完璧であるために

表裏を一つにした仮面。貴方は今日も、表をまわりに見せて生きる。
醜美を一つにした顔面。貴方は明日も、美を振りまいて生き続ける。
仮面の裏側を疑わず。顔面の内側を知らず。人知れず蝶は舞う。今日も完璧であるために。

シュールな内容という反面、根底にあるテーマは考えさせられる作品で、そうした意味でも二面性があらわれていた作品でした。もしかすると小説よりも、詩に近いのかもしれません。抽象的なものをあえて具体化せず、言語化できないものの純度を高めた状態で読者にぶつける。そんな作風に趣を感じました。三千字ほどの短編ですが「こうした三千字の使い方もあるんだ」と不思議と納得させられます。いい意味で、非常に自由な書き方だと思いました。

どこかで生きている一人の人間の中身を通して、自分の内面と向き合いたい方にオススメしたい作品です。ウィットに富んだ哲学書ともいえる本作を是非とも、心ゆくまでご堪能ください。