なんやかんやで? ~長子チームの交際はこのようにして始まった~
宇部 松清
第1話
「
女友達によく言われる言葉だ。
彼女達からしてみれば、この年になっても恋人が出来ないのは、私の理想が高すぎるせい、らしい。
この年って、私まだ二十四なんですけど?
自分で言うのも何だが、まぁ、美人の部類の顔立ちではある。スタイルも、そりゃあモデルさんと並べば見劣りするのだろうが、一般人として見れば良い方だし。内面……はどうなのかな。自分では判断出来ないけど、そこまで人格が破綻してるとか、そういうことはないんじゃないかと思いたい。
男性からのアプローチだって少ないわけじゃない。告白なら何度もされた。けれども、皆、私が医者の娘であるとか、私自身も看護師であるとか、そういうところばかり見ているのだ。それからもちろん、私の外見だけに惹かれて寄って来る男も多い。ちょっと良いかも、なんて思っても、それがわかってしまうと興ざめである。
今回もその話になり、「別に理想なんて高くないと思うけど」と反論するも、「いや! 身長は百八十以上とか、顔は俳優レベルとか、あともちろん性格も良くて、頭も良くて~、って絶対に選り好みしてる!」と返されてしまった。
久しぶりの女子会ということで、集まったイタリアンバルである。
「ていうかそれ、弥栄の弟君じゃん?」
と、私の弟――
「ウッソ、そんなの身内にいんの?! ね、写真とかないの? 見せてよ!」
「夜宵は百八十もないはずだけど」
そう言いながら、大学入学前の家族旅行で撮った写真を見せる。
「ちょ、マジ?! え、何これ! すっごいイケメンじゃん! 王子!? 王子じゃん! これで? 性格も良くて?」
「弟君も医学部生だよね」
「そうだけど」
「ちょっともー、早く言ってよ。ねぇ、私、弥栄の義理の妹になっても良いからさ、マジで紹介して? ね?」
「残念でした。ちゃんと恋人がいますー」
そう言うと、かなり本気だったらしいその子は、「やっぱりかぁ~」と机に突っ伏した。
弟の夜宵は、高校二年の文化祭で長年の片想いに終止符を打った。一生懸命隠していたけれど、家族全員、とっくに気付いていた。隣に住む、同い年の男の子である。同性愛への偏見? ないない。そんなものは、私にも、両親にもない。
自分の好きな人が、同じくらい自分のことも好きでいてくれる、なんていう奇跡は男女間にのみ存在するわけじゃない。同性にだってある。しかも、確率は異性愛者よりもきっと低い。それでも弟は、その相手を見つけたのだ。家族として、これ以上に嬉しいことはない。
家系が途絶える?
ウチはそんな代々続く由緒正しい系のお家ではありません。途絶えて困るようなこともありません。それは両親から何度も言われた。だから、お前は、結婚しても良いし、しなくても良い。お前が幸せならば、相手が誰だって良いし、相手なんていなくても良い、と。
だから、焦らずに生きて来た。
誰かを好きでも良いし、好きじゃなくても良いのだと。
けれど、周りに指摘される度、その自信が揺らぐ。私だってもしかしたら、出会ってないだけかもしれないのだ。その『人』に出会いさえすれば、私だって。
ベタな言い方をすれば、『運命の人』ってやつに、だ。
運命の人ならば、きっと私だって燃え上がるような恋をするはずだ。恋をしてみたい。私のことを本当に好きでいてくれる人と、私が本当に好きでいられるような人と。
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