光を求めて

少女ルクスースはある異能、あるいは呪いを生まれ持っていた。それは精神感応能力。これは自らの情念を言葉も仕草も介さず、他者に伝えることのできる能力だった。それは人々の目に神秘と映った。誰もルクスースの言葉を疑わず、むしろ天啓とばかりに盲信する。ゆえにその能力はときの権力者に利用され、ルクスースは呵責の念に苛まれる日々が続いていた。そんなある日、彼女に転機が訪れる。自らの能力と、その生の真意に向き合うときが。

丹念に選び抜かれた語彙と、一種の美を体現した表現が織りなす儚くも希望に満ち溢れたファンタジー。読み応え抜群の一作でした。昨今、隆盛をみせるファンタジー作品とは対極にある作風ですが、それにしても過小評価されていると感じました。名作スコッパーの方々には、是非とも掘り起こしてほしい作品です。卓越した地の文もさることながら、本作の強みはなんといっても物語。その展開と終着点には唸らされました。

さして珍しい物語ではないのです。なのに「この作品だからこそ読んでよかった」と読後に思わされるのです。同じ材料で料理しても人によって出来上がる物が違うように、同じ物語でも作者によって大きく化けるのかもしれません。とりわけ本作は凄まじかったです。巧緻な文章、そして深い余韻のある物語を味わいたい方は是非とも読んでみてください。