第8話私は言葉の重みを知った

 学芸会の朝、早くからスマホが鳴る。

内容はアイラからで『皆で先生に怒られよう!』というメッセージだった。


 洗面打に立つと、まだ長い髪と泣き腫らした顔があった。

やっぱり悲しいものは悲しくて思い出しては泣いてしまった。


 実はロイが亡くなってから、アイラもロイが好きだったことを告げられ、私たちは何故か失恋したもの同士、親友になった。まあ、子供の感覚ってそういうものよね。今じゃ腐れ縁になっているけど。おっと、話は戻すわね。


 私は急いで支度をして家を出る。

スクールバスに乗って、学校へと着くと自分のクラスに入った。


 しかし、そこには誰もいなかった。


 また、裏切られた?と不安が募ったが、教室の奥にはスクリーンが映し出されていた。暫くすると映像が映し出されカウントダウンが始まった。


 その映像の内容は私のカットシーンばかりで、良いところや悪いところが挙げられていた。更に私がピアノを弾いている場面もあり、皆の声でナイス!という掛け声が付け加えられている映像だった。


 そして最後になる時、私の心臓がうるさかった。

【お前のせいで】というトラウマがあった為、息が出来なくなっていたが、最後まで見ようと決心した。それが悪口だったとしても、今は彼らのことを知っているつもりだ。私は覚悟を決めた。


 しかし、そこに映し出されたのは【お前のおかげで助かった、ありがとう】という日本語だった。


 私はニヤニヤ見守るアイラ達を見つけて、笑いながら追っかけることにした。


「あれ?泣かなかったの〜?」

「泣くわけないいじゃん!でも・・・・」


 私は少し恥ずかしそうにいうか言わないか迷った挙句、結局言ってしまった。


「とっても良かったと思う」


 またニヤニヤするクラスメイト達にからかわれながら、私はこう思った。


 私たちの世界は言葉によって良くも悪くも変わってしまう。

たった一言でも傷つけたり、嬉しくなったり、私は言葉の重みを初めて体感したのだ。


これからも私はこのことは忘れないだろう。

__________いや、私はこのことは忘れたくないだろう。


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