ムキムキ! 筋肉戦士☆マッスルハート♡

肥前ロンズ

第5話 おじいちゃんに正体が!? ムネがムキムキ♡ 秘密の使命!

 二階にある自分の部屋からリビングに降りると、すでに起きているおじいちゃんが、私の朝ごはんとお弁当を作ってくれていた。


「おじいちゃん、おはよう!」

「はい、おはようございます、愛さん」


 私、相田愛! 中学二年生。両親は海外で働いているから、おじいちゃんと二人暮らし。

 おじいちゃんは頭も良くて、スポーツ万能で、カッコよくて、料理も上手で、物腰が柔らかくて、とっても優しいの!

 そんなすごいおじいちゃんのようになりたくて、私も自分を磨いているんだ。


 ご飯を食べて、荷物をまとめて、靴を履く。

 その時、ふと、黒いダンベルが落ちていることに気づく。……なんだろこれ? 私のダンベルは赤だし、おじいちゃんのものかな? まあ踏まないように置いておこ。

 

「じゃ、いってきまー」


 す。

 おじいちゃんに作ってもらったお弁当を持って、学校に向かおうとしたその時。


『大変だワン! ゼ・イニクパワーを感じたワン!』


「ええ!?」

「どうかしましたか、愛さん!?」

 頭に響いた声に驚いて、思わず声を上げちゃう。玄関まで駆けつけてくれたおじいちゃんが、心配そうな顔をしていた。

 い、いけない。今の声は、私以外に聞こえないのに。

「う、ううん! なんでもない! いってきまーす!」

 飛び出すようにして家を出る。


「……また、『マッスルハート』としての使命ですか」

 おじいちゃんが私を見送りながら、そう呟いたことには、気づいていなかった。







 

 通学路とは逆の道を走っていると、ぽん! と、不思議な煙と音を立てて、ちいさな牛のぬいぐるみのような子が現れた。


「場所は○○公園だモン! 『マッスルハート』の出番だモン! すでに二人は向かっているモン!」

「わかった!」



 公園へ向かうと、すでにゼ・イニクが公園で暴れまくっていた。

 子どもたちがいなかったことが救い!



「そこまでよゼ・イニク!」


「赤の『プッシュアップ』!」

「青の『スクワット』!」

「黄色の『プランク』!」


「「「筋トレ戦士『マッスルハート』!」」」」



   ■


 

 私には秘密があるの。それは、怪物ゼ・イニクを倒す使命を持った筋トレ戦士『マッスルハート』であること!

 この隣の子は私をサポートする妖精ホルモン。ある日私の前に現れたホルモンは、こう言った。


『神聖な儀式キン・トレをサボったことで、640もあったキン・ニクの妖精が怪物ゼ・イニクに変わって、人間界を荒らしまくってるだモン! これらのゼ・イニクをキン・ニクに戻すには、選ばれし「マッスルハート」の魔法で鍛え直すしかないんだモン!』


 ……そんなわけで、私は『マッスルハート』の赤の『プッシュアップ』になったの。

 私以外にも仲間はいて、最近はやりがいを感じていたり。だけど……。






「そろそろまずいよ〜!」

 お昼休み、仲間二人に対してそう愚痴る私。

「遅刻する回数増えたから、先生からおじいちゃんに電話かかってるみたいだし〜!」

「ああ……確かにね」

「ちょっと学校生活に支障出てるよね……」

 

 遅刻ギリギリでうちに出るならまだいい。だけど私は早く起きて、家を出ているのだ。

 

「こないだ『学校から電話があったのですが、何かあったのですか?』って言われて、とっさに『ここのところトラブルに巻き込まれて遅くなっちゃう』って言っちゃった……でもその言い訳もそろそろキツいよ〜!」

「まあ、嘘ではないんだけどな」

「巻き込まれているというより、わざわざ行ってる感じだけどね……」


 うう。私の面倒を見てくれるおじいちゃん。

 そんなおじいちゃんに、少しでも心配かけたくなくて、毎日早起きして、坂ばかりの通学路10kmを走っているのに……。


「『やはり少し遠いですか? 車で送りますよ?』って……普通なら30分も走れば着くのに〜!」

「明らかにおかしい身体能力と体力」

「だからこそ、私ら『マッスルハート』に選ばれたわけだけど……」


『マッスルハート』たちには、妖精の加護として、常人よりすぐれた身体能力と体力を得ることができる。なら、そこらへんの人を捕まえて強化すればいいんじゃない? と思ったんだけど……。

 ホルモン曰く、『本人たちの資質がないとダメ』なんだそう。


『運動嫌いの人は大概体を動かす根気が続かないんだモン! 最初は動きまくれても、あとから段々やる気をなくしていくんだモン!

 ゼ・イニクを倒すには根気を継続させることが必要なんだモン!

 根気!! 大事!!』


「血走った目で説得されたよね……」

「多分サボってた戦士がいたんだね」


 おじいちゃんの運動に付き合っていただけで、特にスポーツをしていたわけじゃないんだけどなあ。

 おじいちゃんは健脚で、運動会の保護者リレーではビリから二位に駆け上がれるほど速い。「あのおじいちゃんなにもの!?」とよく騒がれていたなあ。

 と、思い出に浸っていると。

 

『大変だもん! またゼ・イニクが現れたモン!』

「「「また!?」」」

 

 またしてもホルモンからメッセージが来た。








「……ねえ、最近ちょっと頻度多くない?」

 ゼ・イニクを倒したあと、青の『スクワット』が呟いた。

 確かに。前は週にニ、三回ぐらいだったのに、ここのところ毎日出没している。しかも、今日は二回も現れた。

「ゼ・イニクに、何らかの変化を伴っている可能性があるモン」

「何らかの変化……?」


 黄色の『プランク』がそう呟いたとき。


「その話、俺にも聞かせてくれないだろうか」


 後ろから声をかけられた。

 そこに現れたのは……謎の仮面をつけたタキシード姿の男性。

 シルエットがマントで隠れているけど、太ってはいないみたい。なぜか片手には黒いダンベルが握られていた。

 ……ん?この声……なんか聞いたことある……よう……な…。

 ……いや、まさかそんな。でも、私が聞き間違えるはずがない。でもでも、そんなことをする人じゃ、


 ――思い出すのは、玄関に落ちていた黒いダンベル。

 



「お……おじいちゃーーーーん!?」




【次回予告】

 仮面をつけた謎のタキシード男『仮面紳士ダンベル』。

「おじいちゃんだよね?」と孫が尋ねても「なんとことやら」とすっとぼけられる。

 その紳士的な姿に、あのクールな青の『スクワット』も恋に落ちて――!?

 次回! 『初恋泥棒おじいちゃん! 〜今はW○ ifitじゃなくてリン○フィットだよ〜』お楽しみに!

 

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