第7話さよならと、ありがとう

 学芸会の三日前、病院へ行き私達が作った一本の映画をロイに見せた。


 それは、迷子になった子犬がご主人様に会うまでのストーリーで、今にして思えば拙いものだった。でもこの映画を完成させたから見てほしいという自己満ではなくて、私たちがロイに伝えたかったメッセージを含んだ映画だった。


 子犬は最終的にご主人様に会うのだが、その過程で子犬が出会った人間達の運命を変えている話だった。この子犬というのはロイに見立てており、いろんな人の人生がロイに出会ったことによって幸せになるメッセージだった。


 今にして思えば、なんて事のない誰だって考えられる話だ。

だけど、ロイは泣いていたのだ。何故こんないかにも小学生が作った手作り映画に心動かされたのか、メッセージがそんなによかったのか。そんなはずはない、脚本も最悪だと思う。だけど。だけど。だけど。


 この映画を観て生きてほしいという私たちの思いが伝わったのなら、泣いてもおかしくないだろう。言葉では伝えられなかったが、皆本心ではロイに生きて欲しいと思っている。そう考えている私の顔はぐじゃぐじゃだった。


 皆の顔もぐじゃぐじゃで皆で泣い合った。時間で言うと10分泣いた程だろうか。次第に皆は笑い出した。皆の鼻水で濡れた顔をみて皆、冷静になったのだ。

笑いは15分くらい笑っていたと思う。泣くのはそんなに長く泣けないのに、笑いというものは何分でも笑い合っていられるんだなと思った。


 ロイは笑い終わった後、ゴホゴホと咳をした。

皆はハッとしてロイのことを心配する。


 私はこれからロイに降りかかる悪夢を知っていた。

この日の夜、ロイが死んでしまうことを誰にも言えないのが悔しかった。


 言いたい、でも言ってなんになる?ロイを救うことができるのか?小学生の知能でそれは出来ない、出来ないだろう。もっと時間さえあれば_________


「マナ?」


 ロイに声をかけられて驚いてしまう。


「君、マナって言うんでしょ?転校生の。」

「そ、そうだよ、本当は愛って言うんだけどね・・・えっと、」

「アイ?」


 そこまで言ってロイはスマホで愛の文字を検索し始めた。

ロイはああ!というと相槌を打ち私に語りかけた。


「愛って名前の意味を調べてみたら、AIではなくLOVEなんだ。

とっても良い名前じゃん!」


 ああ、やっぱり私_____________。


「ありがとう、ロイ」


 初めて会ったあの時、ロイはそう言ってくれてたんだね。

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