第8話 おっぱいは杏花が初めて

その日2人は、南京錠をかけずに、屋上にいた。つまり、ただのお昼の時間に屋上を使っている。


杏花は、一つ、気になっていたことを、陸に尋ねた。


「ねぇ、菊池くん」


「なに?」


もぐもぐと、パンを頬張りながら、応える陸。


「君に、一つ聞きたいことがあるんだけど…」


「だから、なに?」


「君は、かなりのおっぱい星人だよね?」


「だな」


「そこでだ、君は高校で私に会うまで、どうしてきたの?」


「なにが?」


「…お…おっぱいだよ…」


「どういうこと?」


「だから!誰のおっぱい揉んで過ごして来たか!って聞いてるの!!」


真っ赤な顔をして、杏花は陸に問いただした。


「別に。誰のおっぱいも揉んでないけど…」


「えぇええ!!??」


「…なんだよ…そんなに驚くことか?」


「驚くよ!だって、あんな大胆に私の胸は揉んできたくせに!!」


「ふっ…。やっと出逢えただけのことだよ。俺の、運命のおっぱいに…」


「…そんな、格好いい顔をしていうことなの?」


なんの恥ずかしげもなく、ふざけたこと言う陸に、これが本当の理由なのか…と、不信感の嵐の杏花。


「まぁ、正直言うと、おっぱいに目覚めたのが、杏花だったんだよ」


「はぁ?」


「今まで、全然興味なかったんだ。女子の胸。別に揉みたいとも思わんかったし、そもそも見る気も湧かなかった」


「…そんな菊池くんが、なんで私のおっぱいを揉みたがるの?」


何だか、もうセクハラだらけの会話になっているが、2人はもはや、気付いていない。


「う~ん…胸に目覚めた…って言うか、本当の本当だよ?信じてくれる?」


何やら、陸が、真剣な顔をしだした。


「俺、杏花が初恋なんだよ」


「えぇぇえええ!!???嘘でしょぅぅぅううう!!!???」


「だよな…やっぱ信じないか…。話さなきゃよかった…」


「イヤ、信じないとか、信じるとかの問題じゃない!こんなに顔が良くて、高校に入って18人で告白してきた人少ない発言した菊池くんの、初恋が私!?本当に!?」


「うん。本当。電車乗ってて、困ってる杏花見たら、なんか儚げで、柔らかくて、可愛らしくて…。この子は俺が守らないと…って思ったんだ。で、そこに付いてきたのが、おっぱいだった」


「…途中までは、とても素敵なお話なんだけど、最後で泥を塗るよねえ…菊池くんは…」


「だって、本当ことだもん」


「でも、なんでそんなに初恋から、おっぱいまで飛んじゃったの?そう言うのは、もっと時間をかけてそう言うのは花開いてゆくものなんじゃないの?」


「そうなんだろうか?でも、しょうがないじゃん。俺、杏花のおっぱいにも惚れちゃったんだから!!」


なんで真面目顔で、そんなオープンスケベを公表できるのか…口を引きつらせながら、杏花は思った。


「でもね、菊池くん。君に、一つ、どうしても聞いておきたいことがあるの」


「なに?さっきもそう言ったよね?最初から最初から二つあるって言えば良いのに…」


「…悪かったね…。で、その…」


「なに。そんなに言いづらいことなの?」


言いづらい…と言うより、怖い、と言った方が表現としては正しいだろう。


「私のこと、本気?好きなの?胸がなくても?もしも、この胸がAカップだったら、菊池くんは、私をすきにはなってなかった!?」


「…なってたよ」


「そんなの嘘だよ!!」


「なんで分るの?」


「だって…だって…こんなおっぱい星人、見たことない!!」


「失礼だな…。おっぱい星人になったのは、杏花に会ってからだと言ってるだろう」




どうも、信じられない、杏花だった。

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