筋肉をつけたかっただけなのに

いぬきつねこ

筋肉をつけたかっただけなのに

 筋肉をつけよう。

 それは天啓だった。嘘。そんな崇高なものではない。昼休憩に見るでもなくスマホでTwitterをながめていると、「筋肉があれば、理不尽な目に遭っても、いつでもお前を殴り飛ばせるという余裕を持つことができるので筋肉はプライスレス」という書き込みを見つけたのである。

 服部孝彦はっとりたかひこはオフィスの奥の席を見た。今は昼食に出ていて不在の新山にいやま係長。こいつがなんとも意地が悪い男で、ずっと前の書類の不備を1ヶ月経った今もネチネチ責めてくる。

 さらに係長はそれとなく孝彦の体型について苦言を口にした。君も営業でいろんな人と会うんだから、少しは体型にも気を遣ってくれんかね。そんなだからミスも多いんだよ。まずは自分を戒めて自律的に生きることを心掛けたらどうかね。

 その度に孝彦のストレスは増加し、嫌な味の唾が口の中に広がった。

 そうだ。筋肉だ。筋肉があればこの苦境をも脱せるはず。

 そんな理由で、孝彦は運動を始めることにした。

 手始めに会社の近くのスポーツジムを見学しにいったが、トレーニングマシンに向かい黙々と体を動かす男たちに恐れをなして撤退した。ジム常連たちの輝く汗。汗に濡れて存在を誇示する大胸筋。背筋。上腕二頭筋。

 それに比べて自分の肉体のなんと鈍重で惨めなことか。俊彦は自分の弛んだ腹を見てため息をついた。

 振袖のように垂れ下がった二の腕の肉、呼吸を邪魔する二重顎。足首で段を描きつつある足にまで侵食した脂肪。カバの方がまだマシであるとさえ感じる下がった尻。この体をぶら下げて、惨めにトレーニングする気になれるわけもなかった。

 次に食事制限を試してみた。筋肉をつけるにしても、溜まった脂肪を先に落とした方が効率がいいだろう。できるだけ夕食を減らし、さて何キロ減ったかと期待して乗った体重計の針は、前回測った時からマイナス500グラムしか動かなかった。孝彦は愕然とし、途端に空腹が思考を満たした。空腹になると途端に弱気になる。また頭の中に新山の叱責が蘇り、気がつくと菓子とホットスナックでいっぱいのコンビニ袋を抱えていた。結局体重は2キロ増えた。

 そして、孝彦が選んだのは、近所の山の中を歩くことだった。車で20分ほど走ると、たどり着くハイキングコースのある山だ。空気もいい。傾斜があるから、筋トレと有酸素運動の二つを兼ねることもできるに違いない。オフシーズンなら人目を気にすることもない。

 孝彦はハイキングコースをのしのしと登り始めた。


 足が重い。膝が笑う。トレーニングウェアはすでに絞れるほど汗を吸っている。

 孝彦は口を開けてゼエゼエと喘いだ。

 登り始めてまだ15分。全身が限界を訴えていた。

 腹の脂肪が弾む。慣れない運動で、関節が悲鳴をあげていた。体が鉛になったように重く、足が地面から離れなかった、

 孝彦は持ってきた水筒の蓋を開け、スポーツドリンクを喉に流し込もうとした。ない。

 水筒はすでに空になっていた。

「クソッ」

 毒づいたら、急に眩暈がきた。

 たまらずコースの手すりにもたれると、木の軋む嫌な音がした。

「あっ」

 叫ぶ暇も与えられず、孝彦の体は崖下へと転落した。

 孝彦は幸運だった。

 崖は高くなく、しかも落ち葉とその下の分厚い腐葉土が彼の98キロの体を受け止めた。

 水揚げされるマグロのように斜面を孝彦は滑り、ごろごろ転がって止まった。

「うう……」

 俊彦は体に落ち葉と苔と何かわからない足の多い虫を貼り付けて起き上がる。

 耳がとらえたのは、せせらぎの音だった。

「水だ」

 孝彦が転がり落ちたところに、岩から染み出すように湧き出る水の流れがあった。

 岩に走った亀裂から、透明な水が清涼な音を立てて流れている。岩の周りには羊歯と深緑の苔が群生し、まるでこの湧水を照らすように樹上から陽の光が入ってきていた。

 あと少し転がっていたら、岩で頭を打っただろう。本当に運が良かった。

 孝彦は落ちていた木の枝を支えに立ち上がった。

 彼は気が付かなかった。

 その枝が妙に丈夫で、妙に形が整っていて、よくよく観察すれば表面に「孝榮上人」と刻まれていることに。

 孝彦は両手で水を受けた。

 水は透明で、不純物は見当たらなかった。

 多少汚れていたところで、孝彦は飲んだだろう。

 思考するための水分はもうなかった。

 両手で受けた水を飲む。

 驚くほど冷たい自然の水が、口腔を冷やし、食道を通り、胃へと落ちて行く。

 何度も何度も飲んだ。

 細胞に水分が行き届く。

 知らずに涙が出てきた。好物の炭酸飲料の数倍美味い。孝彦は喉を鳴らして飲み続けた。

 最後にその水で顔を洗い、孝彦は立ち上がった。

 あれほど怠かった膝の痛みがない。

 落ちる時に打っただろう体の痛みもない。

 足が自然に前に出た。

 一歩踏み出すと、体が動いた。

 歩くというよりも駆け足に近い。

 木の根を越え、ぬかるみを飛び越え、朽ちて倒れた古木を踏み越えて、ほんの5分ほどでハイキングコースに戻ってこれた。この山は初めてだったはずなのに。孝彦は困惑しながらも、妙に冴え冴えした思考に満足してもいた。


 その日は、心地よい疲労感の中で眠りについた。

 こんな感覚は久々だった。いつも頭の中で再生される新山の嫌味も今日はなかった。


 孝彦は木立の間にいた。

 意識は明瞭で、理由のわからない高揚感さえあった。坐禅を組んだ足に当たる苔の冷たさ、頰に当たる風の感触までもがつぶさに感じられた。

 遠くの木々の葉が擦れ合う音を耳は捉え、稜線を越えた向こうの森で、狐の子どもが戯れあい、転がり回るたびに撒き散らす土が地面に落ちる音さえも聞こえていた。

 閉じた瞼の裏では、後光を放つ御仏のお姿が見えた。極彩色の曼荼羅が、孝彦を呼んでいた。

「お上人様、喉が渇いておらんじゃろか」

 無邪気な子どもの声だった。

 村に1人しかいない僧の身を案じる、幼子の発した一言だった。彼女は遠くからそっと孝彦を見て、去っていった。

 しかしそれにより、瞼の裏の御仏はかき消えた。

 鮮やかな曼荼羅は消え、千里先さえ見通すかのように覚醒した感覚が重く鈍く沈んでいった。喉の渇きが自覚される。どこかで水の沸く音がする。

 数日が経った。

「喉が渇いておらんじゃろうか」

 耳元に息がかかった。

 胡座をかく孝彦の膝に、人の重みが乗った。

「喉が渇いておらんじゃろうか」

 頰に冷たい手が触れる。感触が変わり、鱗を持った細い何かが体を這う。

「喉が渇いておらんじゃろうか」

 自分に体があることが急に自覚される。胃が悲鳴をあげ、捻れるように痛んだ。食道が燃えるように熱い。喉が渇いているのだ。頭も熱い。水が足りないのだ。孝彦は瞼に力を込めた。聞いてはいけない。

 これは、悪鬼の仕業だ。

「これは悟りではない。其方は死にかけておるだけじゃ」

 蛇が、耳元で囁いた。

 孝彦の意志を振り払って、体が勝手に胡座を解いた。狼に追われる兎より早く、体は四つん這いで、岩から滲み出る清水へと向かう。

「覚悟がないから、そのように水場に近いところで修行をしておる」

 梢の上にぶら下がった蛇が、孝彦をせせら笑った。

 水を飲むことをやめられなかった。

 孝彦は咽び泣きながら、体の求めるままに水を飲み続けた。


 はっと孝彦は目を開けた。

 こんなに鮮やかに夢を見たことは今までなかった。

 夢の中で孝彦は修行僧で、山中で修行に明け暮れていた。だが、悪鬼の甘言に惑わされ、仏になる道を閉ざされた。孝彦は目覚めてから少し泣いた。僧侶の悔しさが、痛みがまだ体に残っていた。

 いつもの起床時間よりも早かったが、気分は冴えていた。眠気はない。

 孝彦は冷蔵庫を開け、ミネラルウォーターを飲んだ。次にコンビニで買って冷蔵庫に入れておいた焼き肉弁当をレンジで温めた。温められた焼肉のタレの食欲をそそる香りが立ち上る——はずだった。

 孝彦は小さく悲鳴をあげ、レンジの扉を開けると弁当を箱ごとゴミ箱に放り込んだ。

 それは孝彦の意志というより、反射のように意識なく行われた。孝彦はゴミ箱の中でぶちまけられた白米と脂身の多いカルビと、もやしのナムルに目を向けた。美味そうだという感覚と、禁忌を犯す恐れが胸の中に渦巻いている。

 ——野菜を食おう。

 孝彦はごく自然にそう思った。

 冷蔵庫には、萎びかけたキャベツがあった。

 それをちぎって、孝彦は口に運んだ。ドレッシングなしで野菜を食うなど初めてだった。

 美味いと思った。キャベツが持っている生命力とでもいうものが、自分へと受け継がれることに感謝し、孝彦は両手を合わせた。

 口から、経が溢れ出す。止められなかった。聞いた響きのない、どこか異国めいた音の連なりに意識が沈んでいく。


 おん あぼきゃー べーろしゃのー まかぼだら……


 研ぎ澄まされていく感覚の端で、孝彦は理解した。孝彦が夢で見た僧侶の霊が、今自分に憑いているのだ。そして、修行の成就を望んでいる。


 読経が終わると、孝彦の体の自由は戻ってきた。

 すぐにスマホで「僧侶 修行」と検索すると、肉を食わないことや断食、山中を歩くことでの修行などがヒットした。あのお経は、どうやら密教のもののようだった。

 成し遂げてやろう。何が終わりなのかはわからないが、自分に憑依しているらしい僧の願望を叶えてやろう。

「協力するよ」

 孝彦は姿は見えない同居人に向けて言った。


 その日から変わり始めた孝彦を、周囲の人間は驚きの目で見た。彼は毎日弁当を持ってくるようになり、その中身に肉はなく、野菜ばかりだった。米と、麦と、少量のナッツ類である。

 いつもどこか不安そうに、それ以上に不機嫌そうだった顔からは陰気な様子が消え去り、新山が過去の失敗を蒸し返しても穏やかな顔をしていた。愚痴を言う回数が減り、人当たりも良くなった。

 自分の仕事が終わると、人の仕事を手伝う。「徳を積むのが大事だから」などと冗談を言ってわらっている。

 鈍重だった動きは軽やかになり、それに応じて仕事のスピードも上がった。過去に彼を嫌悪していた女子社員たちも、徐々に孝彦と会話を始めた。

「服部さんって、あんなだっけ?」

 揃って首を傾げた。

「前は話しかけると、下心丸出しだったのに、今はなんか、性欲とか全然ないみたい」

 孝彦のズボンのウエストはみるみる細くなった。

 分厚い脂肪が消え、その下に隠されていた筋肉が顔を覗かせていた。

 苦になることは何もなかった。食事の時には孝彦の意識は消え、気がつくと空腹が満たされている。

 そのうちに空腹さえ感じなくなった。

 孝彦は充実感を感じていた。

 全てがうまく回り出していた。

 会社が終わるとあの山に行き、山中を駆け回る。

 蓮華座を組んで木の根元に座り、読経をする。

 肉体を離れた意識が、御仏のもとに近づくのを感じ、彼の中にいる僧侶が、孝彦に感謝するのがわかった。

 日々の過酷な運動で、彼の体は確実に変わりつつあった。やはり筋肉は全てを解決する。体が絞られると、精神に余裕がもたらされるのだ。孝彦は実感していた。

 ある日、孝彦は新山に呼び出された。

 普段は使うことのない資料室で、新山と孝彦は向かい合って座った。

「服部くん、大丈夫か?」

 新山は本気で心配しているようだった。

「急に痩せただろう。病気か何かを隠しているんじゃないか?もし、私が言ったことを気に病んでいるのなら、正直に言ってほしい」

 そして新山は机に手をつき、詫びた。

「君に辛くあたってしまったことを謝らせてくれ。外見についてあげつらったのは問題だった。上に報告してくれても構わない。反省しているよ」

「違うんですよ。係長」

 孝彦は穏やかに遮った。

「僕は自分の意思で変わったんです。これは僕が選んだことです。顔を上げてください」

 新山は顔を上げ、安心したように息をついた。

「そうか。いや、君の変わりように取引先も驚いているよ。それに最近の働きっぷりもいい。このことは上にも伝えておく」

 新山は立ち去りぎわにポンと孝彦の肩を叩いた。

「あまり根を詰めるのはよくないぞ。痩せるのはいいが、体を壊すようなことはするなよ」


 暫くして、孝彦のメニューはまた変わった。

 食事から穀物が消えた。しばらくするとナッツなどの木の実が消えた。

 自然とそう選択していた。その頃になると孝彦の意思と僧侶の意思は混ざり合い、区別がつかない時間が増えていた。

 食事を減らしても、少しも空腹を感じなかった。

 周りは「やせすぎじゃない?」と心配していたが、孝彦は元気に働いており、実績も伸ばしている。

 何より本人が「平気です」と穏やかに微笑むので、納得していた。


 季節が変わっていた。

 木枯らしの吹く中、孝彦は今日も山中を走っていた。ぐるりと山を回り、足を止める。

 先日の大風で、木が倒れていた。根本から朽ちて折れたせいで、その木があったところには掘り起こされたような穴が開いていた。

 元から地面が陥没していたのだ。そこに無理に根を張った木が、老いて自重を支えられなくなり倒れたのである。

 木が土に変わる、むわりとした濃密な空気が竪穴から立ち上る。


 翌日、孝彦は会社に有給の申請書を出した。

「実家の母が病気で、様子を見に行きたいんです。入院になるかもしれないので、看病と手続きで暫くまとまった休みを頂けたらと思います」

 有給届は受理された。同僚たちは心配までしてくれた。

 孝彦はホームセンターへ行き、大きなスコップを買った。それから2リットルの飲料水を数箱。丈夫な麻の袋、ロープ。登山コーナーにも立ち寄り、熊よけの大きな鈴を買った。最後に、雑貨のコーナーに積まれていた数珠を手に取った。

 すべてを車のトランクに詰めて、山へと向かう。

 山の入り口から少し離れたところに車を停め、朝を待った。東の空が白み始める。雲間から差し込む光は極楽のような美しさで、孝彦は手を合わせて読経した。

 夜明けと共に買ってきたものを登山リュックに詰めて運んだ。水は数回に分けて運び、すべてを準備し終わる頃には、日は高く登っていた。

 倒れた木の根本に、シャベルを差し込んだ。

 縦穴が広がり、湿った黒い土がパラパラと落下していく。そこまで深さはない。2メートルくらいだろうか。

 孝彦は無心に掘り続けた。僧侶としての自分と現実の自分の境目が消える心地よい酩酊感に身を任せ、シャベルを突き立てる。

 穴の入り口が広くなる。

 孝彦はロープを手に取ると、近くにある根がしっかり張った丈夫そうな木に括り付けた。ローブの反対側に麻袋に入れたミネラルウォーターのペットボトルを括り、ゆっくりと穴の底に下ろす。底についたら、ロープを切る。これを繰り返して、すべての水を穴の底に運び入れた。

 暗く木の葉の匂いがする穴の底で、御仏が微笑んでおられる。

 最後に孝彦は、木に結えた最後のローブの反対側を腰に巻きつけ、ゆっくりと穴の中に降りていった。

 足をかけるところもない、土の壁は脆く、軽く足が触れると崩れてしまう。

 顔にかかった土が目に入り、孝彦は目を擦った。痛い。孝彦は我に返った。

 怖気が全身を突き抜けた。

「わあっ!あぁぁ!」

 声を出す。これは僕の声だ。この体は僕のものだ。

 それなのに、足は土壁を軽く蹴り、穴の中へと向かおうとしていた。

「衆生救済。ようやく成就の時が来た」

 孝彦の口を借りて、僧侶が言った。

 体は止まらない。下は下へと降りていく。

「いやだ!いやだ!」

 穴の奥に置かれた水。

 そして這い上がれない縦穴。

 何を意味するかは、わかっていた。

 体の自由が効かない。

 それでも孝彦は震える手で、ポケットの中のスマホを手にした。指が滑って、音声アシストが起動する。

「ようやく仏となるのだ」

 ポーンという電子音の後、女性の電子音声が礼儀正しく告げる。

『即身仏とは、主に日本の仏教に見られる僧侶のミイラのことです』

「わあああっ!」

 汗でぬるつく手から、スマホが落ちた。点灯したままの画面が、穴の底で光っている。

『即身仏とは……』

 女の声が、それだけを伝え続ける。

 足が地面の底についた。

 孝彦は泣き喚きながら、土壁に縋りついた。

 まだロープがある。上に戻れる。ゆっくり足をかければ大丈夫。大丈夫大丈夫。

 だが、体は先に地面に落としていたナイフを拾い上げ、ロープにあてがった。

 ギチ、ギチ、ギチ、

 縄が繊維になって解けていく。

 それはまさに孝彦の生命線だった。

「やめろやめろやめろやめろ!!!!」

 動くのは口だけだった。

 呆気なく、ロープは切断された。

「やれ、うれしや」

 体が、慣れ親しんだ蓮華座を取る。

 カラン、と音がした。

 ポケットから出てきたのは熊よけの鈴だった。

 孝彦はそれを片手に下げ、一度鳴らした。

 命尽きるまで、日に一度鳴らさねばならない。

「おん あぼきゃー べーろしゃのー まかぼだら まに はんどま じんばら はらはりたや うん」

 孝彦の顔は、焦りと怒りと、裏切りと絶望が混ざり合って歪んでいたが、唇から紡がれる声は、波のない水面のようだった。平坦で、静かで、満ち足りていた。

「やめてくれ……死にたくない……」

「おん あぼきゃー べーろしゃのー まかぼだら まに はんどま じんばら はらはりたや うん」

「助けてくれ……」

「おん あぼきゃー べーろしゃのー まかぼだら まに はんどま じんばら はらはりたや うん」

 手が、合わせられる。指先が合わないほどに震えていた手が、やがて完璧な合唱の形を取る。数珠が微かに鳴った。

「神さま……」

 孝彦は薄れていく意識の中で、神様などいないと呟き直した。自分は今から仏になるのだ。

 瞼が落ちる。瞼の裏に御仏がいたのか、孝彦にはわからなかった。


 おん あぼきゃー べーろしゃのー まかぼだら まに はんどま じんばら はらはりたや うん


 おん あぼきゃー べーろしゃのー まかぼだら まに はんどま じんばら はらはりたや うん


『即身仏とは、主に日本の仏教に見られる僧侶やミイラのことです。衆生救済のため、僧侶は十穀を断ち、自ら深い穴の中で死を待ちます』


 おん あぼきゃー べーろしゃのー まかぼだら まに はんどま じんばら……








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筋肉をつけたかっただけなのに いぬきつねこ @tunekoinuki

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