包み

 文学と感染症は、隠微な関係を保ってきた。または、腐れ縁を抱えてきた。

 本作は現代でなければなしえない快挙であると同時に、有史以来連綿と続く既述の『伝統』の血脈をたたえるものである。

 世間をどこか斜に眺める主人公の、皮肉っぽい観察眼と聴覚が新型ウイルスの突起をつい連想させてしまう。

 必読本作。