第六話 秋は別れの季節
「『懐かしい夢を見た気がした』……」
俺の指は止まることなく物語を紡ぐ。
結局千春の案で、俺は流行の異世界転生ものを書き始めた。
千春は相変わらず俺の部屋に入り浸り、ゲーム機(四台目)と遊んでいた。よく飽きないものである。俺は伸びをして、パソコンのモニタを眺めながら千春に声をかけた。
「千春、なんのゲームしてんの?」
「フリゲ」
フリゲとは、無料の同人ゲームであることを、千春から教わった。しかしコイツは、フリゲだろうが市販のゲームだろうが、いつもの携帯ゲーム機(改造済)でプレイしているのである。一体誰に頼んだのだろうか。最近俺も欲しくなってきて、千春に最後の一台をくれと頼んだが、無言で軽蔑の視線を送ってきただけだった。暴言より傷ついた。
「内容は?」
気分転換をしたくて、いつもより会話を踏み込んでみた。
「…………死んだ恋人をよみがえせるために、主人公が人外美少女でハーレムを作るギャルゲー」
「なんだそりゃ。誰だよ作ったの」
俺は素直な感想を言った。
「あたしだけど」
ビシッ、と、空気が凍りついた。動けない俺。
「帰るわ」
手際良く荷物をまとめて、部屋を出ていく千春。
俺は、追いかけることができなかった。
「夏樹さんが悪いですよ」
と、実はいたるりちゃんにとどめを刺され、俺はノックダウンした。
(続く)
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