ふたぼく 2巻発売記念SS お見舞い②
----------------------------------------------------
作者まえがき
お久しぶりです、二巻にあたり、4つほどSSを書いたのですが、その流れでもう一つ書けたので、せっかくということで投稿させていただきます!
----------------------------------------------------
「あれ? 今日は千夏はお休み?」
「風邪みたいだね、メッセージ来てた…………ちなみにさ、少ーしだけ気になってるんだけど、佐藤くんもお休みなんだよねぇ」
「この間は、佐藤さんが体調を崩したということで、千夏さんが看病に行かれていましたね」
「「それね」」
そして、そういえばと呟いた
「まぁ? 恋人同士だし、あれだけ仲もいいわけだし?」
「そりゃ感染るような看病をすることもあるわけで?」
「ありそう……というかあまり掘るとこっちが恥ずかしくなるのよね」
「なになに何の話?」
早紀と優子がお互いに想像を膨らませているところに、更に女子たちが何人か会話に加わり、最近では夫婦感を隠すこと無く出しているカップルについて盛り上がるのだった。
そして、当の二人はどうしているのかというと――――。
◇◆
「千夏、大丈夫?」
「うん……こないだの逆になっちゃったね、ごめん」
僕の声に、布団に潜って、顔だけを半分出している千夏が弱々しくそう返事をする。
高熱が出て、頭痛がするという千夏からの連絡と、今日はどうしても仕事が休めないため、可能なら放課後にでも様子を見て欲しいという涼夏さんからの連絡を受けて、僕は即座に学校に休む連絡を入れて来ていた。
こういう時に、普段から真面目にしていると得だと思う。
まぁ、損でも得でも関係なく休んで来てしまう自覚はあったのだけれど。
僕が高校に入って以来初めて熱を出したのを、早退して千夏が看病に来てくれて、藤堂さん達には生温かい目で、そして男子達には物凄く羨ましそうな態度で接されたのは記憶に新しかった。
「ハジメの手、ひんやり気持ちいい」
「ふふ、冷たいタオルを用意してきたからね」
「……タオルじゃなくてこっちがいい」
額にタオルを置いたら、僕の手を抱き込むようにして千夏がそんなことを言う。
普段も甘えてくれるところはどうしようもなく心に来るのだけれど、いつまで経ってもドキドキするのは変わらなかった。
「そばにいるから、薬も飲んだし少し寝ちゃいな」
「うん……ありがとう、へへ、だいすき」
そう言うと、千夏は目をつぶって、少しもぞもぞと体勢を整えた後ですぐに寝息を立て始める。
元々寝付きも良い方だけれど、薬の影響もあって今日はいつもより更に早かった。
腕を掴まれているままなので物理的に離れられないけれど、片手は空いているので、少しスマホで本でも読んでいようと思いつつ、僕はついつい千夏の寝姿を眺めてしまう。
(
クラスメイト達にも恋人同士であることを公にして、あんな美人な彼女ができて羨ましいとは本当によく言われていた。
そして、そのたびに返答に困ったりもする。
贔屓目なしに見ることはもはやできない僕だけど、千夏は本当に魅力的で。
だから、否定もできないし、羨ましいといわれてそうでしょうとも言えず、かといって一度僕なんかには勿体ないくらいだと言ったら千夏にはまた「僕なんか」病が出てると少しだけ怒られた。
そして、その怒ってくれた気持ちというものも分かるものだから、堂々と、でも曖昧に笑うくらいしか返答のパターンが思いつかない。
でも、勿体ないくらい、という気持ちは心からのもので。
「んん……」
「よいしょ、と」
少しだけ寝息とともにずれたタオルを直しながら、顔色は悪くない事にホッとして。そして、そんな時でもついつい千夏に見とれてしまう自分にクスリと笑いが出る。
寝ていても起きていても、見惚れてしまう相手が恋人な僕は本当に幸運な男で。二人でいる部屋の中では、最愛の彼女の寝息と、僕の少し早めの鼓動くらいしか聞こえてくる音はなくて。
体調は早く良くなってほしいけれど、こんな風に穏やかに過ごす平日があってもいいなと、そんなことを思ったのだった。
----------------------------------------------------
作者あとがき
二巻発売開始されましたので、告知させていただきます。
電子専売という形になりましたが、無事お届けできてよかったと思っております。応援してくださる皆様のおかげですね、ありがとうございます。という事で良ければ買ってください(ダイマ)
ミュシャさんの書影がまたまた最高なので近況ノートに貼ってあります、これだけでも♪
https://kakuyomu.jp/users/403164/news/16818093075560247378
ファンタジア文庫様公式
https://fantasiabunko.jp/product/202310nibanme/322402001910.html
----------------------------------------------------
後日談と、後少し繋がったスピンオフも良ければよろしくお願いします!
後日談
https://kakuyomu.jp/works/16817330655053093000
スピンオフ
https://kakuyomu.jp/works/16818093074102705705
二番目な僕と一番の彼女【書籍版二巻、5月17日発売です】 和尚 @403164
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます