閑話 ホムンクルスの見る夢は

白い景色の中、私の奥深くに何かが入ってくる。


くるしい。だめだ。むり。たすけて。

脳裏に、今まで弾けていった空っぽな私の姿が浮かぶ。

やだ、やだ。

また理不尽に殺されるの?

いやだ。

どうして私ばかりがこんな目に!

死にたくない。

だれか。 

たすけてよ――。


――――ん。


遥か遠く。

懐かしい場所に繋がる感覚。

不意に見えた、見知らぬ世界の景色。

そして次々と景色が飛ぶ。

飛ぶ。飛ぶ。飛ぶ。

最後に飛んだのは建物の中。

そこには、黒髪黒目の若い男の人がいた。

それは良く知っている人だった。

優しくて、冷静で、熱い意思を秘めた人。

世界で一番好きな人。

向こうに、置いてきた人。

その人が見た事がない冷たい表情で、刃物を持っている。

その顔は誰に向けているの?

もう一人いる? 床に倒れている。

金髪の男。

誰?

っ!?


こいつ! こいつ! こいつはっ!!

忘れるか! 

忘れるものかっ! 

私を恥ずかしめて殺したこいつをっ!

汚く笑いながら私を殺したこの男を!

忘れるものか!

殺して!

殺して!

殺して!

苦しめて苦しめて、地獄の苦しみを与えて殺して!!


お願い、お兄ちゃん!


強く強く願う。

私と想いを同じとしてくれと。

そして願いは通じる。

お兄ちゃんは、私を殺した屑を、これでもかと苦しめて殺してくれた。

屑の悲鳴が私の心を癒していく。

ありがとう。復讐してくれて。

そしてごめんね。

私のために人生を捨てさせて。

ああ、私はもう何もしてあげられない。

こんな私では。

本当にそう?

今なら、繋がっている? 

どうして理解できるの? 魂の情報閲覧?

豊穣の? これをお兄ちゃんに移して。

座標はどうすれば。

え? どうして向こうの世界に魔道具が? 

どうでもいいわ。好都合。

これで、こっちに引っ張れる。

時間と場所はズレるかもしれないけど……。

お兄ちゃんならだいじょうぶだよね! 

もう一度、姿を見ることが出来て良かった。

その力で自由に生きて。


さよなら。






ああ、お爺さん達は私の手で処理しておくね。


私を理不尽に殺そうとする奴は二度と許さない。

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創力使い ~相手に何もさせずに蹂躙したい~ 無印凡人 @nisin

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