『十二の月虹』 創作ノート

『十二の月虹』を書いていた時の構想ノート。

 いくつかは紛失したが、残っているものについてまとめた。



■十二の月虹

紫→菫→青→碧→翠→緑→黄緑→黄→燈→朱→赤

英語の方がいいか。


紫外→赤外(可視光ではないからプロローグ、エピローグとして使えるか)


Red→Cyan

Orange→Blue

Amber→Indigo

Yellow→Violet

(註・補色関係にある色の作品を関係付けようとして考えていた。結局やめたが。また、IndigoやAmberなど、最終的には使わなかった色の候補がここには含まれている)


桜花一片に願いを ――Inflared 4月

きみに会うための440円 ――Red 5月

字句の海に沈む ――Vermilion 6月

夏思いが咲く ――Orange 7月

一夜のキリトリセン ――Yellow 8月

夕紅とレモン味 ――Lime 9月

愁いを知らぬ鳥のうた ――Green 10月

記憶を踏みつけて愛に近づく ――Cyan 11月

微笑みを数える日 ――Blue 12月

その涙さえ命の色 ――Navy 1月

きみの嘘、僕の恋心 ――Violet 2月

桜花は一片の約束 ――Ultraviolet 3月


月虹(げっこう、 moonbow)

夜間に月の光により生じる虹。


 青→丹(井の中からとる染料)と生(生える)



●常に440円足りない駅の話



■字句の海に沈む


 川を文字が流れていく。


 Orangeをどうする?


  Amberにするか?


 琥珀。

 中国では虎が死んで石になったものが琥珀だとされていた。

 小説家が死んで石になる?


 エーレクトロン(ギリシャ)→太陽の輝き

 Bernstein→燃える石



 Vermilion(朱色・硫化水銀 銀朱)



■夏思いが咲く


 夏思いとはなにか。


 たぶん花火。

 青春モノにするなら比較的楽。しかし、シリーズ的にそれは難しい。


 オレンジ=炎色とするなら、色の問題は解決。Orange


 比喩表現のタイトルは直球にした方が変になる。

 思いが咲く?


 花火が木に咲く? ロウソクの火とか。


「咲」→「笑」の古字。

 巫女が両手を挙げて体をくねらせて踊る様子。神を楽しませて笑う。


 夏思いが咲く→夏思いが笑う



■愁いを知らぬ鳥のうた


 夜の森


 真っ暗な森を歩く。やがて丘になる。山火事が一面に広がる。火の海。

 灰が空を舞う。やがて湖に落ちる。深水。真っ暗。


 闇の中で手を伸ばす。 一人称視点移動


 一人称から三人称、三人称から一人称 視点移動の混在

 視点人物からカラスへ、カラスから視点人物への視点移動


 書くことがないものをあえて書く


 OPETH 森林

 Riverside 川


 OPETH的描写? 音楽的文章は可能か?


アイザック・アシモフ『黒後家蜘蛛の会』「静かな場所」

 森の丘で静けさを味わう話。 



■記憶を踏みつけて愛に近づく WS


 青写真(サイアノタイプ)


 日光写真 鉄塩の化学反応を利用した写真、複写技術


 1839年  写真が発明される

 1842年  サイアノタイプが発明される

 1950年代 複写機の発達に伴い廃れる


 現在は実用的には使われない。芸術的表現としてや、科学教材など。


 ブループリントの語源



 記 言+己は音符


 しるす。かきとめる。

 かきつけたもの。ふみ。しるし。

 おぼえる。こころにとどめる。


 憶 こころ 意は音符


 おぼえる。忘れない。おもう。おもいだす。おしはかる。


 記憶


 経験したことや覚えたことを忘れずにいること。また、その内容。


 愛


 かわいがる。いつくしむ。

 このむ。したしむ。

 大切にする。

 かなしい。いとしい。切ないほどかわいい。


 バタイユ『エロティシズム』


 孤独を超えてつながろうとする欲望

 禁止を不安のなかで侵犯する欲望


 愛とは死まで続く高揚

 エロスの向かう先は「死」

 死におけるまで生を称えること

 



 記憶を「失くす」のではなく「踏みつける」のだから、経験上、ヤバイとわかっていながらあえてやるとか、そういう方向で考えるのもあり。




 記憶を踏みつけるとはどういうことか。


 経験に反したことをする。

 記憶装置を踏みつける。


 踏みつけたところで、記憶は消えないし変わらない?

 記憶は曖昧なもので、思い出す度に変わるというのが奥泉流ではある。

 事実と記憶は異なる。記憶はあくまで主観的なもの。


 愛に近づくために記憶を踏みつけるのか。

 記憶を踏みつけた結果、愛に近づくのか。


 記憶が愛おしいからこそ「踏みつける」という手もある。

「禁止を不安のなかで侵犯する欲望」=「踏みつける」


 何への愛なのか? 



■その涙さえ命の色


 人魚の話になりそう。

 人魚を避けることはできないか? 無理ならそっち方面で考える。


「命」は生命以外の意味で使えないだろうか?


「命」→口+令

  令はいいつけのこと。


 律令の「律」は刑法。「令」はそれ以外。

「律」はやってはいけないこと、それを破った場合の罰について。

「令」はやるべきこと。


 1.言いつける。元々の語源。

 2.名付ける

 3.名簿、戸籍

 4.いのち

 5.天の定め

 6.的

 7.神の尊称。なんとかの「みこと」


「命」の意味を考えると、いろいろ変化球は打てそう。



■きみの嘘、僕の恋心 ――Violet WS


「嘘」

1.ふく。はく。ながく息を吐き出す。

2.なげく。すすり泣く。

3.うそ。


中国語の「嘘」にうそという意味はない。


嘘寒問暖 他者の生活にいろいろ気を配る


「恋」は「強く心を惹かれること」であり、その対象に制限はない。必ずしも異性間恋愛をテーマにする必要はない。



Violet - すみれ

 多年草 開花期3~5月

 春をおしえる花 春の季語

 花や茎は茶にされることもある。根や種には毒がある。


漢字の「菫」にはトリカブトの意味もある。


ゲーテの「すみれ」 "Das Veilchen"

 すみれは羊飼いの少女に摘まれることを望むが、気付いてもらえずに踏まれる。


 モーツァルトは無名の詩や高尚でない物語に曲を付けるのを好んだ。それなのにゲーテの「すみれ」に曲を付けたのは謎とされている。

 ゲーテの詩と知らずに曲を付けたともいわれるが、自筆譜には「ゲーテの詩による」と書かれているらしい。


バラ(美) ユリ(威厳) スミレ(誠実と謙虚)

 西欧において女性に求められるもの


菫程な小さき人に生れたし 夏目漱石

「文鳥」でも使われているフレーズ

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劇場喫茶店(掌編・短編集) 涼格朱銀 @ryokaku

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