第80話 ポータル活用術
《迷いの森》で冒険し、次の日はドラゴンたちと、ルネちゃん、ロラちゃん、シリルくん、さらにその友だちも加えて遊んだ。ルーやペガくんも、もちろんいた。
ピンクちゃんやボレアスに乗せてもらったり、ものすごく特別にペガくんに乗せてもらったりした。楓が「きょうはとくべつにのってもいいよって、ペガくんがいっているの!」と言ったのだ。
みんなとても楽しそうだった。
「あたしもドラゴンに乗りたい!」
彩香はそのようすを見て、悔しそうに言った。
「ペガくんには乗れるようになったから、いいじゃない。酔い止めの魔法を使って。それに空も飛べるでしょ?」
「そうなんだけどさあ。……ああああ、いいなあ」
僕は、一番初めにピンクちゃんに乗った彩香を思い出し、くすくすと笑った。
「なによ」
「いや、ピンクちゃんに最初乗ったときの彩香、かわいかったなって思って」
「もう、忘れてよ、それ!」
「忘れないよ。彩香のことは何もかも」
「弘樹くん。……ねね、赤ちゃんね、男の子のような気がするの!」
「え? もう分かるの?」
「ううん、勘! エコーあるわけじゃないしさ。でもなんとなく、男の子だと思う。今度はね、きっと弘樹くんそっくりの男の子なんだよ」
「彩香そっくりの男の子かもよ」
「……まあ、どっちに似ていてもいいけど、でもきっと男の子だと思うな!」
僕は彩香の肩を抱いて、それからお腹にそっと触れた。
まだ膨らんでいないお腹。
「とにかく、元気に生まれておいで。どっちに似ていてもいいから」
僕は小声で話しかけてみた。
「男の子でも女の子でもいいけど、きっとあなた、男の子でしょ?」
彩香も話しかける。
「楽しみだね」
「うん!」
やさしい風が吹いて、原っぱの草を揺らして、それから子どもたちの声を遠くに飛ばした。あの子どもたちの中に、今度生まれてくる僕たちの子どもも加わるんだ。
最後の日はまたハンバーガーを食べることになった。
織子ちゃんは、ハンバーガーをすごく気に入ったらしく、リクエストされたんだ。
そして織子ちゃんは、午前中にはクッキーを焼いて、それから丁寧にラッピングをした。
「みんなにあげるんだ」
「きっと喜ぶよ!」
「うん!」
うちで楽しく遊んだりおしゃべりをしたりして、お昼にハンバーガーをみんなで食べた。
わいわい言いながら、好きな具材を挟んで食べるのは、やはり楽しい。
「あたし、日本に帰ったら、ハンバーガー作ってみる!」
織子ちゃんはアボガドたっぷりのハンバーガーを食べながら、意気込んで言い、そしてさらに
「ああでも、パパとママだけだからなあ。人数多い方が楽しいよね」
と残念そうに言った。
「今度は冬休みに来るといいわよ」
と彩香が言うと「三連休とかにも来たいな」と織子ちゃんは応えた。
「パパとママと相談してから来てね」
「うん!」
ハンバーガーを食べ終わり、持ち物(宿題とか!)を確認し終わり、織子ちゃんはみんなに、きれいにラッピングしたクッキーを配った。
クリストフ王子に渡すとき織子ちゃんは
「織子のこと、忘れないでね」
と言って、ついにぽろりと涙を流した。
「忘れないよ」
クリストフ王子そう言って、織子ちゃんの手をぎゅっと握った。
「あのね、ポータルがあるからね、またすぐに会えるわよ」
二人のようすを見ていた彩香がそう言うと、織子ちゃんが「だって、彩香ちゃんがいないと使えないじゃない、ポータル」と言った。
「うん、でも、ポータル、もう少し自由に使えるように改良しているのよ、少しずつ。そのうち、織子が来たいときに来られるようになるわよ!」
「ほんと?」
「ほんと、ほんと。でも、少し待っててね」
「うん!」
「それに、あたし、電話かメールが出来るといいと思うのよねえ」
「あったら便利!」
「うん、それも考えておくね!」
「分かった!」
ポータルに鍵をつけた方がいいとか、スマホがないと不便とか。
少しずつでも、きっと望むように作っていくんだろうなあ。
――この世界の、アルニタスの地図も。
「じゃ、織子、行こう! 送って行くよ」
「うん。――じゃあ、みんな、またね! 絶対にまた来るから!」
またね!
彩香とともに織子ちゃんは日本に帰って行った。
こうして、織子ちゃんの七歳の夏休みは終わったのだ――
*****
第三章はこれでおしまいです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
第四章も、全部(3万字程度)書いてから投稿する予定です。
第四章は「楓、ドラゴン」というメモがあるので、そのような方向で考えております。もちろんほのぼのファンタジー♪
実は3万字は2日で書けることが分かったのですが、先に書きたい話がありますので、しばしお待ちください。ごめんなさい!
でも必ず書きます!
よろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます