最終話 ワナビふたり

「もうっ! なんでふたりして、創作活動してるんですかっ!?」

 るりちゃんが、俺の部屋で怒っていた。

 俺はいつも通りラノベ執筆、それに加えーー。


 千春がローテーブルで、フリゲ制作をしていた。


 千春はノートパソコンを自分で持ち込んできた。さらに、パソコンでイラストを描くためのペンタブレットもである。パソコンの中には多くのゲーム制作用のソフトがインストールされているらしい。まったく、どんだけお嬢様なんだ?

 今は、ワイヤレスの静音キーボードでなにやらカタカタしていた。シナリオでも書いているのだろう。ハイスペックなヤツである。

「……わかりました!」

 るりちゃんが突然大きな声を出した。

「私もここで、ゲームを作ります!!」

 ……なんでそうなる?

 さびしいのだろうか。忘れていたが、るりちゃんはクラスの学級委員ではなかったか。

「そうはさせねえぜ、るり」

「お兄ちゃん!?」

 真がひさしぶりに来た。ちなみにコイツはフリーターである。セリフがダサい。

「お前の本分は勉強だろ。おとなしく学校に行け」

「でもっ……!」

「るりちゃん、お前がいないとさびしいよ」

 翔太も登場した。

 どうでもいいがコイツらはなんで人の部屋に無断で入ってくるんだ?

「翔太くん……。仕方ないですね」

 あえなく、るりちゃんと野郎どもは部屋を出ていった。

 あいさつは最後までなかった。


「…………」


 思ったけど、千春のことはふたりともどうでもいいんだな……。俺は異世界転生ものを書きながら、少しかわいそうに思った。

 なので、声をかけようとふりむいた、その時ーー。


 いつのまにかすぐうしろにいた千春にキスされた。


「……え?」

 間抜けな顔をさらす俺。

「夏樹、好きだよ」

 そう言って、千春は笑った。

 最高にかわいかった。



(続く)

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