死に方用意それには及ばぬ、戰場を生きた女達─私達が一番戦争を知っている

腰に下げた自決用の手榴弾、青酸カリ
招集令状

死に方用意───
私はこの手で二人殺している

最年長二十二歳……

これは、兵士の話ではない

戦場に赴き、
兵士とともに銃弾の中を駆け抜けた
赤十字看護婦の話である

戦時招集を受け戦地に赴き、多くの屍を越え
数え切れない同僚の死を見送って
それでも生き残った……
ある赤十字看護婦の回想録に
その孫とともに耳を傾ける物語です


───圧倒的筆致による、激しき時代の描写の間に垣間見える
儚く、ささやかな一瞬の心の交錯を描き切る
これは……本当に、「無料で読んでいいものなのか」
と戦かずにはいられない
戦時における、異常と正常の同居に見る心情は
もはや善悪という概念では語れない
芸術の持つ魔性までをも感じさせております
長らく、カクヨムでの不動の最高作品が私の中に
重石として存在しておりましたが、
この作品は、その重石を押しのけた感覚がありました───


……激しき時代を駆け抜け
己を捨て、国のために身を捧げた
そこに女も男も無く
ただ、必死に生き抜いた

古い記憶の中に
聞こえてくる
声と面影

彼女の愛の全ては、
彼の自転車の後ろで……短い時の中に刻まれていました

胸には赤十字のブローチ
これが……わたしです

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