誰がための嘘か

題材が非常に重く、だからこそといいますか、かなり考えさせられる作品でした。フィクションならではの脚色も当然あると思いますが、それでも作中の出来事がすべてあり得ないかと問われれば、肯くことはできない。そんな現実の薄暗い部分を切り取ったのが、本作の特徴といえます。社会的弱者にスポットを当てた作品は多いですが、その中でも異彩を放っていたように思います。

また安易に同情を誘ったり、社会的なメッセージを込めたりしなかったのも個人的にいいと思った部分です。あえて非情に徹する。救いの形を読者に委ねる。そうしたある種、現実を突きつけた作風が衝撃的でした。読み進めるにつれて、脳内で小島麻由美の『やられちゃった女の子』が再生されるほどに毒の強い本作ですが、読む価値はあると思います。

平凡な毎日。その中に潜む息苦しい日常に触れたい方はご一読を。