あとがき

 今回はEmotion - A rational animalをお読みくださり、ありがとうございました。本作は「感情」をテーマにしたミステリー掌編小説として、読者の皆様に僭越せんえつながら執筆者である僕から謎をお届けいたしましたが、お楽しみいただけましたでしょうか...?


 あとがきとして、答え合わせをさせてください。


 人間はそれぞれ、色々な感情を持っています。時と場合によって、嬉しかったり、悲しかったり、驚いたり、辛かったり、憎かったり、羨ましかったり、とにかく色々です。


 ──でも、その感情の種類が何であれ、多くは人間という動物の本能的な欲望に基づいていると思いませんか...?例えば、物欲がなければ何かを手に入れた時に喜んだり、他者に対して嫉妬したりはしないでしょうし、生存欲がなければ何かに喜びを見出したり、生に執着したりもしないでしょう。


 結局のところ、動物の欲望と感情は表裏一体だと思います。そこで理性のある人間は、社会という群れを形成して生活するに当たって「我慢」によって他者との欲望の競合を調整して、互いが安心して暮らせるように法律というルールを決めたんですね。「我慢」は、社会で爪弾き者として扱われないようにするための1つのツールなんです。


 でも、我慢は過程のみでは意味がないですよね。己の欲望に耐えている人を見て「あ、この人偉いなぁ」とはならないように、我慢は結果として現れたときに初めて成立する概念です。どんなに恨めしい人間がいても、絶対に手を上げてはいけない。どんなに欲しいものがあっても、他人の物に手を出してはいけない。この世のルールに則って我慢を成立させて、初めて人は人でいられるのです。


 ですが、この物語の主人公には相当憎い人間が居たのでしょう。彼、もしくは彼女は同じ社会という群れのメンバーである他者を衝動的にその毒牙に掛けてしまいました。でも、その瞬間はどうやら誰にも見られていなかったようです。我慢は過程ではなく結果。つまり結果を用意すれば己はまだ理性的な人間として社会に復帰できると思い込んだ主人公は、咄嗟に隠蔽工作を図ろうとします。


 もっとも、場当たり的な誤魔化しが効くほど社会の目は優しくありません。最後の一文は、最終的にその光景を誰かに目撃されていたのか、後日に警察がやってきたのかはご想像にお任せしますが、と呼ばれた人物はさぞ化物を見るような目で主人公を睨んでいたことでしょう...。


 答え合わせと言っておきながら、分かりずらい駄文乱文で申し訳ございません。本編よりもあとがきの方が長いってどういうことだと思われるかもしれませんが、どうかご容赦ください。

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Emotion yokamite @Phantasmagoria01

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