深夜ラジオ
「あ!この曲、今流行ってるアイドルグループ(※身内ネタにより省略)の『(※身内ネタにより省略)』だ!!歌詞はちょっと怖いけど、メロディーが良いんだよねー。」私は山野奈々香。小学6年生。今八マってるのは、深夜ラジオを聞くこと。自分の部屋で、こっそリイヤホンを付けて夜にラジオを聞いているんだ。
『ラジオをお聞きのみなさん。ラジオ局から、重大発表があります。』
え?え?何?何かいやな予感⋯。
『 このラジオ「ミュージックラジオ(※身内ネタにより省略)は、今日で最終回です。また、どこかで会いましょう!さようなら!』『プツッ』『(※身内ネタにより省略)(CM)』
いやな予感的中⋯。
ガーン⋯!!大好きなラジオだったのに!「あーあ。何で急に終わるの!?(※身内ネタにより省略)もう、明日からどうしよー。とりあえず、明日から見る番組決めようっと。」私は、いろいろな番組を聞いてみると、1つだけ気になるラジオ番組を見つけた。ちょうど始まったばかりのようなので、私は聞く事にした。
『生放送ドキュメンタリー!!』
あ。何かおもしろそう!
『今日は、生放送で、とある女性に取材をしますよ!どんな人間ドラマが見られるかなあ〜?それでは、スタート!』
『こんばんはー。名前を教えてもらってもいいですか〜?』
『⋯』
『お仕事は何をされていますか?』
『料理店です⋯』
『特に何の料理を?』
『主に肉料理です⋯。1人でやってます』
『何の肉ですか?牛肉?とり肉?ぶた肉?』
『⋯それ以外』
『ジンギスカンとかですか?』
『⋯』
『今日はどこに行くんですか?』
『私の職場、料理店です⋯。』
『すぐ近くなので⋯』
『では行きましょう!歩いている間、仕事の話を聞いてもよろしいですか?』
『⋯はい。』
気が付くと、時計の針は深夜1時を指していた。でも私は続きが気になるので、最後まで聞く事にした。
『料理店は、どのようなふんいきなのですか?』
『かわいい家のような外装と内装です。』
『へぇー。じゃあ.アットホームなふんいきなんですね。』
『はい⋯。青い屋根です⋯。』
『どこの近くですか?』
『駅の近くです⋯。』
『他に職員はいますか?』
『1人でやってるって、さっき言いましたが⋯』
『あっすみません。』
『でも、食材は置いてきています。調理道具は今、力バンに入っていますが⋯』
『見せてもらっていいですか?』
『わぁ⋯。りっぱな調理器具ですね!』
『とても切れ味がいいんですよ⋯。どんな肉でも、簡単にスパッと切れます。』
『お店にそろそろ着くようですね。』
『あ、ここです。着きました。』
その時、イヤホンから「ガチャッ」とドアを
開ける大きな音が聞こえた。うるさい!私はあわててイヤホンを外した。外したしゅんかん、私の顔から血の気が引いた。
イヤホンをはずしても、ラジオの放送はまだ聞こえるままだったのだ。ラジオパーソナリティーの声、料理店で働いているという謎の女の声、その2つの声が、まるでイヤホンで聞いているかのような、とても近くに思えた。
(今、2人はこの家にいるってこと⋯?)
私は、ラジオの放送を思い返すと、ある事に気づいた。この家は、駅の近く。この家の屋根は青い屋根。この家の外装は庭に色とりどりのお花が植えてあるかわいらしい外装。あの女が言っていた”料理店”の特ちょうとこの家の特ちょうは、全ていっちするのだ。
『食材は置いてきています。』
あの女が言っていたあの言葉がよみ返った。さっきまで普通に聞いていたあの言葉が、全くちがう意味に思えた。ドアの向こうから、料理の下準備をする音が聞こえる。おそらく今三人は台所にいるのだろう。今なら、母がねているしんしつに行って、助けを求めることができる。でも⋯
でも⋯しんしつに行くには、台所を通らなければならない。しんしつに行けるか、それともあの女に見つかるか、その確率は1/2。この部屋には窓がない。つまり、言い方を変えると逃げ場がないということだ。この部屋にずっといたって、時間が過ぎていくだけだ。と、その時。私はあることに気付いた。この家に入ってきたあの女とラジオパーソナリティー。女は私をねらている。しかし、ラジオパーソナリティーは、ちゃんとした、ラジオ局につとめている大人だ。きっと、万がーのことになったら助けてくれるはず!!私は助かる50%を信じて、ドアノブを回した。
音を立てないように、
しんちょうに、
ゆっくり、
息を止めて、
ドアを開けた。
⋯!
もう、言葉が出なかった。
覚悟はしていた。けれど、こんなに恐ろしいものだとは思わなかった。
身長は約2m50cm。
パサパサで、全くつやのない、長いかみの毛。血の気がない、青白い肌。ボロボロのワンピースには、むらさき色の、気味の悪い液体が付いている。そして、顔。目にはまぶたがなく、大きく充血した目玉。口は、赤ちゃんが食べこぼしたかのように、血がべっとりと付いている。
そのような気味の悪い女が目の前にいたのだ。
もう⋯終わりだ⋯。そう思ったしゅんかん、真っ暗で何も感じなくなった心に、一筋の光が差しこんだ。この部屋からは、もう逃げられない。でも、助かる方法は、あと一つ⋯あと一つだけ残ってる!!きっと、今すぐに入ってくる。私は、ラジオパーソナリティーが来るのを願った。しかし、その願いはいっしゅんで消えた。心の中の一筋の光が消え、暗やみがもっと大きく、そして深く、広がった。
『さて、もう準備ができたようですね。はい。あとは調理して食べるだけです。私もいっしょに食べていいですか?はい。いっしょに食べましょう』
⋯全て一人でやってたんだ。
もう、何も考える事ができなかった。というか、何も感じる事ができなかった。悲しいとか、怖いとか、何も感情は表れなかった。気がつけば、私、人形のように.ずっとドアの前に立ちつくしていた。その間にも、あの女は一人でラジオの放送を続けている。ずっとドアの前に立ち続けて、どれくらいの時間がたったのだろう。
『メニューはどうしましょうねー。今日は、食材が、たーくさんありますから、ごうかいにかぶりついてしまいましょう』女はそう言って、舌を出しながら私に近づいてきた。もう、何も感じることができなくなった私の目に、するどい歯と大きな口が映ったしゅんかん、目の前が真っ暗になった。
雨虹みかんホラー文庫 雨虹みかん @iris_orange
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