第3話 私に当てたメッセージ

 六月二十八日。

アイラが私を呼び出し、数人の女の子と私でトイレに入ることになった。どう言う状況か理解できなかったが、何やら怒っているようだった。

 

アイラを筆頭に私の罵倒が始まった。何を言っているかは分からず、皆泣いていた。おまけにヘラヘラしている私が気に入らなかったのか、突き飛ばされ蹴っ飛ばされたりもした。


 「痛い、やめてっ!」


 そう日本語で叫んでも誰も助けには来ない。いや、もし英語だったとしても誰も助けには来なかっただろう。


 そして、アイラはハサミを右手に持ち私の髪を思いっきり切った。


 大事にしていた髪ではなかったけど、とても悲しい気持ちになり、人から切られる恐ろしさを身をもって体感した。どうして私が、どうしてこんなに・・・誰もいないトイレの中、私は独りただ泣く事しかできなかった。


 悔しい。悔しい。悔しい。自分が弱いのが悔しい。私が何をしたって言うんだ。私が何か気に入らないことをしたんだろうか。分からない。分からない自分にも腹が立った。


 家に帰りピアノを見つける。お母さんが私のために買ったピアノ、両手で少しぐらいは弾けるようになったけど、それも無駄になった。お母さんもピアノも悪く無いのに無性に腹が立ち涙が込み上げる。


「学校、もう行きたく無いよ・・・」 


 お母さんが来る前に、ピアノをしていた時間で髪を美容院で整える。ショートカットになった私は初めてだった。お母さんは驚いていたけど、可愛いよと言ってくれた。それが私には嬉しくない言葉に聴こえたが、やっぱりお母さんには心配をかけたくはない。私はまだ当分、学校へ行こうとした。


 そして七月一日、学芸会が行われた。


 クラスごとに出し物をする発表会で私はその事を知らなかった。今にして思えばこれがいじめの原因だったかもしれないとその時は思った。

 いろんなクラスの出し物が行われる中、自分のクラスが発表する番になった。


 私のクラスの出し物は映像作品で、ダンスを踊っているクラスメイトの映像が映し出された。そういえばクラスの皆は放課後ダンスを踊っていた気がする。

 

 しかしダンスは突如中止し、ある病気の男の子に移り変わった。


誰?この子?と私は疑問ばかりだったが、後に私はこの子に会うことになる。だけど、まだこの時は会わない。いや、会えなかったと言う表現のほうが正しいかもしれない。

 

 そして、この映像作品の最後には丁寧な日本語で【お前のせいだ】というテロップを出された。気付く人には気付くけど、日本語だってわからなければわかるはずもない。これは私に当てたメッセージだと思った。

 

 次の日、朝起きると私の体は重かった。


 いや、実際に重かったわけでは無いと思うが体が言う事を聞かなかった。私はお母さんに学校を休むと伝えたかったが、その気持ちは洗面台の鏡を見て変わる。

 

 私の髪の毛の長さが元に戻っていたのだ。これはつまり、どういうことかと言うと、私はタイムリープしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る