地元の都市伝説を試してみたら大変なことになった件

大隅 スミヲ

地元の都市伝説を試してみたら大変なことになった件

 それは白馬に乗ってやって来た。


「話が違うじゃねーかよ!」

 ものすごい剣幕で喚き散らしたのはタクヤだった。

「てめえ、ユウスケどうなってんだ、これ」

 タクヤは、ぼくの胸ぐらを掴み上げる。

「そんなことより、逃げた方が良くない?」

 美園の言葉に、ぼくらは一斉に走り出した。


 タクヤ、美園、そしてぼくの3人は幼なじみだった。

 子どもの頃から施設で育ち、中学まで一緒だった。

 ぼくはタクヤに、いじめられ続けてきた。施設が一緒であるため、24時間365日いじめられる状態だった。そんなぼくのことを美園は気まぐれに助けてくれたりした。しかし、それは本当にきまぐれであり、時には美園もぼくのことをいじめてきた。

 高校生になった時、ぼくは施設を出た。ふたりとは二度と会わないだろうと思っていた。

 でも、それは違った。ふたりはぼくのことを調べたらしく、帰り道を待ち伏せしていた。

 その日から、彼らによるいじめが再開した。


 肝試しがしたい。タクヤが言い出したことだった。

 この地域には、落ち武者伝説というものがあった。

 近くに山城やまじろ跡があるのだが、そこへ夜中に行くと出るのだそうだ。

 それをタクヤに教えると、すぐに乗ってきた。もちろん、美園も一緒だ。

 ぼくはそこでふたりを殺す計画を立てた。

 途中にある橋でふたりを突き落とそうと考えたのだ。


 鬱蒼うっそうとした雑木林の中に石碑があった。

 この石碑の前で「落ち武者狩りが来たぞ」と唱えると、落ち武者の亡霊たちが出てくるというのが都市伝説だった。


「ほら、やれよ」

「ユウスケ、がんばれ」

 ふざけた口調のふたり。


「落ち武者狩りが来たぞっ!」

 ぼくは大声で叫んだ。


 落ち武者というと、足軽兵を想像するのはなんでだろうか。

 ぼくらも例外ではなく、そうだった。

 だから、白馬にまたがった落ち武者が現れた時には度肝を抜かれた。


 ぼくたちは必死になって逃げた。

 馬の足音が追いかけてくる。


 木の根っこに足を引っ掛けてしまい、豪快にヘッドスライディングをした。

 恐怖で起き上がることができず、そのまま死んだふりをした。

 

 遠くの方で、ふたりの悲鳴が聞こえたような気がした。

 彼らの逃げていった先には、欄干のない橋があったはずだ。

 ぼくの記憶はそこで終わっている。


 目を覚ました時、ぼくは病院のベッドの上だった。

 養父と養母が涙を流しながら、ぼくが目を覚ましたことを喜んでくれた。


 数日後のネットニュースには『肝試しで高校生2名が行方不明』という見出しが並んでいた。

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地元の都市伝説を試してみたら大変なことになった件 大隅 スミヲ @smee

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