救いと赦しの狭間に揺蕩う

ひょんなことから出会った男女。
二人は独自のビジネスを開拓し、社会の暗部へと突き進んでいく。貧困や暴力、そして飽くなき渇望。渦巻く欲望に吞み込まれた末に出した、彼らの答えとは。

情け容赦のないノワールな雰囲気と、力強い筆致が売りの本作。群像劇の形式をとることにより、多面的な物語の構成を可能としています。闇で生きる人間たちの抱く微かな希望や悲哀、凋落といったものが丹精に描かれており、リアルな息遣いを感じさせてくれる作品でした。また、その他の特徴として作中には実在の様々なブランドや音楽が登場します。個人的にはこの部分が一番好きでした。端的に様相を説明したうえで、雰囲気にアクセントを加えられていた印象です。描写面における本作の醍醐味の一つだと思います。

ノワール小説を愛する人に是非ともオススメしたい一作です。それぞれの抱える闇と、予断を許さない緊迫した物語。誰がどんな方向に向かい、なにを選ぶのか。危険なスパイスの効いた本作は、きっと貴方を満足させるものとなるでしょう。

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