生命体

いや、動物と言っても差し支えが無いような気がした

私は、余りのことに、後づさりすると

そのまま、光り輝く

魔境足り得るコンビニへと

豪快な開閉音とともに

またしても店内に逆戻りだった

若い店員は、また何をしに来たんだ

と言う視線もなく

ただ、空中を、虚空を眺めているように見つめている

私は、明るい店内から

外の暗闇を見る

逆の立場であれば

店内を、外からガラス越しに

見ることは用意だが

しみこんだ、暗闇は、森の中を見通すほどの威力もなく

ただ、濁った、闇が、もどかしく

木々の間を、泳いでる

チラシの上から

私は、メンチカツ片手に

小スペースの休憩所で

ガラスを通して外を見る

やけに明るい店内

いつの間にか、赤い二つの何かの姿は、消えていた

それは、切断音とでも言うべきなのだろうか

まるで、ブレーカーでも落ちたような

音の後

店内が、急に、静かになった

いや、実際には、電気が、消えたのだ

それは、瞬時に視界を奪い

私は、ぼやけた視界の中

無数に光る

二つの点が、辺りを、取り囲んでいることに気がつく

いや、其れは、逃げようと、目線をずらしても

まるで固定されたかのように動くことから

其れが、目に焼き付いた

あの赤い光か

それとも、強いコンビニの蛍光灯の明かりが反射し

まるで影法師を追うように

暗い店内に、鮮明に浮き上がって見えたに違いない

「ギェ」

そんなこえが私の鼓膜を通じて

脳内に伝わる前までは

電気が消える直後

私は、何か、電子音をきいた気がした

其れは、警戒で単調な

開閉音であったが

其れは、まるで、闇に切断されたかのように

途中で、消え

代わりに、やけに鮮明に、目の前の棚に

何か二つの赤い丸が、浮かんでいる

何なのだろうか

冷蔵庫の機動証明だろうか

しかし、自動発電など

スキー場や病院でもない限り

あまりないのではないだろうか

いや、停電しているのだ

多少電気が残っていても

消えずに残っているのは

やはり、自家発電を、のぞけばおかしいに違いない

私は、その赤い物から逃れるように

若い店員のレジに向かおうとすると

奥で灯りが揺れた

其れは、だいだい色のまるで、

暴れた魚のように

天井や床棚を、照らし

「お客様大丈夫ですか」

と言うしわがれた

年輩の声に思われた

店長の老人だろうか

声を余り聞いたことがなかった

「若葉君、君店を頼んだよ

お客さまを、誘導して懐中電灯渡すから」

そのこえに、どもるように

「しかし、店長は、どこに行くんですか」

と、聞く

「私は、ブレーカーを、裏に見てくるから

宜しく頼んだよ」

と、言う声と共に

思いっきり自動ドアにぶつかる音が私には聞こえた

「ギェ」

また、暗闇でなく

今度は、はっきりだ

耳を澄ませた

其れは、きしんだ音でも

機械音でもない

静寂の中に、何かが、声を発したのだ

其れが何かはわからない

しかし、この地方では

河童とは違う

森に住むUMAが、人を食べに出歩くというのだ

そして、悪夢のような話であるが

其れは、カラスのようにも蛙のようにも鳴くらしく

ただ「ギャエ ギャエ」と笑うという

暗闇の中

その赤い光が、ゆっくりと動いているのを私は見る

其れは、床に倒れている店長の方へと

近づいている

何なのか

懐中電灯なのか

しかし、其れは余りにも弱々しく

そして、私は、商品とは違う

香りを、嗅いでいた

其れは、どこか獣臭く生々しく

魚よりも肉に近く

そして、血のにおいがすると言う矛盾を生じていた

普通販売される肉は、血抜きがされている

その処理がされて居ない肉を見るのは、まれであろう

其れが比較適されていないのは魚類に多い

ただ、そのにおいは、切ってしまった傷口の血液に

近い

私は、手の中で、ごわつくメンチカツを、握っている

がっさがさと音がした

そのゆれつく思いのまま

わたしは、レジ横に置かれた懐中電灯を、手にした

「あっ店長」

レジで若者の声がした

オレンジ色の円柱線がゆっくりと

棚を、揺らし

そのまま、クリーム色の床を過ぎ

そのまま店長を通り過ぎた

エプロンの裾を、照らした後に

黒い口が見えた

其れは、てかりを失った長靴のように見え

そのまま上を照らすと

良く知る婦人のしわの寄った顔に

紫色の濃いサングラスがかけられていた

その手には、ハムカツサンドの袋がトレイに、並べられ持っていた

店長は起きあがると

「ああ、行ってくると」

無理矢理ガラスの自動ドアを開け

戻らない扉を、すり抜けると

店の裏手に回っていく姿が見えた

外の電柱は停電ではないのか

明かりが見え

それが一層、店内を暗く見せていた

「大丈夫ですか」

若い店員が、わたしのそばにより

そんな声をかけていた

「ええ」

そのとき、またわたしの近くで

「グぇ」と声が聞こえた






その日、何とか、帰ると

手に汗ばんだ、ハムカツとメンチカツの袋が、握られていた

あの後 ハムカツをもらったが

それは、婦人からではなく

若者からであった

暖められた、ショーウィンドウの中には、なぜかメンチカツの姿はなく

その代わりにハムカツが十袋ほど並べられている

わたしは、一口も食べず

いえについた頃には

しっとりと油が衣に回り

ただ油物のにおいが辺りに、漂う

結局婦人の姿も

店長の姿も見ることなく

明かりのついた店内に

わたしは、無人さを感じたが

もちろん私は居たし

若者の店員も居たのだ

その際に、メンチカツを、マニュアルにでもあるのか

私は、頂き店を後にした

白い皿の上に

三つのハムカツと口の付けられていないメンチカツ

ゴミ箱の中には、袋が丸められ捨てられており

机の上の油物は

半透明にも似た透明度を油分により有している

橙色の電球の揺れる下

それは、極彩色に、揺れながら油を少しずつ垂れ流し照る

あの店内に何かが居たのだろうか

それとも、サングラスと間違えたのか

いや、覚えていないだけで

ブローチが

外の外灯とかで光って、見えたに違いない

飾り物とは、大体そういうものだ

私はそう思うのです

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