魔法学校の生徒、アリスとシェリーの心温まる×ミステリアスな物語。

魔法を習う学生達が繰り広げる、神秘的な異世界ファンタジーです。
主人公の少女アリスが、もう一人の主人公とも呼べるシェリーとひょんなこと(理事長の悪戯で3階から紐なしダイブ)で出会うところから、物語はスタートします。

出会ったシェリーは、若くして色々と重い設定を背負っています。
その背負った設定が、色々と悲しみが深くて……。
シェリー本人は、本質的には悪いことをしていないのですが、その背景から沢山の人から嫌われ蔑まれ。
本人は仕方ないと諦めムード。
そんな彼女を、人懐っこいアリスが日の当たる場所へ連れ出すのが序盤の流れになります。
アリスの友人達や学校の先生達も、基本的には良い人揃い。
ギスギスする場面も最初期ぐらいで、ネガティブなシーンが嫌いな人でもストレスフリーに読めます。

シェリー周りで不穏な設定が付いて回るものの、本作は基本的に日常パート多め。
学生同士の競技バトルや危険な森探索、実験中のトラブルなどアドベンチャー、アクションパートはありますが、大部分は女子生徒達のふわふわ学園生活がメインです。
それはもう、ふわっふわです。
文章が薄い的な意味では無く、読んでるこっちがある種の癒し効果で、ふわふわとした気分になるのです。
自分も学生時代に、仲のいい友達と話題のスイーツショップで買い食いしたり、バイト先でイケメン先輩と仲良くなったり、3階から落ちてクール系美少女と出会いたかったなあ、みたいな感想を持つこと請け合いです。

そんなことを考えてしまうくらい、描写が綿密で、風景の脳内再生が余裕な文章なのです。
文章量的には過剰な訳では無く、読んで想像するには十分過ぎるほどで、凄く「読ませる文章」をしています。
作者様の筆力が、実に高レベルです。
いち書き手としては真似したいのですけれど、これはもうセンスの領域ですね。

日常パートが多いとはいえ、シェリー絡みでシリアス要素はちゃんと入ります。
特に回想パートは、現代編が平和進行なためギャップ差があるのですが、その高低差が良いですね。
ちゃんと物語に深みを持たせていると言いましょうか、展開を平坦なものにさせていません。
アクションあり、狂気あり、悲哀ありで、テンポ良く話が進みます。
まったりした日常編と上手く対になっていて、構成がお見事です。
私も、手に汗握ってページをめくりました。

この通り、キャラにシナリオに描写に構成と、褒める箇所を挙げるときりが無い名作です。
是非とも、色々な人に読んで頂きたい一作でした。

その他のおすすめレビュー

濱丸さんの他のおすすめレビュー158