第3話 オープンスケベの菊池くん

今朝も、満員電車。身長が158㎝の杏花は、小さすぎはしないんだろうけど、いつも、ドア付近でもみくちゃにされ、尻やら胸やらを触られる。


そして、今日も…。



(!!ち!痴漢!!)



その痴漢は、掌で撫でまわように杏花のお尻を触っている。その時―――…。


ドスッ!!


「いぃってぇ!!!」


誰かが、思いっきりその痴漢の男の足を踏んだらしい。


「おっさん、俺、空手3段なんだけど、鼻と肋骨、どっちが良い?」


「は?」


足を抱えながら、その痴漢はその助けに入った人を見上げ、呟いた。そのはてなな声に、怒り爆発のは、


「折・ら・れ・る・な・ら、どっちが良いかって聞いてんだよ!!」


と、もう声変わりもとうに過ぎた、のいかつい低い声で、怒鳴り散らした。


「す!すみません!!もうしませんからぁぁぁあああ!!」


プシュー…。


と、タイミングよく開いた電車のドアから、そのエロおやじは逃げるように去って行った。そして、その場面を見ていたのであろう。もしかしたら、犠牲者は自分だったかも知れない…と言うような表情かおと態度で、車両を移すおじさん(中には30そこそこのヤツ)が数人いた。


(あいつら~…人のお尻と胸をなんだと思ってんのよ!!)


杏花は怒り心頭。…だったが…。











むぎゅっ!!!


「おはよ!杏花!!」


「…菊池くん…君はよくもまぁ、朝からそんな破廉恥なことをしながら、そんなにもさわやかな笑顔で私に挨拶できるわね…」


「良いじゃん。約束だし!実際、助かったっしょ!?」


「まぁね。ありがと。でも、ここで、菊池くんに揉まれたら、意味ないような気もするんだけどどうかしら?」


「う~ん…でもまぁ、俺ら、付き合ってるし?良いんじゃん?」


「はぁ…。これって、付き合ってるって言うか、ただ単に君が胸を触りたい欲求を私で満たしてるだけだよね?」


「それは違う!!」


「何がどう違うの?」


「俺は、杏花がすきなの!杏花の胸を揉みたいの!!解る!?この恋する男心!!」


「…分らん…」



そうした会話を終えると、誰もいない北校舎の渡廊下を離れ、私と菊池くんは、各クラスへ戻る。それが、ほとんどの毎朝のご挨拶。



正直、菊池くんは、モテル。そして、正直、私も、モテル。


こんな関係バレたら、なんとも言いようのない噂…イヤ、失態が浮き彫りとなってしまう。私は、菊池くん以外には変態じゃないけど、正直、菊池くんが、普段変態ではないのか…それは、3ヶ月経った今でも、よくわからないでいた。





そう言えば、幸田さんと、田所さん、何故、厄介だか、まだ話していなかった。もうお察しの方もいらっしゃるかと思うが、彼女らは、菊池信者だ。どうやら、彼女らは…彼女らだけではないと思うが、菊池くんの変態ぶりを、知らない。


只の、スケベなら目をつぶろう。むっつりスケベなら、なお目をつぶろう。でも、菊池くんは、私に対してだけは、オープンスケベだ。そのオープンスケベを、学校中に広げられては、私も、一応彼から彼女として指名されている訳なので、困るのであって…。


私は、これから、このオープンスケベを、学校内では封印するべく、闘う日々を始めるのである。

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