閑話 ある呪いの話

 ヒトの考えていることなど、たかだか知れている。

 けれどときに、奇想天外なことをやってのけるから面白い。



 呪いの王として永き時を生きる蟒蛇にとって、ヒトビトの変化とは食事の隠し味スパイスも同義だ。


「クヒヒッ、キキッ」


 普通の蟒蛇とは異なる歪な嘲笑声を発しながら、かの者は氷の国を感じ取っていく。

 数百年振りの世界だ。楽しまなければ損だ。

 澄んだ空気によって開いた空に浮かぶ、自らのまなこと同色の〝月〟。その光が射し示す先に、ひとつの影を見た。


「……あれは……偃月、と言ったかナ? あの子供は」


 ここからだと距離がある。夜であること遠いことからその様子ははっきりとは窺えないが、ずっと地面を見る子供えんげつは明らかにおかしかった。



 まるで、その場所に何か大事な物が埋まっているかのような目つきで、立ち尽くしている。



「————……クヒヒッ。花の都も大概だったが……この国も相当だネェ!」



 かくして蟒蛇は新しい玩具おもちゃを見つけたようだ。


 牙から滴る毒は、じわじわと、孤独な雪に融けていく——。

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氷鷹の三王と囚われの花檻姫~身代わりの花姫は幸せを識る~ KaoLi @t58vxwqk

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