Emotion
yokamite
A rational animal
人間は他の動物とは違って、理性による「我慢」という特技がある。
自身の内なる欲求を封じ込めて笑顔を浮かべていてさえいれば、社会という名の群れとの
だが同時に、我慢には限界が存在している。人によって我慢の発動には上限回数が設定されていて、これを越えて我慢をしようものなら、いつか身を滅ぼすことになる。
だから人間は時に自制心をかなぐり捨てて我慢をやめる。毎日のように社会の風習に従って学校や会社に行くのに嫌気が差して惰眠を貪ったり、健康状態の悪化や体重の増加を恐れずに食欲を満たしたり、性欲の赴くままに衝動的な強姦を犯したりなど、遍く動物に備わった本能のままに行動するのだ。その代償がどのようなものであろうと。激しい憎悪を植え付けられた者はその仇を兆倍にして報いようと、耐え難いほどの苛烈な責め苦に喘ぐ者は自らの命を絶とうとする。
それだけではない。人間は我慢をし過ぎると、そのうち見たいものだけを見て、聞きたいものだけを聞いて、知りたいものだけを知って、信じたいものだけを信じる、身勝手で利己的なモンスターへと変貌するのだ。我慢という人間のみに与えられた稀有な特技は、実は諸刃の剣である。
だからこそ、人間の欲望を対象にしたビジネスが生まれるし、欲望に塗れた人間による事件事故や犯罪が後を絶たないのだ。我慢とは、存外に不便なものなのかもしれない。
だが、この感情は是が非でも隠し通さなければならない。表に出てしまった、私の感情が発露した結果だけは、人目に触れてはいけない。私は、自分の足元に転がったそれをずるずると引き
これで私は、世間の目から見れば、感情をうまく制御して「我慢」することができたということになる。そうだ。我慢とは過程ではなく、結果なのだ。結果さえ作り出すことができれば、私は強固な
だから、お前の目には、さぞかし
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