いいわけないだろ!!
七雨ゆう葉
キミ、本当に反省してるのか?
「どうしてこんな事したんだ?」
「…………」
「黙ってたらわからないだろ」
「金払うの、忘れてて……」
「忘れて、って……」
「本当です」
「あのな。そんな言い訳、通用しないから」
「違うんです。後で払うつもりだったんです」
「じゃあ何で買い物カゴじゃなく、ポケットなんかに入れてたんだ? それもこんなにも」
「それは……」
「いい加減、観念するんだ」
「ところで。キミさ、いくつ?」
「……サンジュウ」
「三十? まだ若いのに。ったくこんな事して。家族は?」
「一人暮らしです。親は居ません」
「本当かぁ?」
「本当です」
「こういうの、今回が初めてじゃないんじゃないのか?」
「いいえ、違います」
「そうか。だが悪いけど、警察には連絡させてもらうから」
「それは……本当にすみませんでした。絶対にもうしません。お金もちゃんと払いますから」
「そういう問題じゃないんだよ。キミ、本当に反省してるか?」
「はい、しています」
「詳しい話は警察が来てから、署の方で話してくれ」
「どうか、それだけは……」
「プルルルル……」
「はい。エキューズマート、店長の
「……ええ、そうです。こちらで取り押さえて、事務所で話を聞いてるところです」
「ではお待ちしていますので、宜しくお願いします」
「……呼んだんですか?」
「もちろんだ」
「そうですか……」
「あきらめるんだな」
「…………」
「まったく。私も忙しいんだ。仕事もまだたんまり残ってるってのに」
「おっと、もうこんな時間か。三時の休憩もとうに過ぎてるじゃないか。悪いがここで一服させてもらうよ」
「キミはこのまま、ここで待ってなさい」
「スー、ハー」
「あの……」
「ん? なんだ」
「その……」
「何度も言ってるだろ。もうあきらめることだ。全部キミの自業自得なんだから」
「……そうじゃなくて」
「お? どうした?」
「一本もらってもいいですか?」
「……ッ」
「いいわけないだろ!!」
終
いいわけないだろ!! 七雨ゆう葉 @YuhaNaname
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